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どこで繋がるか、わからない。

日本を出る前、色んな人と会って話を聞いたりしてる中でこんな本に出合えた。

生物学者である福岡伸一さんによる「生物と無生物のあいだ」

高校時代にお世話になった先生と友人で飲みに行く機会に恵まれ、酒の席で勧められた一冊。

「分子生物学勉強するなら、絶対この本は読んどいた方がいい!」

物理の先生でありながら他分野にも精通していてちょっと変わった先生にそう言われると、居ても立っても居られず、翌朝にジュンク堂へ足を運び、買うことにした。

著者の福岡さんは京都大学で農学博士を取得したのち、約半年間ロックフェラー大学の分子細胞生物学研究室でポスドク研究員を経験し、その後ハーバード大学の医学部に移る。今は青山学院大学で教授をしながら、執筆や芸術活動にも携わっているという。研究者の道駆け出しの僕からすると身が引き締まるような活動歴だ。

読むまでは知らなかったが、ロックフェラー大学はニューヨークのマンハッタン島の中心にあり、生物学、医学で”超”が付くほど有名な大学院である。大学周辺の描写は臨場感を与えるほど細かく、マンハッタンに行く際はぜひ訪れて、福岡さんが感じた空気感を体験してみたい。

題名「生物と無生物のあいだ」と示唆するように、DNAやタンパク質などの小さな分子の観点から生命の本質を探るような内容になっている。堅苦しいように思われる分子の話ばかりではなく、経験を踏まえた研究者としての心得や、分子細胞学という学問が発展に至るまで歴史なども織り交えながら綴られていて、読み進めるのが楽しいという感じだった。

でもこの記事を書こうと思ったのは、単にこの本の紹介や感想ではない。

ニューヨークに着いた翌日、この近くの海岸はキレイよと聞いて、買った自転車でPort Jefferson という港町に向かった。 

自転車を停め、何かに誘われるように砂浜の方へ歩く。

普段の生活はコンクリート、アスファルトや蛍光灯に囲まれた中で過ごしているが、ここには人工物が少ない。だから落ち着くのかもしれない。

貝殻と石ころが入り交じった砂浜を歩きながら、ふと次の一節が頭をよぎった。

先ほどの本からの一節である。

たしかに、貝という生き物が生み出す秩序は確かに貝殻に刻まれており、単なる無機物の集まりである石ころにはない美しさがある。その確かな違いは、原子たちが生命というシステムに入り込んだかどうかという偶然による産物なんだなと。

そう心から感じた瞬間、「何が、どこで、繋がるかわからないな」と思った。

勧められた本と出会うことがなければ、砂浜でこう感じることはなかったし、マンハッタンに行く際、ロックフェラー大学の前をただ通りすぎることになるかもしれない。この本を勧めてくれた先生も、子供を連れて海に行く時にそう感じるかもしれない。

ある出会いはまたどこかの出会いに新たな感じ方を与えてくれる。

そのことを実感するたび、いつも感動を覚える。今回はそれを意識的に感じることができたが、きっと潜在的で気づかないような繋がりがほとんどなはず。でもその積み重ねがきっとその人の個性を作り上げ、あるものごとに対し幅広い観点を持つことを可能にするのだと思う。

今、日本では東京オリンピックを前に「多様性」というワードが巷に(少なくとも僕が見ている小さなTwitterのタイムラインに)溢れかえっている。本当の多様性ってものごとの感じ方をいくつも持っていることなんじゃないかなって。拡張し過ぎな気もするので、多様性についてはまた別の機会で自分の考えをまとめたい。

無駄な出会いなんてない!!

意外にも勧められた本から教えられた。


最後に宣伝!【WEEKLY 留学記】の方ではニューヨーク留学の生活面、学習面について一週間のサマリーを書いていくのでまた見てね!


君に幸あれ!!!