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未発表曲の行方

毎年埋もれていくアルバム数十枚分の曲たち。

年間通してかなりの曲数を作ります。
特に昨年2018年は映画とドラマの音楽を担当したこともあってかなりの曲数になりました。多分250〜300曲は作りました。この曲数に驚かれる方もいるかもしれないですが、比較的そんな感じで僕は年中曲を作っています。確かに曲数だけ見るとアルバム25枚から30枚分ですからね、振り返ってみると自分でもよくそんなに作ったなと思います。

ただ、この沢山作られた曲のうち世の中に出ていく曲(皆さんに聞いてもらえる状態になる)というのはほんのわずかです。僕はちょうど今年デビュー20周年なのですが、過去どれだけの曲が埋もれっていったのかと思うと作られた曲もそれを作った自分も哀れでなりません(苦笑)。

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世の中に出ていかず埋もれていく曲達にどんなものがあるのか?

これは色々です。
例えば映画やドラマの為に作る曲の場合、監督さんたちのイメージと合わない曲が埋もれていきます。僕的にはとてもよく出来て気に入っている曲でもそうなります。これは仕方のない事と言えば仕方のない事ですね。やはりストーリーがあって映像があってそちらがメインとなっているものなので。
ちなみに映画やドラマの為に作った曲の場合、本編では使われるけれどCD化されたり配信されたりはしない、そんな曲もあります。そういった場合その映画やドラマが終わってしまうとなかなかその曲だけをピックアップするのは難しくなってしまうのでこれまた少し寂しい気がします。幸い僕の場合比較的そういった曲達もCD化していただいてきました。なのでこれに関しては今でも聞けるものと埋もれてしまったものと半々な感じです。

CMやラジオ、そして僕がこの数年関わらせていただいている日本全国様々なエリアの地方創生プロジェクトへの曲提供、こういったものも上の映画やドラマのパターンと似ています。やはりオーダーをしてくれている方達のイメージがあるので、あまり自我を押し通し過ぎたものは埋もれていきます。難しいのは、そんな状況でも「野崎さん風で」と言われる事が多いのでそういったところは自分の腕の見せ所というか、職人技が必要となります。

色々書きましたが、実は一番埋もれていってしまうのが多いのは上記以外の曲達です。自分で日々コツコツと作りためている曲達です。
Jazztronik用であったり、その時々でプロデュースや作曲を頼まれている他アーティスト用であったり、特に何か目的があるわけではないけれどその時に自分が作りたいと思って趣味で作っているものであったり、様々です。

僕はだいたい1つの曲を作る為に5、6曲分のアイデアが出て来ます。もちろんそのアイデアもある程度ちゃんとした曲として完成させます。しかし最終的には1つに決めなくてはなりません。そうなると残りの曲はやはり埋もれていってしまうのです。

自分を振り返る

ある時そういった埋もれていってしまった曲達を聞き直した事があります。「こんな曲作ったなぁ」「こんな曲あったっけ?」パッと聞いた時の最初の印象は色々でした。「これ本当に自分の曲??」なんて思うくらい今の自分では考えられないような面白い曲もあったりします。そうやって色々な曲を聞いた後どの曲に対しても抱いたのが「こんなにちゃんと作ったのに世の中に出していないのはホント勿体無い。」という気持ちでした。

僕にとって過去に作った曲を振り返るという行為は非常に重要かもしれません。自分がどんな音楽にハマっていたか、自分がどんな工程でその当時曲を作っていたか、そんな事を思い出せる良いきっかけになります。新たな情報や技術で過去より満たされているかもしれませんが、そういった現状によって創り出されているものが必ずしも最良とは限らないので。もちろん現状が最良であるよう努めてはいますが(汗)。
そんなこんなでこういう曲達も少しでも皆さんに聞いてもらえたらと徐々に思い始めました。

SKETCH

野崎良太名義でもJazztronik名義でもそういう曲達を順々に配信していく事は可能です。ただ、そうではない何か違った出口を作りたいと思っていました。やはり現在進行形の作品とは別の形で発表できたら良いなと思いまして。

そんな時に思いついたのが"SKETCH"というプロジェクトです。僕は飽き性のくせにこうやって様々な別プロジェクトを気軽に始めてしまう傾向があります(苦笑)。"SKETCH"はその名の通り過去のスケッチ状態の曲や未発表曲(過去作った曲や演奏を録音した曲の中で)を主に扱っていくプロジェクトです。過去の埋もれてしまった曲をそのまま扱うというわけではなく、基本的には新たに手を加えていく曲がほとんどになります。

