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マンガでわかるHCI: ユビキタスってなに?

ユビキタスってなに?

突然ですが、みなさんはユビキタス(Ubiquitous)っていう言葉を知っていますか?

大抵の人は、「ユビキタス?なにそれ?聞いたことないよ。」という感じかと思います。辞書で検索しても「遍在的な」とか出てきて、ますますよくわからなくなってきます。

ところが、この「ユビキタス」という言葉、コンピュータ・サイエンスの中では超重要キーワードなのです。(例えば、前回紹介したPixel 4に搭載されると噂の、ミリ波レーダーでジェスチャー認識をできるGoogleのProject Soliの論文のタイトルは、"Soli: Ubiquitous Gesture Sensing with Millimeter Wave Radar"だったりします)

この言葉、実はもともとMark Weiser(マーク・ワイザー)という人が「21世紀のコンピュータ」(The Computer for the 21st Century)という論文で使ったのがはじめでした。

↑ ちなみに、この論文は、被引用数が15,000以上あるような論文でコンピュータ・サイエンス全体の中でも極めて重要な論文に位置づけられています。


そんな有名なMark Weiserの論文ですが、こんな一文からはじまっています。

意訳: 最も発達したテクノロジーは、日々の生活の中に融け込まれ、私たちの生活の一部になるようにして消えていく。

なかなか深い言葉です。これはどういう意味でしょうか?


世界最初の情報テクノロジー: 文字

ところで、みなさんは、「世界最初の情報テクノロジー(Information Technology - IT)ってなに?」と聞かれた時、なにを思い浮かべますか?
Apple I?」 「いや、電卓?」 「いやいや、ENIACだ!」なんてコンピュータに詳しい人は言うかも知れません。

実は、Mark Weiserは、先の論文で世界最初の情報テクノロジーの一つとして、「文字」をあげています。

こんなことを言うと

「は?文字なんてテクノロジーなわけないだろ!」

という人もいるかも知れません。

しかし、テクノロジーというのは、なにもつい最近はじまったわけではないのです。人類が自分たちの問題を解決するために生み出したもの、それはテクノロジーなのです。(例えば、「火」や「石器」や「数字」というのも立派なテクノロジーです)

そう考えると、文字はその当時、非常に画期的なテクノロジーだったように思います。例えば、文字が発明された当時の人になって考えてみてください。

「情報の保持」ができる ---「すごい!今まで何度も何度も口頭で説明しないといけなかったのを保存したり記録できるようになるのか!」

「情報の共有」ができる --- 「すごい!時代や場所を超えて、自分の言葉を伝えられるなんて、信じられない!」

「情報の表示」ができる --- 「すごい!モノにラベルを貼ったりして情報を付与できるのか!説明や使い方を添付できる!」

などなど。
これを情報テクノロジーと言わずして、なんと言いましょうか。

↑ 文字は紛れもない情報テクノロジー


最も発達したテクノロジーというのは次第に「消えていく」

しかし、今ではこうしたことは当たり前すぎて、誰も驚きません。アメの包み紙や標識に書いてある「文字」を見て、いちいち感動することや、本に書いてある文字を見て、なんて素晴らしいテクノロジーなんだ!などと衝撃を受けることもありません。

こうした「文字」というテクノロジーは、時間をかけて発達するにつれ、我々の生活に融け込んでいき、私たちの意識の中から消えていきます

そんな、私たちの意識の中から「消えていった」テクノロジーは、なにも文字だけに限りません。

↑ 当たり前すぎて気にも留めなくなったテクノロジー

例えば、「車」。車なんて信じられないほどテクノロジーの塊です(例えば、今でも自分で自動車のエンジンを作れる気がしません)。ですが、車は生活の中に融け込んでいき、ふだん気に留めるなんてこともありません。「電気」「電球」なんかもそうです。壁の中を数千ボルトの電圧で電気が通ってるってよく考えるとすごいことですが、ふだんは気にも留めません。

