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課金アイテム「いちご」をよこせ!

これが我が息子の帰宅早々の態度であります。

父母を冷蔵庫の前に呼び出しては指をしゃぶりながら冷蔵庫の方を向きます。野菜室。それはつまり、いちごがあるところ。

うちのおかげでどこかのイチゴ農家さんは家をたてることができるんじゃないのか。いやそれは冗談だとしても、息子が果物ファンになってから果物を買う機会が飛躍的に伸びている。

道の駅なんかはもう素晴らしい場所だと思うようになった。あんなに美味しいものをあの価格で…みたいな涙の流し方をこの年になって覚えた気がする。

このいちご戦争に巻き込まれているのは、僕ら夫婦だけではない。もちろん祖父母も巻き込まれている。彼らがそれを利用するのは当たり前だ。現状果物を、特にいちごを差し出せば息子は容易に「こいつはいいやつだ」と認識するシステムになっている。

優秀な課金アイテムだ。

将来が不安だ。通学路の途中にいちご売りの少女もとい老婆が現れたらどうしよう。いつのまにか山奥にまで誘惑されて鍋で煮られて食べられてしまうかもしれない。

ああいちご戦争の話だった。義父はいちごを大量に買い込み、買い込みすぎて約半数をなんとジャムにしてしまったという。なんとおろそしくありがたい話だろう。

課金アイテムいちごによる戦争。いちごは戦いをここまで変えたか。まさに小さな巨人である。いちごバンザイ。いちごバンザイ。しかしいちごはおばんざいにはならないから、それ以外もぜひ食べてほしい。というか食べろ。偏食極まれり。

まあ偏食の話になると、父ちゃんはあんまり君に文句は言えない。父ちゃんはね、小学校から中学校くらいまでラーメンと焼肉と大半の野菜と大半の魚がとっても嫌いで、家では鶏唐とハンバーグと鮭とカレイくらいしか好んで食べてなかったんだ。そんなやつが今では透明な液体を飲んで「ああでもない」「こうでもない」って言ってるんだよ。変な話だよね。だから君も好きなものを食べなさい。でもいちごばっかり食ってると軟便で大変だよ。そこらへんも考えてね。

いちごといえば、高校生の時教科書に『いちご同盟』というお話が載っていたような気がする。病床に伏した女の子を巡って少年たちが相撲を取る話だった気がする。

いや、あれは切り取り方の問題なのです。分かる人だけわかってね。

実はあのお話は生々しいシーンもあるけど無害なシーンだけが教科書用に切り取られてまして、それにより魅力が三分の一の純情な感情より伝わってないんです。僕気になって文庫買って読んだんですよ。『いちご同盟』。

前述の病床に伏した女の子が少年のひとりに「ねえ。」と声をかけて、次の瞬間「わたしと、心中しない?」とかっていう感じの割とシリアスな話です。わお、高校生にむしろそういうところを見てほしいな。毒気のない薬などはないわけで、目をそらすように切り取ったってそういう毒をスマホかなんかで見る訳じゃない。それならいっそ進んで自分たちの側から価値を提供したらいいと思うんだよ。何の話だ。

はて、「私が恋人と心中しかけた時のような生々しい話は、小説・物語にならない。」と語ったのは小林秀雄だったろうか。

そう、現実はもっと深く生々しくよく効く毒に溢れている。
文字くらいは、毒食らっとこう。幸い即効性もあまりないし、長期的には成長の糧になるから。何の話だ。

そう、いちごだ。

いちごを買っては食べさせ、買っては食べさせる。

そんな形で社会貢献していきたい!です!

おわり。またね。ああ、アイキャッチは井の中の蛙が大海を知る様子です。でっかいね、海。

酒と2人のこども達に関心があります。酒文化に貢献するため、もしくはよりよい子育てのために使わせて頂きます。