3分でわかる宇宙活動の自由

宇宙条約の基本的な原則

「趣味は宇宙活動」と言うと、「宇宙開発は国が莫大な予算をかけて行うものだ」という話をぶつけられることがあるかもしれません。
果たして、そのような決まりはあるのでしょうか?

これに関連する最も基本的な原則が、宇宙条約1条です。
宇宙条約1条は以下のように規定し、宇宙活動の自由について定めています。

月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用は、すべての国の利益のために、その経済的又は科学的発展の程度にかかわりなく行われるものであり、全人類に認められる活動分野である。
月その他の天体を含む宇宙空間は、すべての国がいかなる種類の差別もなく、平等の基礎に立ち、かつ、国際法に従って、自由に探査し及び利用できるものとし、また天体のすべての地域への立入は、自由である。
月その他の天体を含む宇宙空間における科学的調査は、自由であり、また、諸国はこの調査における国際協力を容易にし、かつ、奨励するものとする。

これを分解すると、以下のように整理できます。

①すべての国の利益のため
②全人類に認められる活動分野
③平等
④天体のすべての地域への立入りは自由
⑤科学的調査の自由と国際協力

つまり、宇宙活動(開発)全人類に認められる活動分野なわけですから、宇宙条約上も堂々と「趣味は宇宙活動」と宣言すべきといえます。
ちなみに、宇宙条約では「宇宙活動」という言葉は使われておらず、「月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用」という言葉が使われています。

全ての国の利益のため(国際公益)

ところで、国単位の宇宙活動に目を向けてみると、いくら宇宙活動が自由とはいえ全く自由に宇宙活動がなされれば、宇宙活動先進国と途上国の格差が開いてしまいます。
例えば、宇宙活動先進国が宇宙資源を開発し尽くしてしまうこともあるかもしれません。
そのため、宇宙活動の自由と国際公益の調整を図る必要が出てきます。

スペース・ベネフィット宣言

1996年に国連で採択されたスペース・ベネフィット宣言は、拘束力のあるルールではありませんが、上記の宇宙活動の自由と国際公益の調整について明確化した国連総会決議です。
スペース・ベネフィット宣言では、特に国際協力における開発途上国の利益に関し、「開発途上国の技術的援助及び合理的かつ効率的な財政的、技術的資源の配分」の必要性について述べ、以下の目標を掲げています。

①宇宙科学及び技術並びにその応用の発達を促進すること。
②関係国における妥当かつ適切な宇宙能力の発達を促進すること。
③相互に受け入れ可能な基礎に立っての国家間の専門的知識及び技術の交換を容易にすること。

特に宇宙資源開発の場面では、先進国と途上国との関係をどのように調整するかが一つの大きな課題となっています。

参考:
・宇宙ビジネスのための宇宙法入門第2版 小塚荘一郎・佐藤雅彦
・これだけは知っておきたい!弁護士による宇宙ビジネスガイド 第一東京弁護士会

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