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酒詩

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日本酒が好きです。詩が好きです。それらを合わせて酒詩を作ります。デタラメを言ってはなんの価値もありませんが、事実すぎては酒が見せる素晴らしい虚構と折り合いがつかない。いつでも事実… もっと読む
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2020.5.13 浪の音が。

2020.5.13 浪の音が。

舌先は冒険である。
時にそれは甘さを捉えたり、酸っぱさを捉えたりする。
舌先は冒険である。ささやかな。
時を感じている。揺れる。

ふうわり と
穂先を垂れる穀物がある。
太陽が照らす先には
誰かがいる そこまで行く。揺れる。

眠らない案山子が
こっくりと また 確実に
夜に拍子をつける
見えないものだけが聞く旋律になる

それはまた 大海の
小さなしぶきのようだ
海猫だけがそれを見るような

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なんで酒で詩を書くのだろ、自分でもわからないけど

なんで酒で詩を書くのだろ、自分でもわからないけど

どうもこんばんは、りょーさけです。

今日は詩についての文章をほんとに短めに。

以前からSAKETIPSという日本酒関係のメディアに詩を寄稿しています。今回は愛知県の日本酒「義侠」を題材に書いています。最後の方にリンクを載せておきます。

わたしは怠惰なジャパニーズなので英語が使えません。上記のSAKETIPSは日英両方で記事を載せています。ということでわたしは日本語で書いて、ネイティブの方に翻

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酒詩:笑四季Sensation White 火入れ

酒詩:笑四季Sensation White 火入れ

空の海に月の浮かぶ夜は
どこまでも果てしなく進んでいけそうで
アクセルアクセル アクセル
規則正しさに覆われた 不規則な夜

満月から3日後に
下半分が雲に浸かった卵黄みたいな月に
目配せをしながら気分だけ
明るい夜道をあるく あるく

スマートフォンの光がまた
優しさにまけて去ってゆく 夜の
あなたは何をするひとぞ
ラインを送る気にもならない

深くそびえる電柱たちを見回して
季節に感じ入ってい

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どんなことがあっても書くのでね

どんなことがあっても書くのでね

ここ最近生活していて感じていることが3つある。3つ。キリのいい数字だ。三位一体、ホップステップジャンプ、長男次男三男。最後のやつは適当なのでスルーをよろしくお願いいたします。3つだ。まずは今自分が自分であるような選択肢をとってこれてよかったなということ。というのもこれは妻子がかわいいからでありまして、たとえば自分の性格とか人格とか乏しいスキルとかはまあ、どうでもいい。このひとたちの傍にいてよかった

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酒詩:上喜元 生酛美郷錦ひやおろし

酒詩:上喜元 生酛美郷錦ひやおろし

星の川辺で出会ったあなたと

千年続く文通をする

それにしてもここは谷底で

顔すら見えない夜のお話

ちくちく痒い木々のまわりは

夏以外がよく死んでいて一興

触る腕はまた

触れた脚はまた

いっそう感覚をひりつかせていく

言葉が通じないわたしたちは文通をする

いつでもはじめて使う言葉で

つぶやきのように

慰めのように

水が滴る

銀縁の眼鏡は月

消えた炎は体温も奪う

ずうっ

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日本酒についての雑感

日本酒についての雑感

今日は日本酒について思ってることを書きます。

あまり面白くないかもしれませんが、まあ酒を片手に適当に読んでください。

まず結論から言いましょう。

僕は日本酒の味や質感を表す新しい表現を模索することが日本酒の普及につながると思っています。今回の記事は全体でそれを言うための構成になっています。

しばしお付き合いください。

※※※

日本酒は日用品ではありません。だよね?

「日用品です!」っ

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定点観測「雪の茅舎・山廃本醸造」8日目…なるか?

定点観測「雪の茅舎・山廃本醸造」8日目…なるか?

深く酸い。それは変わらない。いちごの香りをまとった不可思議な液体が目の前にある。日に日に緩急自在な柔和な液体を前に顔をしかめる私。もちろん魅力は酸だけではない。甘みにもここにきて特徴が出てきた。

※※※

畳の上にいる。一日中、ここにいたい。
かすかにススキが香る。春なのに。
鼻がおかしいのか。杉のせいかな。

都会のスピードは思ったより早かった。
僕は置いていかれた。

散々文句も言った。職場

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定点観測?「雪の茅舎・山廃本醸造」7日目風掌編

定点観測?「雪の茅舎・山廃本醸造」7日目風掌編

この時期の風が冷たく感じたら、それはまだ春が生きている証拠かもしれない。いや、生まれたばかりの、或いは未熟児の夏なのかもしれない。

僕は湖を泳いだ。

不思議と中で呼吸ができた。水なのに。水なのに。まわりは。

思えば最初に息を吸ったのも水の中に近かったのかもしれない。

光があって、人の声があって、温かい機械的な雰囲気の場所で。

そんなことを思いながら水の中を泳いでいる。

水に季節が溶け込

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エクリュは彼方に連れてゆく、僕を

エクリュは彼方に連れてゆく、僕を

愛する人の手触りは

おれを極北へつれてゆく 遠くへ

名もなき極北へそれは つれてゆく

雨音の千分の一 雪が雪に沈む音すら

はっきりと聞こえるような集中をくれる

吐息が聞こえる中で

外部の気配すら微塵ももらさず伝えてくれる

自分がまるごと世界みたいな

気恥ずかしくなるあの感触をくれる

照れるな

愛する酒の手触りも

おれを極北へつれてゆく 遥か彼方へ

姿を見たことのない

文字

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この翼が我々を導く:澤屋まつもと五百万石

この翼が我々を導く:澤屋まつもと五百万石

酒の旨い夜に出逢えば、誰もがこの夜よ永遠なれという。でも明日は来る日は昇ってしまう。それが我らの重力です。

そう明日から逃げる翼が欲しい。力を制する確かな翼。泡。

この酒の泡と旨さで縛るすべてをほどいてゆく。

ここに、私の舌にありながら遠く彼方を志向する酒。澤屋まつもと。見事なり。乾杯。
#日本酒 #酒詩