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【第3回】 他の人に比べて郷土愛がかなり薄い

第3回 お悩みリスナー: さとう たいち さん/不動産、映像制作

(お手伝い:佐藤 克宏さん)

〈お悩み資料室〉とは?
泖(りゅう)の「お悩み」をお手伝い1名と共に、様々なジャンルの方に直接聞いてもらいます。お悩みは「当日まで内緒」or「事前に公開」を選べます。他者はわたしの悩みや迷いをどんな風に捉え、どんな角度で思考するのか。または、思考しているのか。一緒に考え、あれこれと想像を膨らませます。たぶんお悩みは解決しません。代わりに、きっとなにかが優しくなるでしょう。どうか温かく見守ってください。

※2019年4月20日に公開されたものです

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(左:りゅう 右:さとう たいち さん)

りゅう:第3回〈お悩み資料室〉は、宅飲み形式でお届けします。そして、ここは今回のお手伝いを務めていただく佐藤克宏さんのご自宅です。このお方、わたしの実兄でございます。よろしくお願いいたします! ではまず、かんぱ~い。

たいち:かんぱーい。

克宏:おつかれさまでーす。

一同:(ゴクゴクゴク)

りゅう:はい。ということで、第3回目のお悩みリスナーは、さとう たいち さんです。お悩みは「当日まで内緒」ということだったので早速発表します~。

たいち:はい。

りゅう:第3回目のお悩みは、”他の人に比べて、郷土愛がかなり薄い”です! というのもですね、この前LINEでNHKニュースを見てて。そこで目に留まったのが『茨城県は納豆の消費量/栃木県は餃子の消費量がどちらも2位だった』っていうニュースでね。

たいち:うん。

りゅう:そこで「この状況についてどう思うか?」って街頭インタビューもしてたんだけど、10~20代の若い子たちが「もっと納豆/餃子を食べなきゃいけないと思いました」とか言ってたの。健気にさ。

たいち:(笑)

りゅう:わたしの予想以上に、けっこう郷土愛が強いなって思う答えが返ってきてて。

たいち:あぁ~。なるほどね。

りゅう:栃木県に至っては「浜松に餃子の消費量を抜かされて悔しいです」って、若い子たちが言うの。「他の地域に負けたくないから、明日からもっと納豆/餃子食べます」とか答えてるのを読んで、ちょっと自分に置き換えてみたんだよね。わたしは、ずーっと角田(※宮城県角田市。県の南部にあり、今回の3人の出身地&現住所です)を出たくて、出たくて、仕方なくて。名産品は梅干しってことしか知らないし。しかも、わたし、梅干しは嫌いだし。「別に消費量なんて、どうでもいいわ」って思ったのと同時に、郷土愛が薄いってことに妙な悲しさも感じたんですよ。

たいち:うんうん。

りゅう:そう考えると、みんなの郷土愛ってどれくらいあるんだろうって思ったの。その点で、たいちさんて、ずーーーっと角田にいるじゃないですか。

たいち:バカにしてんの(笑)?

りゅう:いやいや(笑)! めちゃくちゃ「外」に出たそうな感じするのに、なんでずっと角田にいるんだろうって。

たいち&克宏:(笑)

克宏:ディス、入ってるな(笑)。

りゅう:そんなことはないけど(笑)。「外」に出たくなかったの?

たいち:もう遅かったかも、タイミングが。ミスった、というか。

りゅう:どういうこと?

たいち:たとえば、どこか「外」の学校に行くとか、そういうのがあれば出てたけど……。あと、これは甘えかもしれないけど家業のこともあったしね。特に「外」に出る理由があんまりなかったかもしれない。

りゅう:いつも、あんなに角田を否定しまくってるのに(笑)?

