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CafeBarDonna vol.6


今回は〝カクテル〟について。

カクテルというのはミクスト・ドリンク(mixed drink)のこと。
つまり、ある液体とある液体を混ぜた飲み物


例えば、「ジン+トニックウォーター(ジントニック)」「ウィスキー+ソーダ(ハイボール)」「ビール+トマトジュース(レッドアイ)」…といった具合に。


別に「酒+〇〇」じゃなくても、ジュースとジュースを混ぜればそれはもはや〝カクテル〟なんです。


「カクテルは星の数ほどある」という言葉は本当で、やろうと思えば半永久的に創作し続けることができるんですね。



カクテルの歴史。

カクテルがいつはじまったのか、ということですが。
ビールの誕生が紀元前4000年と言われていますが、その頃には存在したのではないかと思っています(とある文献ではカクテルの誕生は紀元前1750年頃と記載)。
どういうことなのかというと、人類にとって〝カクテル〟の最初の目的は「飲みやすくすること」がはじまりだったのですね。


メソポタミア文明を築いたシュメール人たちはビールを製造していたのですが、当たり前ですがその製法は原始的で、かなり不衛生だったのですね。
ビールはビールだけど、そのままでは不味い(最初は栄養の摂取とアルコールによる高揚感を目的としていたので味は二の次だったのですが)。
だから、シュメール人の中のちょっと気の利いた奴がビールの中に蜂蜜やら薬草を入れて飲み始めたんです(臭みやえぐみを消すため)。
これが人類にとっての〝カクテル〟のはじまり。

古代ローマ人は「ワインの水割り」を飲んでいました。
これも立派な〝カクテル〟。


つまり、最初は〝醸造酒の不味さを無くすための役割〟としてカクテルにしていたのですよ。



〝リキュール〟の誕生。

それから11世紀まで飛びます。
この頃にリキュールが生まれました。
ピンクやイエロー、ブルーなどのカラフルで美しい色の酒です。
リキュールは蒸留酒を生み出した錬金術師の手によって生まれます。


【リキュール】
蒸留酒に薬草や果実、香料を混ぜたり浸したりして作る


リキュールの技術は15世紀前半に修道士の手に引き継がれ、薬草や香草風味のリキュールが生まれていきます。
修道士に継承されたのは当時、ヨーロッパではキリスト教が圧倒的な権力を持っていたからです。
日本の仏教にしてもそうですが、中世の宗教には〝神への信仰〟だけでなく、医学や建築学、そしてマジカルなパワーが宿されていたんですね(もちろん科学も)。
一般市民へ科学の知識が浸透させないことが権力を保つことに必要になってくるわけです。


14世紀から16世紀にかけてリキュールは高価な〝媚薬〟として上流階級へ浸透していきます。
社交界では貴婦人たちが洋服や宝石の色にリキュールをコーディネートする習慣が広まりました。
リキュールは〝液体の宝石〟と呼ばれることに。
しかしこの頃はまだカクテルにして楽しむという文化はありませんでした。
そのままストレートで味わっていたのですね。



カクテル2.0。

私たちの知っている〝カクテル〟が生まれるのは18世紀以降の話です。
カクテルの歴史上、大きなパラダイムが訪れます。
それは製氷機の誕生です。

〝1870年、ドイツで製氷機が生まれた。〟

この発明により人々は年中冷たい飲み物を飲むことができるようになったのですね。
〝シェーク(シェーカーに材料を入れて混ぜる)〟〝ステア(グラスの中の材料をバースプーンで混ぜる)〟という技法が生まれたのはこの頃です。
いわゆるバーテンダーの仕事。
この時に〝マティーニ〟や〝サイドカー〟などの名作カクテルが誕生しました。


製氷機の誕生によってカクテルは、〝技術によって風味を高める〟ことを目的とした飲み物となったのです。




セレンディピティにより世界へ。

カクテルが世界的に広まったのは奇しくも1920年にアメリカで成立した禁酒法のおかげです。
酒を禁止されたところで、人類が6000年に渡り親しんできたアルコールを断絶することなんてできるはずがありません。


〝酒の神バッカスは海の神ネプチューンよりも、はるかに多くの人間を溺死させてきた。〟


酒の快楽は既に人間の奥深くに刻まれているのです。


禁酒法をよそに、酒の密輸や密造が頻繁に行われました。
スピーク・イージーと呼ばれる闇のバーが続出します。
質の悪い密造酒が飲みやすくなるように、また酒を飲んでいると思われないように粗悪な蒸留酒をオレンジジュースやトマトジュースで割ったカクテルが誕生していきます。
ノンアルコールカクテルもこの頃に考案されました。


また、禁酒法に嫌気がさしたアメリカのバーテンダーがヨーロッパ、主にパリやロンドンにアメリカン・スタイルのバーを作ります。
それによりカクテルが広く普及したのです。


1933年、禁酒法の廃止。
結局13年しか禁酒法は続きませんでした。
同時に世界中でカクテルブームが起きていきます。




とりあえず、カクテルの歴史をざっと整理しました。

日本におけるカクテルの歴史も続編でまとめておきますね。

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