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世界はデザインでできている

アートディレクターの秋山具義さんの本が出ます。

『世界はデザインでできている』というタイトルです。具義さんの思考がぎゅっと詰まっています。具義さんが引いてくれた補助線を参考に世の中を見ると、世界のいたるところに宝石が散らばっていることに気付きます。言い換えると「デザイン」というメガネを通して世の中を見るだけで、僕たちは見えなかったものが見えるようになる。今よりもクリエイティブになることができます。そして、デザインのことが大好きになります。

僕は、この素敵な本に「構成」として関わらせていただきました。

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僕が具義さんと出会ったのはちょうど一年前。れもんらいふデザイン塾の講師として具義さんは登壇されていました。僕はその塾のレポートを作成するため、取材を兼ねて講義を受けていました。

打ちのめされました。おもしろいんです。「興味深い」という表現ではなく、具義さんの講義はれっきとおもしろいんです。会場では三分に一回笑いが起きていました。スクリーンに映るスライドには具義さんが今まで手がけてきたデザインの資料が小気味よく展開されていきます。それを見ながら、具義さんがコメントしていく。それも淡々と。それはまるで秀逸なコメディの舞台を観ているかのようでした。「プレゼンはエンターテイメントである」具義さんは言葉にこそしませんでしたが、僕はそう言われた気がしました。

うんと力を込めた手で頬にビンタを食らったかのような衝撃でした。「業界の第一線で活躍するとはこういうことか」もう、こてんぱんです。
具義さんの講義を聴いて落ち込まない人は「よっぽどの才能の持ち主」か「才能が全くない」かのどちらかだと思います。クリエイティブに関心を抱いている人ならばショックを受けて然るべきです。ただ、この「こてんぱん」は糧になります。いつまでも創作や表現に対して謙虚でいられる。あの体験は僕にとって宝物となりました。

そして僕は、講義レポートと同時にこのようなものを書きました。


具義さんを分析して、文章にしたためました。不遜にも文章の中で僕は「私は具義になりたい」と述べています。だって、なれるものなら具義さんのようになりたいじゃないですか。(なれるわけがないにしても)そのエッセンスについて深く考えることは人生において大きな価値があります。


心の広い具義さんは笑って、僕が書いた講義レポートを褒めてくださいました。そして、このレポートがきっかけとなり、今回の『世界はデザインでできている』の制作メンバーの一人として声をかけていただきました。

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本の制作は夢のような時間でした。具義さんと会ってお話をお伺いする度に、たくさんのことを学ばせていただきました。

常に僕の思考と表現の二段高い位置で、具義さんは考え事をしていました。思考のレイヤーが高いということは、本質的には同じであっても、現れる形はより柔軟で多様性に富むということです。しなやかで、やさしい。その上、おもしろい。

具義さんの考え方に触れるだけで、僕はみるみる自分が成長していくのがわかりました。今まで何のためらいもなく通り過ぎていたことに対して「何か違うぞ」と立ち止まることができるようになっていった。大きな前進です。


僕が好きなワンシーン

例えば、何か一つのテーマに対してアイデアを出す時がありますよね。普通の人なら良いアイデアを一つ出すだけでも難しいことです。具義さんは一瞬で三つのアイデアを出してしまいます。どのアイデアもすばらしいのに、そこからぐーっと考えて三つの中から「今の状況に最も適したもの」を選びます。僕は、具義さんのこの「ぐーっ」が好きなんです。

その時、具義さんは驚くほど客観的になります。アイデアは全て具義さんのものなので、その全てに愛着があるはずなのですが、「自分の好き」も「クライアントの好き」も「世の中の好き」も一旦別の場所に置いて、目の前にある状況(課題)に最も適したアイデアを冷静に判断するんです。プロフェッショナルを感じる瞬間です。

そんな具義さんがかっこいいんです。


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『世界はデザインでできている』はとても良い本です。具義さんのエッセンスが詰まっています。この本を読んで、具義さんが引いてくれた補助線を参考に世界を眺めてみませんか?今よりずっと、世界は美しくて、おもしろくて、やさしいものだということを発見します。


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『世界はデザインでできている』(ちくまプリマー新書)

著者:秋山具義

編集:鶴見智佳子
構成:嶋津亮太




「ダイアログジャーニー」と題して、全国を巡り、さまざまなクリエイターをインタビューしています。その活動費に使用させていただきます。対話の魅力を発信するコンテンツとして還元いたします。ご支援、ありがとうございます。