たいち:そう(笑)。角田に住んでるけど、意識は角田にないかな~。好きな音楽とか、好きなことも、中学校くらいから周りの人とズレてるなって感じてたし。でも、周りには合わせてたよ。「海行こうぜ」とか、「ナンパ行こうぜ」とか、そういう集まりには参加してた。

克宏:「海行こうぜ」……(笑)。

たいち:そういうのあるじゃん(笑)!「合コンしようぜ」とか。あんまり気乗りしなかったけど「そういうものなのかな~」って。どうしても、強制的に周りに合わせなきゃいけない期間ってあるでしょ。特に、中学校とかはさ。

りゅう:うんうん。

たいち:その期間て、生まれた土地からは基本的に離れられないからね。でも、高校生くらいになってくると、割と”足枷”って外れはじめてさ。音楽とかも自分が好きものを堂々と聞いたりとか、興味があったスノーボードを始めたりとか。あと、20歳くらいを過ぎるとフジロックに行きはじめたり、ネットサーフィンもしたりとか。それで、角田に住んでいても「外」にはアクセスできるようになったんだよね。消費するのは「外」のものだし。だから、「外」に出る必要がなかったし、そこまで出たいとは思わなかった。

りゅう:へぇ~。

たいち:自分で「ものづくり」をせずに、消費する側の人間であれば「外」に出なくても大丈夫だと思う。消費するだけだったら、角田にいても十分消費できるかなって。そもそも、角田のものを消費してるわけじゃないし。インターネット社会の恩恵ですよ。

りゅう:わたしは、もうね、中学校ぐらいから「外」に出たかったの。

たいち:そうなんだ。

りゅう:兄に、こういうのがいたからね……。

克宏:ふふっ……。

りゅう:ファッション誌とかも選ばされたの。

たいち:え、なに。どういうこと(笑)?

りゅう:小学5年生の時に、わたしが読むファッション誌を選ばされたの。

たいち&克宏:(笑)

りゅう:いきなり、兄が2冊も買ってきたんだよね。女性向けのファッション誌を(笑)。そこで「『mini』か『CUTiE』のどっちか選べ」って言われたの。

たいち:なにそれ(笑)!

克宏:やべぇ兄だ(笑)。

りゅう:でも、まぁ「どっちか選べ」って言われたから「CUTiE」って答えたら、そのまま『CUTiE』を渡されて。

たいち:なんで? あやかちゃん(※りゅうの本名です)が服とかに興味がありそうな感じを兄が察して買ってきたとか?

りゅう:そこは分かんない。本人に聞いてみて。

たいち:なんで?

克宏:なんだったんだろうね。

りゅう&たいち:(笑)

たいち:やべぇ奴じゃん! ただのやべぇ奴じゃん(笑)!

克宏:やべぇ奴だな、これ。

りゅう:はっきり覚えてるもん、これは。

克宏:でも、確かにあったかもしれない……。すごい好きだったんだよね。服なのか、そのぉ~、煌びやかなものが(笑)。

りゅう&たいち:(笑)

りゅう:そういう時期だったんだろうね~。たしか、そのとき克宏さんは中3くらいだよね?

克宏:うん。中2・3くらい。やっぱり、なんか、目覚めたんだろうね。音楽もそうだし。服とか、いろいろ。文明開化!

りゅう&たいち:(笑)

りゅう:だからさ、私も『CUTiE』で文明開化したわけですよ。

たいち&克宏:うんうん。

りゅう:当時の『CUTiE』ってスナップ企画が多くて、そこに街角のおしゃれな古着系女子たちがたくさんいたの。「えっ、こんなにハイカラな人たちがいるの?」って衝撃を受けましてね。音楽とか服とか、そういったカルチャーが5歳上の兄から自分に落ちてくるから、同世代とは好みが合わないわけですよ。

たいち:うんうんうん。

りゅう:高校も、そういう風に悶々と過ごしてね。だから、東京とかに行ったら、気の合う人がたくさんいるんだろうな~って思ってたのね。で、実際に東京に行ってみたら、理想的な気の合う人って中々いなくて。気付いたら、友達といるより一人でいる時間の方が長くなってたんだよね~。当時からの友達は今でも好きだし、別に一人が嫌だったわけじゃないんだけどね。

