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出口治明論

『0から学ぶ「日本史」講義(古代篇)』を読みました。


出版を記念して出口さんの講演会が開かれたので、そちらへも行ってきました。
本・講演の内容も面白く、中でも出口さんの「考え方」に強く惹かれたので、これを機会に僕なりに分析してみました。


「どうすれば出口治明の考え方をインストールできるか」というところをテーマに掘り下げていきたいと思います。



本・人・旅

まずは、出口治明さんの人物紹介。


ライフネット生命保険株式会社創業者で、現在は立命館アジア太平洋大学(APU)学長。

興味深い点が、もともと大学を卒業後、保険会社に勤めていたのですが58才の時に自身でライフネット生命保険会社を立ち上げるんですね。

一般的に「守り」に入る年齢から新しい事業にチャレンジする辺りに天才性を感じます。

訪れた世界の都市は1200以上、読んだ本は1万冊以上。
人生を楽しむための教養は「本・人・旅」と仰る出口さん。先入観を持たずに多くの人に出会い、本を読むことで著者の考えを追体験し、実際に行動して自分の体で感じることが人生を豊かにするのだ、と。この「本・人・旅」は出口さんのキーワードでもあります。

僕が出口さんを知ったのは数年前。

本屋に平積みされている出口さんの本を手に取った時。カバーには白髪のおじさんがにこやかにこちらを見ていました。著者の経歴を見ると保険会社の会長なのだと。

このような言い方は大変失礼かもしれませんが、「え?どうして保険会社のおじさんがこんなにも本をたくさん書いているの?」と、そう思いました。別に「保険会社」という職業に偏見があったわけではありません。ただ、「保険会社の会長」と「本を出版すること」がスムーズにリンクしなかった。その本の内容というのも「会社経営」に関してではなく、「教養」や「歴史」について。それが良い意味での違和感として印象に残りました。

そのノイズに似た居心地の悪さが、本を購入するきっかけとなりました。




印象は“頭のやわらかい人”。

多くの人が抱く「本を読んでいる人は頭が固い」という偏ったイメージ。読書好きの人に対して「頭が固い」とは言わないまでもなんとなく「難しい人」というイメージがありませんか?

でもそれって、「本を読んでいること」と関係がない部分なのだということが出口さんとお会いして明確になりました。

出口さんには「難しい人」という印象が一切ありません。

膨大な量の知識と経験が詰まっているのに、親しみやすい雰囲気を醸しています。いや、「のに」ではなく「だからこそ」なんですね。

出口さんの頭の中は大きな釜みたいなもので、何百万語という言葉が滾っています。それらがトロトロに柔らかい。くつくつと煮えた状態で思考が変幻自在なんです。

出口さんはおそらく意識的にそのような「環境」を作っているのではないかと想像します。本を読むという行為は「釜の火を落とさないように、ずっと燃料を注いでいる」のと同じ。インド料理のタンドール釜みたいな状態です。


常に流動的な脳内環境。

それは「変化」に対するポジティブなイメージによるもの。
人って「安定」を好みますよね。「変化」がある状態というのは、先が見通せないということですから気が休まりません。

人は「安定したい」生き物なんです。そのためには未来を予測することが求められます。というより、予測をすることで進化してきたんです。

農耕がまさにそれで。『世界を変えた6つの飲み物』という本の中に農耕が食料の大量生産を可能にし、蓄えを保管することで未来を予見することを可能にしたという話があります。

そこではビールが文字の誕生に貢献したという話が出てきます。昔の人(メソポタミアのシュメール人)は麦を育てて、それでパンのようなものを作って食べていました。そのパンを水につけてふやかすとビールのようなものができます(麦が自然発酵したことによりアルコールになる)。

穀物を計画通りに収穫できるようになると、多めに作り、蓄えることができます。保管するためにはそれらの「数(量)」を把握しておかなければならない。そこで石に文字を刻んで数えることにしました。これが楔形文字(くさびがたもじ)です。だから本の中ではビールがなければ文字は誕生しなかったんだよ、という興味深い仮説を立てています。

話題になった『サピエンス全史』でも似た話は出てきます。狩猟時代は明日食べるものを確保できるか分からないので、心が休まらないんですね(ホモ=サピエンスは噂話や虚構を作ることによって予見する力を手に入れたというもの)。

