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3分でわかる宇宙物体登録条約

宇宙条約の具体化

宇宙条約8条は、「宇宙空間に発射された物体が登録されている条約の当事国は、その物体及びその乗員に対し、それらが宇宙空間又は天体上にある間、管轄権及び管理権を保持する。」と規定しています。
地球上では、例えば日本の不動産であれば登記によって誰のものかが示されていますが(後述のように例外あり)、人工衛星やロケットなどの宇宙物体は、登録によって管理・管轄権が誰にあるかが明らかにされます。

宇宙物体に関する事故は打上げ国が責任を負うとされますが、そもそも打上げ国がどこなのかわからなければ責任追及ができません。
登録制度は、宇宙物体と管理権を持つ国を結びつける役割を担っているわけです。
しかし、宇宙条約には具体的な手続や具体的にどの国が管理権を持つのか、明確に規定されていません。これを具体化したのが宇宙物体登録条約です。

宇宙物体とは?

そもそも、宇宙物体とは宇宙空間に打ち上げられた物体をいい、宇宙物体の構成部分や打上げ機及びその部品を含みます(宇宙物体登録条約1条(b))。
なお、スペースデブリが宇宙物体といえるかが問題となりますが、いったん製造されて宇宙空間に投入されれば、形が変わっても宇宙物体となるため、スペースデブリも宇宙物体です。

登録手続

宇宙物体登録条約では、「打上げ国が宇宙物体を登録する」というルールを整備することによって管轄・管理権を持つ国の範囲を明確にしています。
ちなみに、打上げ国が複数ある場合は協議によって1つの国にできるし、合意によって第三者が管轄権を持つことも認められます。
なお、打上げ国とは、①宇宙物体の打上げを行い、又は行わせる国、②宇宙物体が、その領域又は施設から打ち上げられる国をいいます。

ところで、この登録については国内の手続と国連の手続に分かれ、宇宙条約で規定されている手続は国内の登録を指しています。
他方、宇宙物体登録条約で規定されているのは国連に関する登録です。具体的には、国連事務総長への通報が必要となります。
国連事務総長は、受領した情報を記録する登録簿を保管し、登録簿に記載される全ての情報を公開します。
手続面では、宇宙物体が軌道・軌道外に打ち上げられたときは、打上げ国は登録簿に記入することにより宇宙物体を登録し、登録国は、国連事務総長に以下の情報を提供します。

・打上げ国の国名
・宇宙物体の適当な標識又は登録番号
・打上げが行われた日及び領域又は場所
・基本的な軌道要素(周期、傾斜角、遠地点、近地点)
・宇宙物体の一般的機能

国際連合事務総長は、上記情報を記録する登録簿を保管することになります。

課題(無登録の問題)

宇宙物体を登録すれば、国連に情報が提供されることになりますが、必ずしも全ての宇宙物体が登録されているわけではありません。
そもそも全ての国が宇宙物体登録条約に加盟しているわけではありませんし、民間企業の衛星に関しては、条約締約国の企業であるにもかかわらず登録されていない場合もあるという課題を抱えています。
先述のように、日本の不動産は登記によって誰のものかがわかりますが、例えば相続が発生しても手続にお金がかかるしめんどくさいという理由で登記がされず、実際の所有者と登記に書いてある所有者が違うということも珍しくありません。
無登録の問題は必ずしも宇宙特有の問題ではなく、似たような問題が私たちの身近なところで起こっていたりもするのです。

参考:
・宇宙ビジネスのための宇宙法入門第2版 小塚荘一郎・佐藤雅彦
・宇宙法ハンドブック 慶應義塾大学宇宙法センター

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