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第1回 かみのやま温泉駅(山形県)

2021年12月30日収集。

かみのやま温泉駅に到着し、わたしは早速スタンプ台を探した。
ずいぶんとキョロキョロしていたので、このままでは不審者に間違われてしまうのではと思い、自分で探すことを諦めて駅員さんを頼ることにした。

みどりの窓口には、3人ほどの駅員さんがいた。わたしと友人以外には誰も客がおらず、3人の視線は一気にわたしたちに集中した。これからスタンプ台の在処を聞くことが恥ずかしく思えるくらい、なぜか自分自身に緊張が走る。

「どうされました?」
「あの、記念スタンプを集めていて……。スタンプ台を探しているのですが…」
「ああ! どうぞここにありますので押していってください」

案内されたのは、駅員さんのほぼ目の前。そして、それはわたしの目の前にあった。緊張で目の前が見えなくなっていたのだ。まさに灯台下暗しじゃないか、と思いながら、わたしは買ったばかりのスタンプノートをひらく。

(ちゃんとインクがのりますように)

そう強く祈りながら、四方八方にグッと力を込めながらスタンプを押し、ゆっくり力を抜いた。

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「かみのやま温泉駅」の文字が半分切れてしまった。あれだけグリグリとまんべんなく力を込めてスタンプを押したはずなのに、なんてむずかしいんだろう。

絵描き歌で採用されてもいいような簡易的なかかし。シンプルな絵柄だが、しっかりと印象に残る。線の強弱やしなやかさまで表現されていて、手描き感がそのまま伝わるデザインだ。インクは黒。うすい黒。インクを補充するべきか悩むほどの薄さだ。しかしインクがもっと濃くなってしまうと、このわびしさや渋さが半減するかもしれない。このかかしに関しては、インクを補充しないほうがいい。むしろ、この薄さを保つために少しずつインクを補充するくらいがちょうどいいのではないだろうか。

それにしても、なぜ、かみのやま温泉駅のスタンプの絵柄にかかしが使われているのだろう。かみのやま温泉駅に背を向けると、目の前にはタクシー会社がある。そのタクシー会社のロゴにも、同じかかしが使われているのだ。かみのやま温泉は、きっとかかしが有名なんだろう。記念スタンプの絵柄に温泉関連ではなく、かかしを採用するくらいだもの。

自分で少し調べてみたところ、どうやらかみのやま温泉周辺では「かかし祭り」が開催されているらしい。お祭りの時期は全国からかかしが集まるのだとか。

温泉を差し置いて、かかしを記念スタンプの絵柄に採用したのだから、よっぽど思い入れがあるにちがいない。かみのやま温泉とかかしのつながりについて、もっと掘り下げたくなってしまう。

もしかして、これって、すでに手中に落ちているのでは。
かみのやま温泉なのに、かかし? なんで? へぇ〜全国かかし祭りがあるんだ。今度行ってみようかな。だけどなんでかかし? そんなに深い縁があるのだろうか。かみのやま温泉……。かかし……。かみのやま温泉……。かかし……。かかし……。

もう、かみのやま温泉とかかしの関係性で頭がいっぱい。

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