たいち:そうだよね。たくさん人がいるからといって、自分の理想的な層に出くわすっていうわけでもないよね。

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りゅう:でも、たいちさんは、これまで角田で消費する側だったわけだけど、いま角田で『空白実習室』っていうオルタナティブスペース(※『空白実習室』はたいちさんの家業・不動産会社で所有管理する古い空きテナントを改修し、アートイベント、作品制作、編集、物販などクリエーターたちの秘密基地として運用する予定です )を作ろうとしてるじゃない。

たいち:そうだね。

りゅう:その心境の変化を伺いたい!

たいち:これは、郷土愛というか。郷土に騙されてたな、と思って。

りゅう:えぇ!? ちょっとメモしていい? 俺は…… 郷土に…… 騙されてた……。

克宏:(笑)

たいち:心境の変化、っていうのは「まちを良くしたい!」とかそういう意味?

りゅう:そういう面もあるのかなって。

たいち:なるほど。さっき「郷土に騙されてた」って話したけどさ。

りゅう:うん。

たいち:10年ちょっと前はインターネットで、そんなにたくさんの情報を得られなかったじゃん。前は普通に生活してても、そもそも「クリエイティブなもの」があるっていう情報すら受け取れなかったし。もっと言えばさ、自分が何をしたくて、どんな学校があるかっていう選択肢を広げられる情報もあんまり受け取れなかったような……。

りゅう:うんうん。

たいち:たとえば「専門高校に行ったら就職です」とか「普通高校に行ったら大学に行って優良企業に就職します」とか、あらゆる選択肢の最終地点が「就職しやすいように」っていう理由に行き着いてたし、生活していく手段として何かを学ぶってことを自然と強要されてたと思うんだよね。でも、本来は違うじゃん。大学とかってちゃんと学ぶために行くとこでしょ? そういう意味で、当時は特に都会と田舎の情報格差みたいなのがあったんじゃないかな。いまはそれが、だいぶフラットになったと思うけど。

りゅう:へぇ~。

たいち:ましてや田舎って、なんか、あるじゃん。ちゃんと勉強してる奴はイケてない、みたいな。

りゅう:あぁ~。あるかもね~。

たいち:足の速ぇ奴がかっこいいとか。

りゅう:あるある。若さゆえのね。

たいち:そうそう。でも、俺も大人になって、いろいろな情報を得て、いろいろ消費してきたわけだけど。角田では「外」のものは消費できるけど「自分で何かを生み出したり作ったりすることはできない」ってずっと思ってたのね。だって、みんなが「それは角田ではできないよ」とか言うわけ。仕事に関しても「角田ではその仕事はできないよ」とかね。だけど、いざ蓋を開けてみたら「いま角田でできていることも、これから先もう角田でもできねぇ世の中になってきてんじゃん」って気付いたんだよね。

りゅう:ほほう。

たいち:いま俺も地元で仕事やってるけど、どの仕事も、もう、どん詰まりを感じるというか。みんな「角田ではこの仕事しかできねぇ」て言ってたけど、「いや、もう角田でもできねぇじゃん」って。だから、そういう意味で、俺は郷土に騙されてたね。

りゅう:じゃあ、角田が好きで『空白実習室』を運営したいわけでもない?

たいち:うん。たまたま角田でもやれるなと思ったから。「別に東京とか仙台じゃなくても角田でやれるわ」ってなっただけ。それをやるからって、角田にはあんまり期待してないし。

りゅう:たいちさんも郷土愛があるわけじゃないの?

たいち:愛してはない。潜在的には好きなんだろうけど。でも、長くいすぎると「愛」と「憎しみ」が生まれるんだよね。心の中ではかなり好きだけど、すごく嫌い、みたいな。その2つが釣り合ってる状態が自分の原動力になってるんだと思う。

克宏:それ、「愛」っぽくない?

