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3分でわかるリモートセンシングと個人情報

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衛星リモートセンシングは、人工衛星を使って宇宙空間から地表の情報を広く取得する技術です。
その分解能(解像度)やクオリティが高まるにつれて、個人の生活の様子等も把握できるようになってきました。
この場合、個人のプライバシーや個人情報との兼ね合いが問題となり得ます。

個人情報との関係ー個人を特定できるかどうか

個人情報保護法は、「個人情報」を生存する個人に関する情報であって、特定の個人を識別することができるものと定義しています(2条1項)。
その情報そのものでは個人を識別できなくても、他の情報とかけ合わさることで個人を識別できる場合も個人情報に含まれます。

個人情報を取り扱う場合には、①取得、②利用、③保管、④提供のそれぞれ場面に応じて基本的なルールがあります。

①個人情報を取得するとき
個人情報を取得する時は、どのような目的で利用するのか具体的に特定し、あらかじめ公表するか、本人に知らせておく必要があります。

②個人情報を利用するとき

取得した個人情報は無制限に利用できるのではなく、利用目的の範囲に限定されます。

③個人情報を保管するとき

取得した個人情報は、漏洩などが生じないように安全に管理しなければなりません。

④個人情報を提供するとき

個人情報を本人以外の第三者に渡すときは、原則として本人の同意が必要です。

このように、個人情報を取り扱う場合にはリモセン画像に「個人情報」が含まれる場合には様々な規制を受けることになります。

個人情報や後述するプライバシーとの関係については、航空写真の考え方が参考になります。
日本測量調査技術協会は、「高解像度航空写真のインターネット公開における注意喚起」を作成し、以下のように述べています。

不特定多数の人が自由に閲覧できるインターネットWebサイトに公開または提供される航空写真については、少なくとも屋上や庭先の人物が識別できないもの、自動車の車種が特定できないもの、その他個人の財産や生活状況が類推できないものとすべきであり、解像度の調整及び画面上の拡大制限等適切な処置を望むものです。

リモセン画像についても航空写真と同様に考えるのであれば、少なくとも人物の識別や自動車の車種の特定、その他個人の財産や生活状況が類推できないようにする必要があることになります。

プライバシーとの関係

個人情報とプライバシーは別物です。
プライバシーとは、私生活や私事、個人の秘密のような他人にみだりに知られたくない情報をいい、そのような私生活をみだりに公開されない権利をプライバシー権といいます。

個人情報のように法律でプライバシーの定義や保護のための規制について規定されているわけではありませんが、過去の裁判例が集積しています。
そのようなプライバシー侵害に対しては、民法上の不法行為等として救済(主に金銭での賠償)が図られることとなります。

国際法曹協会による提案

ところで、国際法曹団体の国際法曹協会(International Bar Association:IBA)はこうした問題に取り組んでおり、「地理的情報中の権利の承認およびその使用により影響を受ける者の保護に関する条約」を提案しています。

これは、リモセン画像に対する権利と撮影される側の利益(プライバシーなど)のバランスを確保しようとするもので、今後の動きが注目されます。

参考:
・宇宙ビジネスのための宇宙法入門第2版 小塚荘一郎・佐藤雅彦
・個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編) 個人情報保護委員会
・「高解像度航空写真のインターネット公開における注意喚起」 財団法人日本測量調査技術協会 井上 誠

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