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3分でわかる宇宙ビジネスの資金調達(その2)

前回の「3分でわかる宇宙ビジネスの資金調達」では、デット(借金)とエクイティ(出資)の違い、プロジェクト・ファイナンスとアセット・ファイナンスの違いなどについて解説しました。

ところで、アセット・ファイナンスでは、お金を貸す側が会社の資産を担保に取ったりすることで、返済してもらえるようリスクヘッジをします。ここでいう担保については、宇宙ビジネスの資産専用の制度があるわけではなく、昔から地球にある動産譲渡担保という制度を活用します。

譲渡担保とは、お金を借りる側が貸す側に資産を譲渡しつつ使わせてもらい、もし返済が滞るようであれば、貸す側は資産を売却してお金を回収できるという仕組みです。法律上は資産が貸す側のものになりますが、借りる側からすれば資産を引き続き使用できるので、事業を継続しつつ資金を調達できるというメリットがあります。

しかし、例えば人工衛星の場合はどのように引き渡しがなされるかよくわかりませんし、複数からお金を借りていた場合のルールが不明確です。また、取引は必ずしも国内に限りません。
そこで、資金調達に関する国際的なルールが必要となります。

ケープタウン条約

ケープタウン条約は、アセット・ファイナンスに関する取扱いを明確にするため作られたルールで、以下の3つの内容からなります。

①担保権は登録の先後で勝敗を決める
②返済が滞った場合の担保権実行の方法
③借りる側が破産しても担保権実行の手続が止まったり、権利の効力は変更されない

①担保権は登録の先後で勝敗を決める
例えば、A銀行とB銀行がスタートアップC社にお金を貸し、Cの資産を譲渡担保とした場合を考えます。
A銀行の方がB銀行より先に譲渡担保の約束をしましたが、先に登録をしたのはB銀行だったとします。この場合、優先するのはB銀行ということになります。

②返済が滞った場合の担保権実行の方法
返済が滞った場合、担保権を行使することになりますが、貸す側と借りる側との契約の中で、返済が滞った場合には合理的な方法で国際担保権を行使することを合意することができます。このような合意がなされていると、裁判所を介さずに直接権利行使ができるようになります。

③借りる側が破産しても担保権実行の手続が止まったり、権利の効力は変更されない
日本の法律では、破産した場合に担保権を行使することが制限される可能性は0ではありませんが、ケープタウン条約では権利行使が制約されないことになっています。
※宇宙資産議定書参照(次回以降)

まとめ

ケープタウン条約は、本来は宇宙ファイナンスというよりも航空機のファイナンスを想定していますが、2012年、衛星ファイナンスに応用するため「宇宙資産議定書」が作成されています。
宇宙資産議定書の内容についても、おって取り上げていければと思います。

参考:
・宇宙ビジネスのための宇宙法入門第2版 小塚荘一郎・佐藤雅彦
・これだけは知っておきたい!弁護士による宇宙ビジネスガイド 第一東京弁護士会


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