りゅう:うん。愛、かもね。

たいち:愛なのかなぁ。

りゅう:これ、すこし恋愛の話になろうとしてない(笑)?

たいち&克宏:(笑)

たいち:でもムカついてるんだよ? すごいムカつくの。自分の思い通りにならないから。

りゅう:どういう面で思い通りにならない?

たいち:まず、自分の思っていることを受け止めてくれる人っていうか、理解者が周りにあんまりいない……。これが一番嫌。

りゅう&克宏:愛、だよね~。

たいち:そう?

りゅう:だって正直言うと、わたしはどうでもいいもん。角田なんて。無関心なんだよね。

たいち:そうなんだ。

克宏:なんか、やっぱりさ。……あ、俺が喋っても大丈夫?

りゅう&たいち:どうぞ、どうぞ。

克宏:わたしたち人間も「人」を愛するじゃないですか。なんで愛するのかって、たぶんさ、子孫を残すためにさ、愛していくっていう……。

りゅう:自分で言って、恥ずかしくなってきてるよ(笑)。

克宏:(笑)。まぁ、「愛」は引力みたいなもんで。あやか自身も「愛がない」って言ってるけど、生まれたところもなくちゃ自分自身が生きていけないじゃん。だから、どっかで意識はしてて、もしかしたら、それが郷土愛だった、とかあるんじゃない? 愛の形はいっぱいあるからさ!

りゅう:(笑)

たいち:でも、もし自分の郷土が爆発してなくなったとしても、俺は泣けないな、と思う。今の状態では。

克宏:いま、たいちが言ってるのは、目に見える土地とか建物の「まち」なだけじゃん。角田自体はなくなったりしないじゃないですか、爆発したとしても。郷土愛の「郷土」ってなんだろう、っていう感じだよね? 郷土は「人」なのか、「建物」なのか、「土地」なのか、っていう。

りゅう:そうそうそう。たぶん、わたしは好きになりたいんですよ。でも、好きになる要素を見つけられなくて。なんでかっていうと、自分が住んでるところの文化がよく分かんないの。民族っていうのを意識すると自分のアイデンティティとかに繋がると思うんだけど。たとえば、角田って、盆踊りの曲が違う地方のものが使われてたりとかしてるじゃん。

たいち:「相馬盆唄」だからね、この辺は。

克宏:でも、分かんないじゃん? どこかの民族の人たちもさ、どこかで見聞きしたものをそのままやってるんじゃなくて、名前を変えて自分たちの文化にしてるのかもしれないしさ。角田でやってる盆踊りを「相馬盆踊り」って言ってるから、相馬盆踊りになるだけかもしれないよ?

りゅう:おぉ~。なるほどね!

たいち:あ、ごめん。ちょっと着信が。……はいはい。あ、みおちゃーん(※たいちさんの愛娘)。

りゅう&克宏:(笑)

たいち:テレビ電話する? あ、はいはい。……いや、まだ帰んないよ。ごめん。うん、遅い。はーい。ごめんね。みおちゃんバイバーイ。はいはい。はーい。

克宏:すごいタイミング(笑)。わかってるね、奥さんも。狙ってるね~。

りゅう&たいち:(笑)

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克宏:話は戻るけど「郷土」って難しいよ。「郷土」とは何なのか。「郷土」をどう捉えているかによっても違う意味になるよね。そこ共通しとかないと。

たいち:でもさ、あやかちゃんに、もはや「郷土」っていう感覚がないんじゃないか、っていう。

りゅう:そうかもしれない。っていうのも、住むところが転々としてるからさ。わたし。静岡に住んだり、東京に住んだり、新潟に住んだり。どこも住みやすかった!