兎にも角にも、未来を予測できると安心する。つまり安定した生き方ができるんです。だから、「変化」よりも「安定」を望むのが人間にとって自然な考えなんです。



だけど出口さんは常に「変化」しています。

「変化」を求め、「変化」を受け入れ、「変化」を楽しんですらいる。

この遊戯的な「変化」の味わい方が出口さんの驚異的なメンタリティを作り上げているのだと分析します。



人と会ったり、本を読んだり、ということは「他者の言語を受け入れる」ということ。相手の言葉を受け入れることで、己が変態します。この変態は「メタモルフォーゼ」の方の変態です。

「勉強することは自己破壊だ」と言った哲学者の方がいました(千葉雅也さんだったと思います)。

まさにそういうことで、常に新しい情報や物語を収集して、頻繁にアップデートしているんですね。つまり、「他者の言語を受け入れる」ことは固い頭になるのではなく、反対にやわらかい頭になっていくことなんです。

本来は読書好きな人は「頭がやわらかい」はずなんです。



なぜ、賢くなると「難しく」思われるのか。

その答えは大きく二つあって(僕の完全主観ですが)。


一つ目が相手の思考速度に苛立つ。

賢くなると思考の速度が上がっていって、相手の答えを待つことが我慢できなくなってくるんです。同じくらいの思考速度の人と話す分には何の問題もないのですが、人それぞれ理解の速度や思考を巡らせる速度は違います。対話する相手との間に思考速度のギャップがあると会話がスムーズに進みません。

ここで求められるのが「器の大きさ」です。

相手の話にしっかりと耳を傾ける。それ以前に、相手が話しやすい空気を作ってあげるということが大切になってきます。


二つ目が表現力。

頭の良い人は基本的に早口です。思考の速度が速いほど口調も比例して早くなる。ただ、早口だと相手に圧迫感を与えてしまいます。

さらに専門用語が多くなります。専門用語は多くの意味を一語に集約することが可能なため、端的に説明する際にはとても便利です。しかし分からない人には伝わりません。専門用語でなくとも、難しい単語にしても同じことです。相手が「理解できる」前提で話していることが表現力の欠如に繋がります。


最も重要なことは「相手に想いを伝えること」。

難しい言葉を使うことや、早口でまくし立てて自己完結することがコミュニケーションの目的ではありません。

誰にでも理解できるような言い回しで表現することが優しさです。そしてゆっくりと話すことで多くの人に伝わるのです。



この二点が賢くなると陥りがちになる「難しい人」というイメージの正体です。どちらも結局、相手のことを思いやっていないことが原因ですね。



出口さんの講演を聴き、僕は「この人こそ本当に頭の良い人だ」と思いました。

出口さんの「やわらかさ」の正体はここだったんです。

講演の終わりに参加者からの質問コーナーがあったのですが、出口さんは質問者が尋ねやすい空気(場)を講義が開始した瞬間から早くも構築しはじめていました。

時にユーモラスに会場をあたため、時にざっくばらんな表現で観衆を安心させ、時に自虐ネタをスパイスとして振りかけました。根本にある「歴史に対する考え方」という幹はしっかりとしていたまま。

質問者も学生から管理職まで幅広い世代の方がいて、中には緊張して声が震えている相手にも、静かにじっと耳を澄ませる。決して促したり、プレッシャーを与えることはしない。見事なまでの「大きな器」を見せていただきました。


そして終始、皆が分かる言葉で、ゆっくりと話します。この「場づくり」の鮮やかさに僕は唸りました。


ここにきて告白しますが、実はこの講演にそこまで期待していなかったんです。歴史が大好きというわけでもないし、先日見たNHKのトーク番組に出演していた出口さんのことを「喋るのが遅いおじさんだなぁ」という印象だったんですね(相手側の女優さんが結構早口だったので余計そう感じたのですが)。

でも、実際に目の前にすると、一つ一つのそのスキルが痛いくらいに感じるんです。これこそが最大公約数に伝わる技術なんです。

ほがらかな空気を醸し、やさしい言葉で、真理を語る。

本当に頭の良い人は、相手が「自分は劣っている」とさえ感じさせない人のことを言うのだと思います。

出口さんの最大の魅力はそこです。



講演から読み解く「日本史」講義。

さて、ようやく本題です。

『0から学ぶ「日本史」講義(古代篇)』に入って行きましょう。


この本のオモシロさは、日本の位置づけです。

日本史というと、日本の中(国内)のことを主として書かれていて、海外のことを「日本から見た外国」という捉え方をするのが一般的ですよね。ところが本書においての日本国の位置づけは「世界の中の日本」

