溺れる男
感情を亡くした男が、海で溺れていた。
特に恐れもなく、不安もなく。
それを見つけた漁師が、彼を助けに泳いで向かった。
漁師に助けられたその男は、特に礼を言うでなく、浜辺にうずくまっていた。
次の日、又、その男が海で溺れていた。
見かけた漁師は、再び彼を助けた。
そして、男は、また浜辺に無言で佇んでいた。
次の日も、また、次の日も、男は溺れ続けた。
そして、漁師は、次の日も、また次の日も、男を助け続けた。
漁師は知っていた、男が何故溺れ続けるのかを。
男も知っていた、何故、漁師が助け続けるのかを。
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