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無題 #呑みながら書きました

『拝啓 マリナ油森様

 お久し振りです。お元気にしていましたか。懐かしい街で、あなたに届くように言葉を綴っております。かつてあなたと同じ時期にこの街で物語ばかり書いていた者です。題名をどうしようかと悩んでしまいましたが、結局決まらず、ただ誰かひとりにあてた手紙に題名などいるのだろうか、とも思いました。この街のいまを私も全然知らず、そしてあなたがこうやって呼び掛けていなかったら、ふたたびこんな風に言葉を綴ることもなかったでしょう。当時のような空気は、もう薄いそうですね。これが当時のような空気を醸し出せるているかは分かりませんが、不特定多数ではなく、誰かひとりに向けて、言葉を綴る。そんなことがよくありませんでしたか。気のせいでしょうか。最近の私は忘れっぽくなってしまって、自信はないのですが。酔いながら書く手紙なんて失礼この上内とは思うのですか、私はいま酔いながら、この手紙を書いています。酔っていると言っても、別にアルコールではありません。物語に酔おうと思って、映画の『ファイト・クラブ』を途中まで観てから、この手紙を綴っています。なんだか分からないですが、『ファイト・クラブ』って酩酊感がありそうじゃないですか。最後まで観てから掛けよ、と言われそうですが、ちょっと睡魔が襲ってきて、このままだと何も書けないまま、寝てしまいそうになったので。しかし困りましたね。何を書きましょう。この街がなかったら、私は小説を書いてなかったでしょう。X、小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+、エブリスタ、色々なところを転々として、この街から足はだいぶ遠のいてしまいましたが、小説をもう書くこともないと思っていた私が、ふたたび創作へと足を踏み出せるきっかけをくれたのが、この街ですので、特別な思い入れ、そしてそれはおそらく当時の(その時はそこまで意識してませんでしたが)、あの空気感のnoteだから、だったというのはあるのではないかと思います。それがいまはないのならすこし残念ではありますが、四六時中一緒にいることだけが、街の、人間関係の良さではないんではないかと感じます。こうやって催しがあれば、離れていたひととも、ふとした時に繋がれる。これからも『自由』な創作の場としての呑み書き、応援しております。

 広大な『創作』の世界の隅っこでショートショートばかり書いている サトウ・レンより。ジャスト1000字で』