これの視点が非常にオモシロイ。


「日本人が独立し、開拓していった日本」


そんなものは幻想に過ぎないということが分かります。独自に作り出したと思っていた文化・文明は外国の影響なしにはあり得なかったのです。



それではここからは少し講演の模様を。




鉄により日本は文明化した。

《出口さん》
それまでは石や木を削って畑を耕していたんです。石と木で畑を耕すって大変なんです。鉄を持ってきたら、鍬(くわ)として使えるでしょ?そうするとね、農業の生産性がめちゃくちゃ上がる。

鉄を持ってきたことで日本は文明化したんですよ。

生態系の不思議があって。カエルが200匹ならヘビは10匹しか生息できないんですよ。これ以上ヘビが増えたらカエルを食べ尽くしてしまって、ヘビも死んでしまいます。生態系というのは結構貧しくて、内側の資源を使い尽くしてバランスをとっているんですね。


でも、人間は鉄を持った。


生態系の中にないものを他所から持ってくることによって文明社会を作ってきました。ここでは鉄は貴重なものですよね。

朝鮮半島に住んでいる人は、なぜ貴重な鉄をくれたのでしょうか?タダでくれたと思いますか?そんなことはない。それ相当のモノを交換して日本人は鉄を手に入れた。

では、何を交換したのか?

“魚は腐る”、“お米は朝鮮半島でも作ることができる”
そのように考えていくと持っていくモノはない。

当時の朝鮮半島は3つ4つに分かれていました。小さい国が分かれて互いに争っている時に何よりも有難がられるのは助っ人ですよね?

相撲でも横綱ががっぷり組んでいる時の方が良い。そういう時は、後ろからちょっと押すだけでもすごく助かりますよね。

交易において最も大事なのは「決済」です。

今のビジネスで考えてみると分かります。会社というのは赤字で潰れるわけではない。決済資金がなくなってはじめて潰れます。

会社が赤字だとしても銀行が湯水のごとくお金を貸してくれたら潰れないですよね?商売の基本は「決済」なんです。

歴史を理解する上で重要なのは、「何かをもらった時に、何で決済をしたか」を考えること

そう考えると一気に分かり易くなります。


「お互いに得をすること」ではじめて商売が成立する。
そのことを踏まえて歴史を考えると「グローバリゼーションというものはずいぶんと昔からあった」ということが分かります。

金融の自由化により、1980年代くらいからグローバリゼーションの時代になったという先生がいますが、そんなのは大ウソ。ずっと昔から人間はグローバリゼーションをやってきたんですよ。




【ここからは地の文です】

さて、いかがでしょう。オモシロイですね。

日本には今も昔も資源がないんです。

資源のない国は永遠にキャッチアップ(遅れを取り戻す)できない。

日本の生態系には鉄も化石燃料もゴムもない。原料がないので製品を作ることはできない。つまり日本がグローバリゼーションをしていなかったら自動車を一台も作ることはできなかったのです。


だから、海外の影響(当時は中国と朝鮮半島)がなければ日本は文明国にはなっていなかった。僕たちが中学生の頃はそのポイントをサラリと流して教えられましたが、後の歴史を学ぶ上でかなり重要なポイントだと言えます。



そして、さらに続きます。


《出口さん》

むしろ「国」という概念の方が新しい。
今、日本は少子高齢化ですが、「少子高齢化」なんていうものは歴史上起こらないんです。

説明しますね。
世界を単純化すると「都市」「地方」に分けることができます。
都市には、「ご飯食べる場所」や「お酒を飲む場所」や「娯楽施設」があります。つまり夜遊びができるんですね。


若い男女が一晩中遊んでいたら赤ちゃんは生まれない。
でも地方は真っ暗です。娯楽施設もなにもなく、暗くなったら寝るしかない。何もないとすることがないので赤ちゃんが生まれるんですね。
これは今に限った話ではなく、昔からそうなんです。


今から4000年前。当時の大都会はバビロン。そこでは若者たちが夜遊びをする。すると子どもが生まれない。すると何が起きるのかというと「家が余る」

今日本は空き家が800万戸と言われています。人口が減っていたら家が余るのです。

そうなったら、山に住んでいる者たちが空き家を目指してどんどんと都会に出てきます。

ザグロスの山からバビロンの街へやってくる人間は超頑健で超優秀な人たちです。彼らにとっては山が一番良いはず。その場所を捨ててまで、言葉も分からない、誰がいるのかも分からない人がいるところに行くというのは身体も頑健で能力に自信があります。どこであろうと一旗揚げる自信が彼らにはある。中には無鉄砲なだけで能力が低い者もいたでしょうが、歴史上、移民や留学生というグループは例外なく超優秀なんです。


