清宮顔の女を見知らぬおっさんと奪い合った話

家から五分のところにある、居酒屋での話。

2か月ぶりくらいかに顔を出すと、
「今日は昭和歌謡際ナイトなんです!」
だとか。

その店はカラオケがあり、昭和の曲縛りで点数が高ければドリンクを一杯無料で飲めるというルールのもと、目当ての昭和おじさま達が駆けつけていた。

店に入って30分後にはスタートしようというタイミングだったため、ノッてみるかと苦戦しながら昭和の知る限りの曲を、ときには知らないおっさんとデュエットしながら歌っていた。

そうしているうちに、4人のおじさまと若い女の子1人のグループがご来店。

振る舞いからは外様だと分かったが、そのタイミングでなぜか1人ボックス席に掛けていた僕と同じ卓を囲むことに。

気のいい、割と品格もあるようなグループで、仲良く酒を酌み交わすうちに、デンモクが回ってきた。

うち1人が、ハリウッドザコシショウによく似たスキンヘッドで、次第に謎の軍歌を歌ったりと、色を出してきた。

最初のうちは仲良く一緒に飲んでいたのだが、段々と視線に殺気立つものを感じ、何かと思えば僕がその女の子と2、3会話をしていたことに猛烈な嫉妬をしていたのである。

軍歌で血の踊りが勢いを増したのか、もう烈火の如く怒りだしている。

「お前、ちょっと腹貸せや」

ドン!

ザコシの右ストレートが腹に入った。

流石にわきまえているため、みぞおちのような急所ではない、ヘソの下くらいのところだったが、軍歌でボルテージが上がっているため、結構な振動があった。

「お前のもくれや」
と言われたので、今度はザコシのヘソの下をパンチして差し上げた。

これが5回繰り返されたあと、ザコシは何故か泣き崩れた。

「わかった。。そのかわり遊びじゃなくて真剣に頼むよ。アイリ、お前がそっちの方が幸せなんやったら俺は嬉しいよ。。」

アイリがこっちを向いた。

その顔は、清宮のそれだった。

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