「いいもん食べないといい仕事はできない」

題名の言葉は、僕の尊敬する人生の先輩のものです。

先日、その方に寿司に連れていってもらいました。
もちろん回転しない寿司。
墨でネタの名前だけ書いてあって、値段も書いていない。

30歳を超えたら、回らない寿司を食べたいものです。
ただ、バーやなんかと一緒で、様式を知らないとなかなか難しいですよね。
妻帯者である僕が孤独のグルメのように目に留まったものを端からオーダーして存分にたいらげるということはできるわけがなく。
33にして初めての〝回らない寿司〟体験。

初体験はいつだって美しいものです。
これからの人生、〝デビュー〟の回数自体は減っていくことでしょう。
しかしながらその瞬間の瑞々しさは確と心に刻んでおきたいと思っております。

で、冒頭の言葉。
寿司屋に連れて行ってくれた方(リスペクトする人生の先輩)は大変なグルメで。
全国津々浦々と旅をして、現地の美味しいものに舌鼓を打つという豊かな生き方をされています。
ノドグロの身の上品な甘さが口の中に広がり多幸感で満たされたその時、ふと尋ねたんです。

「美味しいものに対する探究っていうのはどこからくるものなのでしょうか?」

するとその方は、土瓶蒸しのお猪口をぐいとやってこう答えました。

「いいもん食べないとね、いい仕事はできない。上の人にそう教えられてね」

おお。
深そうな言葉。
その言葉の佇まいだけで名言感が滲み出ています。

でも、よく分からないですよね。
いいもの食べないと、いい仕事はできない。
じゃあ、いいものを食べればいい仕事が出来るのか?
さらに言えば、悪いものを食べていたら悪い仕事しか出来ないの?

つやつやした平目の造りに箸を伸ばしながら色々考えたんですよ。
旨いものを食べていたからでしょうか。
さほど時間もかからず僕なりの答えが出ました。



「これって仕事量と比例するのではないか」

つまり、〝食〟にかけられた仕事量を感じろというメッセージだろう、と。
プロの味というのは手間暇(仕事量)がかかっています。

食材の選定から、下拵え、調理、盛り付け、心遣い…

一品にかけられた熱量や技術量や時間を知ることで、〝良い仕事は何か〟ということが分かる。
食材へのこだわり一つをとっても、全国のあらゆる市場や農家から「これぞ」というものを選んでくるわけです。
「便利だから」という理由でコンビニの冷凍ものを買ってくるわけがない。

僕たちはトマトといえば、〝赤い実の野菜〟というイメージしかありませんが、プロ視点のトマトは品種から、産地から、時期から、何から全て違ったものに見えるわけです。
つまり、同一の種類だとしても違いが分かる。

質の違いということも自身のフィルターを通して体感していければ判断できません。
色々なものを五感で体験することによって日々、感覚知を磨いているわけです。
さらにその場での調理だけでなく、食材によっては食べ頃を予測し、美味しさのピークに達する瞬間を見定めて下拵えを施す。
視覚的な美味しさも重要で、盛り付けの美的感性、さらには「モノは器で食わせる」というように食材が最も映える器を探してくる。
あらゆる要素を加算し、時に掛け算し、美味しさが紡がれていく。

つまり、〝よいものを食べる〟ということは、「質の高い仕事がどういうものか分かる」ということ。
質の高い仕事が分かれば、それを自分の仕事に落とし込んでいけばいい。

〝良さ〟を抽象化して、エッセンスを抜き取り、別の分野(自分の分野)に具現化していく。
エッセンスは共鳴します。




そういうことなんじゃないでしょうか。
プロにはそれ相当のお金を支払わなければいけません。
30代の僕からすれば授業料ですよね。
その体験を自分のクリエイティブ(仕事)に生かしていき、「元をとらなきゃな」と。
だから人生、料理を味わうこと一つをとっても勝負なんですね。
ぼーっとしていちゃいけない。

とは言いつつも、この寿司代は人生の先輩がきれいに支払ってくれましたが。
ご馳走様でした!

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ありがとうございます。 取材費として使わせていただきます٩(๑❛ᴗ❛๑)۶

大当たり◎今日は最高な気分で過ごせるはずです٩(๑❛ᴗ❛๑)۶
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嶋津 亮太

日々是好日。

日々の気付きを書きます。 Art de Vivre. 生き方に芸術を。
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コメント2件

旨さの違いが少しずつ分かってきた気がしますが、ともかく少しずつです。美食家の方の仕事ぶりは想像できますが、「質の高い仕事がどういうものか分かる」から質の高い仕事がでいているのを、ちょっと確かめてみたいです。
川中さん、コメントありがとうございます。気付けなかった部分に気付けるようになるという意味合いでは、あらゆることに当てはまるんじゃないかなぁと思って書きました。どうもありがとうございます。
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