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元介護職がMBAを学ぶ理由

もしあなたが介護職員なら、「給与がひくい」「仕事がきつい」「この業務ホントに必要?」「なぜ自分がこの業務をしなきゃいけないの…」など仕事に対する色んな感情があるかもしれない。そこから一歩踏み込んで考えてみると、「自分の給与はなぜこの金額なのか」「もっと仕事を楽にすることはできないか」「なぜこの業務が存在するのか」「なぜこの業務が自分に割り当てられているのか」などの疑問に変換することができる。この疑問が出てきたら、あなたは“経営”という視点を手に入れたと言っていいかもしれない。

MBAとはMaster of Business Administrationの略で、日本語に訳すと経営学修士という意味だ。ビジネススクールなどの大学院で経営学を修めると取得できる学位のことである。最も有名なのはハーバードビジネススクールだろうか。国内にも京都大学、九州大学、慶應義塾大学、一橋大学、名古屋商科大学など30校ほどMBAを取得できる大学院がある。

私は元々、特別養護老人ホームに勤めるごく一般的な介護職員だった。就職当時は何の資格もなく介護の仕事をしたこともなかった。介護系の学校を出ていたわけでもない。まさにずぶの素人だった。学歴もなければ取り柄もないどこにでもいる21才の若造だった。

特別養護老人ホームに就職してから13年後、私は特養を退職し自分で会社を立ち上げデイサービスを始めた。その後、訪問看護ステーション、居宅介護支援センター、訪問入浴介護などを展開していった。会社を作って6年ほど経ち部署も社員も増えてくるにつれて、経営者としての力量をもっと高めなければ今の自分の力ではこれ以上の規模は抱えきれなくなると危機感を持つようになった。そこで私が出した答えがMBAの取得だった。

それまでも経営に関する本を読んだりセミナーに参加したり、時には先輩経営者に相談していたが、“困っていること”を“困りごとが起きたとき”に学ぶというスタイルだった。それが悪いということではないが、自分は偏った学び方をしているんじゃないかと感じるようになり、経営全般を体系的に専門的に学ぶ必要があると思った。そうすることでまだ起こっていない問題に気づき事前に手を打つことで“困らないようにする”ことができるかもしれないと考えた。となると学校に通うのが一番よいだろうということで、グロービス経営大学院大学(経営学/経営専攻)の門戸を叩くことになった。

現在、会社を経営しながら大学院に通うという二足の草鞋を履いている。MBAを学んでいると、これは経営者だけが知っていればいいということではなく、仕事をしている全ての社会人が知っていたほうがいいことだと分かってきた。知らないよりも知っていたほうがいいし、分からないよりは分かっていたほうがいい、できないよりはできたほうがいい。たとえただの介護職員だとしても。MBAを取るべきとは言わないが、会社(法人)の仕組みや意思決定のプロセスを知ることで、納得ができたり、変えるべきことを変えることができるようになるかもしれない。

現場の介護職員として食事介助やトイレ介助・入浴介助などに追われ、時には認知症のある利用者さんに翻弄されながら悪戦苦闘していた現場業務の経験と、主任や施設ケアマネジャーとして現場を支える間接業務をしていた経験、会社を立ち上げたった5名からスタートした会社が事業所を増やし社員が数十人と増えてくるにつれて直面した様々な問題とそれを乗り越えてきた経験(これはこれからもずっと続くが…)、そして大学院で学びながら経営学に基づいた実践の経験とその成果や反省、それらを【介護×MBA】というタイトルに集約させているつもりだ。何もなかった自分がよくここまできたなと思うが(まだ道途中ではあるが)、これまでの自分の学びや経験が参考になる人もいるのではないかと思い、何らかの形に残していくことにした。それがこのブログだ。

代表的な経営資源といわれる「ヒト・モノ・カネ」。グロービスの科目では、クリティカル・シンキング、人材マネジメント、組織行動学、経営戦略、マーケティング戦略、オペレーション戦略、ファイナンス、財務会計などを基本科目として学ぶ。基本科目を修めたあとは応用科目、展開科目とより高度になっていく。科目の名前だけ見ると、現場の介護職員からしてみたら“異国の話”のように思えるかもしれないが、実際はこのような組織の仕組みや戦略があなたの給与にも仕事量にも仕事内容にも大きな影響を及ぼしている。それがたとえ地方の小さな会社であろうとも。

冒頭で書いたような“疑問”が生まれたなら、自分の置かれている環境に目を向け「この仕組みやルールは妥当なんだろうか?」と“前提を疑う”ことから始めてみるといいかもしれない。そして経営者という立場であれば、社員の疑問に備えておくということが必要だ。自社の仕組みってどうなってるんだっけ?なんでそうなってるんだっけ?と、社長ですら分からない場合もある。その時にこのブログが少しでも役に立っていればいいなと思う。

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自己紹介

介護サービスの会社を経営しながら、経営学を学ぶため大学院に通っています。起業前の13年間は特養で働いていました。介護現場と経営と経営学、時々雑感を書いています。記事は無料ですがサポートは大歓迎です(^^)/