1月6日(金)『地元の情報網はまさにコロナ』

『お笑い芸人に俺はなる!』

と親やお店の常連に言い始めて約1か月たった。

でも自分から言い出したわけじゃない。聞かれたら正直に答えるようにした。

『将来なんばすっと?』

『お笑いやね〜』

とか、

『なんになると?』

『芸人やね〜』

とか、

『どこで働くと?』

『吉本やね〜』

とか、

『今大学何年かね』

『3年よ』

『どがんすっと。院に行くと?』

『院なんか行くわけなかたい』

『じゃあ就職?就活はもうしよっと?』

『就職って言うか、どっちかと言うと進学かな』

『どこいくと?』

『NSCやね〜』

とか。

こんなやりとりが増えた。ただ常連も来る回数は限られていたし、こんな話をしない時もあった。明らかにこの情報を知ってる人間はほんの10人ちょっとだった。町内でも限られた人しか知らないマル秘情報となっていた。ぼくはテレビでネタをやってるのを知り合いが見つけて驚き狂うってのをやってみたかった。そして始まる狂喜乱舞。

しかし、ぼくは『千綿』そしてそれを含む『東彼杵町』の情報包囲網をなめていた。正確に言えば、知ってはいたが忘れていた。

この年末年始、仕出をやっていたため多くの町民、千綿の民と会ったがぼくに会うなり、

『え、お笑いやってるんですよね?』

『なんや、お笑い芸人になっとや?』

と目をまるまるとさせて聞いてくる。耳を疑う。

『そうけど、なんで知っとっと?』

こう聞き返したら人伝えに聞いたと言う。なんでお前が知ってんだよって人も知っていた。その人に聞いたらある人に聞いたと言う。だからなんでその人も知ってんだよと。

蔓延している。

情報がコロナのように蔓延している。

このスピードはオミクロン株並。そしてぼくのマル秘情報は拡散されただの情報へと成り下がった。多少萎えた。

でもこれは仕方ないことである。コロナが町内で確認された時は、誰がコロナになったのかを突き止めないと気が済まない人たちだから。コロナを約1日2日で突き止めるその情報網にぼくは手も足もでらんかった。

ぼくの驚き狂い、そして始まる狂喜乱舞作戦が失敗に終わった。この1年で町内だけでなくてぼくと関わりを持っていた人たちみな知ることになるだろう。いや、1年ももたないかもしれない。いちいち将来を説明する手間は省けるようにはなったけれども。そして町民は仲里依紗に次ぐスターの誕生を1週間かけて祝い歌い踊り宴に明け暮れるだろう。

みんなの期待に応えないと。

期待してない人にはわからせる。

そしてぼくはどうせみんな知ってるならインスタグラムにかけている制限をどうしようかと悩んだ。ネタは正直まだ一定のラインに成っていないからまだ見せたくはないが、活動風景などはいいのかなと。いや、やっぱりいいや。この1年なにも見せない。そして公になったときにその佇まいを見て驚き狂ってもらおう。そして始まる狂喜乱舞。

驚狂狂喜乱舞作戦始動。

驚狂狂喜乱舞ってなんかBLEACHに出てきそうだよなと思ったそんなある日。

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