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BTSってすごいって話

気分の良いとき、わたしはBTSのEuphoriaを聞く。
気分の悪いとき、わたしはBTSのEuphoriaを聞く。

Euphoriaは日本語では「多幸感」と訳される。


「幸せ」について歌った歌は世の中に腐るほどある。
こちらの気分はお構いなしに、無理矢理気分を上げる曲。
幸せになることを急かすような、アップテンポな曲。
そんな曲の存在を否定したいわけではない。
BPMが早い音楽の力を借りてやる気を出すことはわたしもある。

多幸感というタイトルとは裏腹に、Euphoriaという曲全体に漂うのは「儚さ」だ。
「幸せ」というのは目に見えないもの。自分の頭と心で感知して、全身に温かいお湯を染み渡らせるような行為だと思う。
例えば、おいしいものを食べたとき、大好きな人のそばにいるとき。いろいろな幸せの形があるけれど、その幸せの持続時間も人それぞれ。

だから、「幸せを固く信じて少しでも長持ちさせよう。お湯を冷まさないでおこう」とすると辛くなる。かと言って「お湯はどうせ水になるから」と幸せを諦めることも辛い。そもそも幸せというのは、儚く移ろいやすいもので、それゆえにこのEuphoriaがまとう雰囲気をとても心地よく感じる。

「儚さ」はBTSというグループの存在自体にも言える。
最初にBTSで知った曲は「Fake Love」だった。

2018年、何かの授賞式でパフォーマンスするBTSを見た。
彼らのパフォーマンスは正直覚えていない。それよりもわたしが驚いたのは、観客席のリアクションだった。アメリカ人の、ティーンの女の子たちが、彼らに向かって黄色い声で叫ぶ。「へー。アジア人のアイドルに。時代は変わるんだな」と思った。

それからしばらく経ち、2021年。恋愛にコロナに失職に、現在進行形で傷つきまくっているわたしに先立ち、妹が沼落ちした。
熱心に紹介する妹のおかげで、リーダーのナムさんしか判別できない状態からやっとメンバー全員の名前と顔を覚えた。毎日YouTubeで彼らのMVを流しながら生活し、いつからか心の支えになっていた。

なぜBTSが好きなのか?
それは、人間が持つ「強さ」と「弱さ」を「儚さ」をもって体現してくれるからだ。

USの音楽業界において、アジア人で、ここまでの偉業を成し遂げたアイドルグループはいない。わたしなら天狗になって、相当嫌な奴になる。間違いなく。

アイドルでいることの大変さは想像に難くない。見ず知らずの人から心無い言葉を浴びせられることだらけだろう。年齢を重ねることへの恐怖も。にもかかわらず、BTSは常に謙虚で、「自分たちも自分を愛することを学んでいる」と歌う。

人には隠しておきたい「弱さ」をさらけ出してくれるBTSが好きだ。弱さを見せて、それでも立ち上がって生きようと「強さ」を示してくれるBTSが好きだ。「幸せ第一!」みたいな押しつけがましさでなく、「アイドル」=儚い存在としてそれを表現してくれる。BTSがいる時代に生まれてよかった、と思う。




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