人口が減っても外から超優秀な者たちがやってくる。歴史上ではその繰り返しだから少子高齢化などは起こり得ないんです。


では、なぜ日本で少子高齢化が起こっているのか。

荒っぽく言えば、これはナポレオンが作ったネイションステイト(国民国家)が原因なんですね。1848年にヨーロッパ革命を達成し、それ以降各国が国境の管理を厳しくするようになり、はじめて少子高齢化が起こった。


どうすれば少子高齢化がなくなるのか。 

それは法務省が国境の管理をやめてしまえば瞬時に解決することなんです。人類の歴史はずっとグローバリゼーションだった。1848年のヨーロッパ革命でネーションステイト(国民国家)が完成して、国境の管理をはじめてからグローバリゼーションが面倒臭くなったんですね。「国」という概念は最近できたものなんです。

だから、人間の歴史は全てグローバリゼーションと考えた方が分かり易い。



【ここからは地の文です】

ここで出口さんの「考え方」の源が登場します。

「世界の中の日本」という視点は、そうあって然るべき捉え方なんですね。そしてその観点から歴史や物事を見ると、腑に落ちることが多い。まるで難解なパズルのピースが心地良くはまるような快感を覚えます。

そしてこの考え方は「歴史」だけでなく、あらゆる分野においても応用可能な思考なんです。

それは文学においても、音楽においても、絵画においても、経済においても、数学においても。僕たちは説明しやすくするためにわざわざラインを引いて「ジャンル」というものに分類します。でも、ジャンルなんていうものはあってないようなものなんです。全てのものは繋がっている。


世界は、あらゆるものが影響し合って形を成していることに気が付くのです。


料理をするために、文学的要素や音楽的要素や数学的要素やありとあらゆる要素が助力となる、ということを僕たちはジャンルを引いたことによって見失っていたのです。



それでは続きにいきます。



《出口さん》

人間でもそうですよね。高圧的に懲戒を仕切っていたら、大体みんなおとなしくしていますよね。学校でも強面のガキ大将がいるとみんなおとなしくしていますよね。目を付けられて殴られるのが嫌だからわざわざ派手な格好をしようとは思わない。

東アジアの歴史は紀元前150年くらいに漢に武帝というでしゃばりの王様がいました。ガンガン攻めて、当時は楽浪四郡といった朝鮮半島の北を全部奪っていった。そして、そこに大きな役所を置いたんです。

めちゃ怖いお兄さんが、めちゃでかい建物を作ったわけですから、周辺の人は恐る恐る挨拶にいく。

313年、気候不良が原因で中国が弱ってきた。

気候が良くなったら大帝国ができるし、気候が寒くなったら小さくなる。
昔は、国は気候に左右されていました。これは簡単なことで、天気が良かったら穀物が採れます。収穫した穀物が余れば倉庫に保管できるから反映する。


楽浪郡が消えれば、朝鮮半島の人はどう思うか。
「殴られる人がいなくなったから、ちょっとくらい派手な格好をしてもいいか」となってちょっと威張りはじめるんです。こうして百済や新羅という国ができていきました。

その頃日本では「怖い兄さんがいなくなって大きい城や大きいお墓作った」という朝鮮人の話を聞いた。「では日本もやりましょう」ということで大きいお墓を作り始めた。それが前方後円墳です。
そのうちに傭兵を送って朝鮮半島が仏教や漢字など色々な文明を教えてもらい国を豊かにしていきました。

その中に仏教という新しい文化があった。
蘇我氏と物部氏が争った時には、既に蘇我氏が勝つに決まっていたんです。
なぜかというと、蘇我氏は「仏教を受け入れる」と宣言したから。

仏教の「教え」を第一に考えていたわけではありません。
仏教を受け入れようと思えば、「お寺を作らなければならない」。
そうなると仏像も要るし法具も要る。つまり仕事がたくさん必要となるのです。昔からゼネコンはいたのです。

ゼネコンが物部氏につくと思いますか?「仏教など入れる必要がない」と言っているわけですからつく訳がない。仕事(発注)が来ないでしょ? でも蘇我氏につけば大きな寺を作るので発注がかかる。そうなると儲かるので喜びますよね。

仕事があればみんな喜ぶんです。
要するに仏教というのは当時の大公共事業みたいなものだったのです。

そのようにして仏教が広がっていきました。
でも、こういうことが可能だったのは朝鮮半島が分裂して争っているから朝鮮半が分かれていられたのは中国が分裂していたからなんですね。




【ここからは地の文です】

非常に興味深いお話です。ここから先はどうぞ本を読んでみてください。知的好奇心を満たしてくれる物語が散りばめられています。


そして最後に、質問コーナーの時の出口さんらしい答えを付録として記載しておきます。出口さんのその鮮やかで、愛のある回答をどうぞお楽しみください。



【質問】

Q.就職、仕事の選び方はどうすればよいでしょうか?