他にも、例えば「エレベーター」「洗濯機」「食器洗浄機」。これらは、見方を変えれば、私たちの生活を支えてくれる、まさに「自動で動くロボット」なわけですが、もはや当たり前のように生活に融け込んでいます。

↑ 家政婦ロボットなんて聞くとすごい未来の話のような気がするけど、実はみんなもう洗濯機や食器洗浄機を持ってる(ある意味、家政婦ロボット)

--- 

Mark Weiserの最初の言葉である

最も発達したテクノロジーは、日々の生活の中に融け込まれ、私たちの生活の一部になるようにして消えていく。

を振り返ってみると、こうしたことが少し腑に落ちるのではないかと思います。そして、最初の質問である「ユビキタスってなに?」という質問にもどると、彼は

生活に融け込み、私たちの生活の一部になっていったテクノロジー 
    ||
ユビキタスなテクノロジー

というふうに言っているのです。


おわりに

どうでしょう。「ユビキタス」という、つかみどころのない言葉も少しわかってきたんではないでしょうか? 

ユビキタスっていう言葉は、「ふだん私たちが意識しないけど、生活の中に溶け込まれているテクノロジーのことを指して言うんだな」というようなことを少し理解してもらえたら嬉しいです。

それじゃあ「ユビキタスなコンピュータ」ってなに?、ということが当然疑問になるかと思いますが、それについては次回に説明していきたいと思います。(いつものことながら手抜きですいません... _(._.)_  ペコリ)


さらに興味がある方は

- Computer for the 21st Century: Mark Weiserの元の論文

- 21世紀のコンピュータ: 清水亮さん(@shi3z)による上の論文の日本語訳

- Andreessen Horowitz(a16z)のブログ: 人工知能もリレーショナル・データベースのように「ユビキタスに」すべてのソフトウェアに組み込まれるだろうという話


このマンガについて

はじめに、で書いたように、このブログは、コンピュータサイエンスに興味を持った小中学生とかに、コンピュータサイエンスの学問の入り口があったらいいなと思って、2019年の7月にはじめました。

僕は小学生の頃マンガを通じて物理学を知り、学問に興味を持ちました。物理学にはそういうものがあったわけですが、僕が最初この分野のことを知った時、コンピュータサイエンスにそんなものはありませんでした。

そんな最初の入り口が、コンピュータサイエンスという学問にもあったら、昔の自分がもしもそんなものを知っていたら、また少し違う世界が広がってたんだと思っています。

そういった「コンピュータサイエンスの最初の入り口を提供したい」。その点だけを考えて、基本的にはやっています。(ちなみに、中の人はアメリカの大学のPhD課程の学生で、コンピュータサイエンスの研究をしています。仕事の傍ら、週末に時間できた時にやってるので、今回みたく手抜きになってしまっていますが、ご了承ください _(._.)_  ペコリ)

また、この分野に興味が持った人にとって重要な点が2つあると思います。

1. 基本的な概念や、学問全体の流れがわかっている
2. 最新の研究を追ってキャッチアップできている

1については、マンガを通じて少しずつ紹介していけたらな、と思うのですが、それだけでは足りないわけです。なので、このnoteでは、マンガの他にも、1) 最新のコンピュータサイエンスの研究を140字でゆるく解説しつつ、気になる論文には 2) こういう研究もあるよ、と2-3個似てる研究を紹介もしてコンテクストを掴む手助けをできたら、と考えています。なので、もし興味があれば、他のnoteも見てもらえると嬉しいです。 :(っ'ヮ'c):

また、小中学生のみならず、実務で忙しいんだけどコンピュータサイエンスのことを教養として知っていたいという方や、最先端でどんなことが起きてるか知りたい、という方にとっても楽しんでもらえたら、これ以上嬉しいことはないです。

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上で述べたように、このnoteは、小中学生たちに届けたいと思ってやっているため、基本的にnoteを有料にするつもりはないです。(そもそも彼らはクレジットカードも持ってないだろうし。)

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