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3分でわかる衛星リモセン法アウトライン

2017年11月15日、衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律(通称:衛星リモセン法)が施行されました。
これは、宇宙基本法の下、リモセン記録が適切に取り扱われるようルールメイキングされたものです。

衛星リモートセンシング記録とは

リモセン記録とは、衛星に搭載したセンサーを使って得られた地球表面の観測データのことです。

例えばこれは、名古屋周辺の土地がどのように活用されているかを表している画像です(赤が市街地 左:1983年6月1日 右:1993年5月16日)。
出典:JAXAホームページ 第一宇宙技術部門
https://www.eorc.jaxa.jp/rs_knowledge/landuse.html

画像を見ると、10年の間に市街地が拡大していることがわかります。リモート・センシング技術センターは、リモート・センシングを「物を触らずに調べる」技術として紹介しています。
出典:一般社団法人リモート・センシング技術センター
https://www.restec.or.jp/knowledge/sensing/sensing-1

上の画像は市街地の分析例ですが、他にも、田んぼを衛星画像データで分析することで、生育環境をモニタリングし、安定した供給を実現させたり、海沿いや川をモニタリングして津波、洪水等の災害に備えたりと、ドローンや航空機の活用では難しい社会課題の解決に貢献することが期待されます。

3つのルール

リモセン法のルールは、大きく分けて以下の3つです。

①衛星リモセン装置の使用許可制度
②情報を持つ者の義務
③情報を扱う者の認定

このルールメイキングの背景には、
①情報がテロリスト等に悪用されない制度が必要
②他国は既にルールをつくっている
③基準を明確化して予見可能性を高める必要がある
④新ビジネスへの期待
といった事情が挙げられます。

リモセン記録は軍事技術でもあり、悪用のおそれがある国やテロリストの手にデータが渡ることを防止する必要がある一方、リモセン記録を使った新しいビジネス展開とのバランスを確保するという趣旨です。

衛星リモセン装置の許可制

本法は、基本的には新規事業者の事業リスクを低減し、参入を後押ししようという理念に基づいています。
とはいえ、「ゆるふわ」な規制では、リモセン記録がテロリスト等の手に渡ることを防止できません。
そこで、これらのバランスを考え、高分解能の衛星リモセン装置を使用するためには、内閣総理大臣の許可が必要とされました。規制の対象となるかどうかは、使用するセンサーの種類とそのセンサーがどのくらい地表の様子を見分けられるか(分解能)によって分けられます。例えば、「2メートル」であれば2メートル以上の物なら識別できるといった具合です。

その上で、リモセン装置使用者に対し、
①不正使用防止措置
②申請受信設備以外の使用禁止
③申請軌道以外での停止
④使用終了時の措置
等の義務を課しています。

衛星リモセン記録保有者の義務

リモセン記録は、その分析によって貴重なデータが得られます。しかしそれはテロリストや悪用しようとする者等にとっても同じことで、リモセン記録が容易に外部に流出しないよう仕組みを整える必要があります。
そこで、リモセン記録を保有する者は、原則としてリモセン記録を第三者に提供してはならないこととされています。
例外として、リモセン記録を取扱う認定を受けた者、特定取扱機関に適正な方法により行う場合等には提供が可能です。

衛星リモセン記録を取り扱う者の認定

リモセン記録を取り扱う者は、「リモセン記録を適正に取り扱うことができる」という認定を受けることができます。
要するに「この人はリモセン記録を正しく扱うことができますよ」というお墨付きです。
これにより、外部からリモセン記録をもらうことができるようになります。

おわりに

衛星の超小型化、大量生産化に伴いリモセン記録の利活用が進む中で、個人情報やプライバシーのあり方も転換期を迎えています。価値観の移り変わりの中、リモセンビジネスがどのように展開していくか注目です。

参考:
・衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律に基づく措置等に関するガイドライン 内閣府宇宙開発戦略推進事務局
・JAXAホームページ 第一宇宙技術部門
https://www.eorc.jaxa.jp/rs_knowledge/

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