《出口さん》

答えを言ってしまえば職業を選べるはずがないと思った方が正しいです。なぜなら上場会社でも3500はあります。そんなの選べることができないでしょ?

人間が選ぶので一番大事なのはボーイフレンドガールフレンドですよね。
ガールフレンドを選ぶときに何百人、何千人とリストを作って要件をチェックしていくようなアホなことをしますか?

どこかの出会いで、感じられるものがある。そういう当たり前のことが分かっていれば、就職についても色んなきっかけがありますよね?行ってみて、相性が合いそうだったら応募すれば良い。

相性っていうのはすぐに分かるものです。
人事の人は「採ってやろう」と思っているので良い事しか言わない。そんな相手の言うことを信じてはいけないということはすぐに分かりますよね。
会社に行けば受付の人がいたり、エレベーターに乗れば社員とも会う。その人たちは普通の会社員です。その人たちの中に自分が入っても「楽しそうだな」とか「感じがいいな」と思えばそれが良い。

だから相性が良ければそれでいいんじゃないでしょうか?

こんなこと言うと「普段あなたは何を言っているのですか?」と怒られる。「数字・ファクト・ロジックでしょ」と。


会場www


「数字は何処へ言ったんだ」と突っ込まれるわけですが。
でも、東芝ですらあのような状態になるわけですから、若者に数字なんかわかるはずがない。
だから「10年前より売り上げが伸びている」または「社員数が増えている」というところを見るくらいでいいと思います。

もしだめだったら、チェンジすればいいだけです。終身雇用というものなんて世界のどこにもない風習で、みんな選んで良くなければチェンジしているんです。選ぶという考え方を捨てた方が良い。

ガールフレンドでも明確な理由で選んでいないんですよ。偶然の出会いの中で感じが良かったら連絡先を交換しているというだけです。




Q.私は読書が好きなのですが、読んでも内容を覚えていません。インプットがこのような状態だからアウトプットがうまくいかない。うまくアウトプットするコツはありますか?


《出口さん》

そんなもの必要ないですよ。


会場www


読んで忘れてしまうということは、大したことがないから忘れるのであって、めちゃおもろい話とか、めちゃ大事だと思うのは覚えているでしょ?
本を読んだら全部覚えていないといけないという考えが間違いで、来る者は拒まず去るものは追わずで、ガンガン忘れていけば良いんです。忘れたなら「大した本を読んでいないのだな」と思えば良いんですよ。


Q.先生は何度も読むということはあるのですか?


《出口さん》

人間がどうすればものを覚えるのかという話をします。

とある学生たちにテレビを見せます。
「このテレビを見たことを次の朝試験するからよく覚えておきなさい」と先生が言う。そして生徒を二つのグループに分けるんです。
片方のグループは部屋に連れて行き、先生が「君たちにだけズルをさせてあげる。もう一度見せるからよく見ておきなさい。向こうのグループにぶっちぎりで勝つで」と言いもう一度見せる。

もう一方のグループは明日の予習のために「覚えたことを言ってみなさい」と先ほどの映像の内容を自分の言葉で説明させるんです。先生は合ってるとも間違っているとも何も言わない。

この試験全世界、色んな民族を変えてやってみても全部同じ結果が出るんです。
二回見たグループが30%以上成績が悪い。
これは脳の構造で、同じものを二回見たらデジャヴとなり「あ、知っている」という錯覚になるんですね。

ものを覚えるのは自分の言葉に直すことなんですよ。


だから「人・本・旅」で感動したら近くにいる友人を見つけて喋りまくるのが一番です。喋りまくった後、ブログやFacebookに書くのが最高の方法です。

日記やメモはダメです。なぜか分かりますよね?脳みそが無意識に「自分しか読まない」と思っているんです。ブログやFacebookも誰も読んでいないですwwwでも、「読まれるかもしれない」と思うから言葉を整理するんですよ。


ボーイフレンドやガールフレンドが「家に遊びに来る」と言えば、前日に部屋の掃除をしますよね?誰も来なかったら掃除しないですよね?それと同じこと。

だから記憶しようと思ったら、喋りまくってFacebookやブログに書きまくるのが一番です。他の方法はないです。

「ダイアログジャーニー」と題して、全国を巡り、さまざまなクリエイターをインタビューしています。その活動費に使用させていただきます。対話の魅力を発信するコンテンツとして還元いたします。ご支援、ありがとうございます。