ハンドメイド

現在"SKETCH"はNo.5までハンドメイドCDとして作ってあります。もちろんお分かりかとは思いますがCDの盤はハンドメイドではないですよ。ただし盤面は僕が手書きで「Sketch 5」といった感じで書いてます。No.1~No.4は確かもうSOLD OUTだった気がします。No.5はつい先週作ったばかりなので現状はまだ在庫があります(2019年10/29現在)。ジャケットもスタンプを押して作っています。もちろん僕一人ではなくスタッフにも手伝ってもらっていますが、なかなか楽しい作業です。

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"SKETCH"は現在は僕のLive会場でのみ販売しています。Soundcloudで配信もしていますがこれはそのうち削除してしまうかもしれません。

なぜCD?

配信が主流になりつつある現在になんでCDを選んだかと言いますと、一番大きな理由としてはCDという媒体でこういった自由な事が出来るのはもうあまり長くない気がするというところでしょうか。比較的手に入れやすい白い盤面のCD-Rではなく業務用の鏡面CD-Rを"SKETCH"では使っているのですが、これがもうほぼ生産されていないのです。なのでこれが手に入れられなくなった時点でCDでの"SKETCH"も自動的に終了になります。そういう理由もあって毎シリーズ少数(100枚〜200枚)しか作らないようににしているというのもあります。商品として考えた場合、音が収録されているモノとして既に認識されていてデザイン性もある程度キープ出来てかつ自分達でもハンドメイドで作れる、となると現状ではCDが一番良い選択肢でした。それと僕はCDで育ってきた世代なので少なからずCDに愛着があるのかもしれません。

海外でも

以前ハンドメイドCDを作っていた際はイギリスからCDジャケットを輸入していました。その会社の再生紙を使った質感がとても好きだったので"SKETCH"でもそれをまた使おうと思っていました。しかしその会社のページを確認したところ、なんと昨年会社をたたんでいたのです(涙)。ページのトップには、なんとか今まで頑張ってきたがこれ以上CD関連のビジネスはやっていけない、と書いてありました。やはりどこでもCDビジネスはなかなか厳しいのですね。。幸い国内でとても良いものを作っている会社を発見したので今はそこのジャケットを使っています。

余談ですが日本は世界から見るとCDがまだ売れている非常に稀な国と言っても良い国です。ドイツも日本ほどではありませんがCDビジネスが少し残っています。アメリカではもうCDはほとんど新たに生産されていません。

No.5

ちなみに"SKETCH"No.5は、僕が73分間ノンストップで演奏したものをさらにスタジオで色々と処理を施したアンビエント大作になっています。その長尺の中で12段階に曲が別れています。勉強したり仕事したりの際にも良いかもです。今のところSoundcloudにもアップされていますのでぜひ聞いてみてください。


より多くの人に

今後も僕の制作スタイルが変わるという事はまずないと思います。そこが変わらないと言うことは間違いなく皆さんにお聞かせしないままPCの奥底に埋もれていく曲が増え続けていくという事でもあります。
今まではなんとなくそれでいいやと思っていました。なぜかと言うと僕の曲作り精神の根底には自分が満足するものを作るというのがある為、出来上がった曲に自分が満足するとそれを誰にも聞いてもらう事がなくても次へ進んで行ってしまっていたので。
時代が変わり配信などの技術が発達し、色々なアーティスト達が様々なスタイルで曲を気軽に発表する時代になりました。それに触発されたのかどうかはわかりませんが、自分で作り上げた作品は、大切にしたい=皆さんに聞いてもらいたい、という気持ちが強まってきたのは紛れもない事実です。そうする事によって1人でも多くの人にJazztronikや僕自身がどういったアーティストなのか今まで以上に理解もしてもらえるのではないかなと思っています。これはひょっとしてSNSの話題で時々聞く自己承認欲求ですかね(笑)。でもアーティストなんて自己承認欲求の塊だと思ってます。

ピアノ即興アンビエントLive

そしてこの"SKETCH"No.5の様な雰囲気のLiveを11月3日に北千住BUoYで開催しますのでぜひいらしてください。15時から50分ほどピアノの即興によるアンビエントLiveを行います。詳しくはこちらのnote記事や情報ページをご覧になってください。

よろしくお願いします!

イベント情報ページです↓



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