たいち:同じだからね、大体は。ある程度開けてるところに住むと、どこに住んでも同じなんだよね。

りゅう:どこでも素敵な人はたくさんいるし、素晴らしい文化もあるし。「外」の人だからこそ、見えるものってあるじゃん。そこの土地で発見した「もの」とか、羨ましいな~って。でね。いま、自分が「郷土」とされるところに帰ってきたじゃないですか。改めて住んでみたら「あれ、角田の良いところってなんだろう?」って思ったんですよ。同時に「郷土」っていうのも、全く分からなくなってしまって。自分の生まれたところが「郷土」なのか、っていうところから訳分かんなくなってきちゃったんだよね。だから、みんなはどういう風に「郷土」を考えてるんだろうな、って思ったの。

克宏:でもさ、あやかが「外」に出たから尚更だけど。あ、俺が話して大丈夫?

たいち:(笑)

りゅう:大丈夫、大丈夫。”でしゃばりお手伝い” オッケーです。

克宏:”でしゃばりお手伝い”(笑)!

たいち:一応、”でしゃばりお手伝い” も写真に撮っておこう。

克宏:「外」に出たからだけど、周りの人に「どっから来たの?」って言われるじゃん。

たいち:(カシャッ)

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りゅう:「どっから来たの?」は言われるね。

克宏:「外」の人に「どっから来たの?」って聞かれたら、こっちは「宮城!」って答えるじゃん。そうすると「宮城のどこ出身なの?」って聞かれて、こっちが「(めんどくせぇな)……仙台」って答える一連の流れがあるでしょ?

りゅう:あるある(笑)!

克宏:だよね? 仙台、って一応答えるけど「本当は仙台じゃねぇけどな!」っていう感じ。

りゅう&たいち:(笑)

たいち:お前もやってたろ、それ(笑)。

克宏:うん、やってた。だって「角田」って言っても、みんな分かんねぇじゃん。そういうところで意識とかはないの? 生まれたところっていうか、育ったところっていうか。

りゅう:意識かぁ~。「仙台」って答えたくないのは、すごいあるかもな~。だけど、そこで「仙台」って言わないと角田の位置とか土地の情報を最初から説明するのがかなり面倒。

克宏:その会話自体の意味も分かんねぇし。

りゅう:そうそうそう(笑)!

克宏:「あぁ~! 仙台なんだぁ~!」っていう反応に対して「まぁ、はい……」って答える会話になんの意味があるのか。

りゅう&たいち:(笑)

りゅう:話がズレちゃうけど、車のナンバーに関して言うと、「宮城ナンバー」と「仙台ナンバー」が選べるようになったじゃん。あれで、県よりも県庁所在地の知名度の方が大きんだな~って再確認した。

たいち:でも、もともと仙台なんだよね、宮城って。

りゅう:ん? もともと仙台、というのは?

たいち:ほら、宮城県自体が仙台藩だったから。

りゅう:そういうことか! なるほど!

たいち:仙台藩が宮城県の各エリアに置いてたわけでしょ、自分の部下たちを。

りゅう:ほうほう。

たいち:仙台県にしたら、みんなが救われるんじゃない?

りゅう&克宏:(笑)

りゅう:そうすると県庁所在地も仙台市?

たいち:仙台市、仙台市。仙台の人間になれるから、どこに行っても堂々と歩けるよ。「どこから来たんですか?」って聞かれたら、

たいち&克宏:「仙台」。

りゅう:(笑)

たいち:仙台県角田市って言えるんだよ。みんな、仙台出身! そういうことじゃねーかなっ!

りゅう&克宏:(笑)

りゅう:わたしが他民族に対して羨ましいって思うのは、たとえば、その土地によって「踊り」とか「歌」みたいなのがあることなんですよ。映画とか動画で見たんだけど、「輪」になってる感じが美しかったんだよね。「郷土」を生まれたところって考えると、そういう「踊り」とか「歌」って、その土地に生まれないと体験できなかったり、伝承されなかったりするわけじゃん。世代から世代へだんだんと受け継がれるもの、みたいな。母親から教わる料理とかじゃないけどさ。先祖代々から続く「踊り」とか「歌」がずーっと続いてると、「あ、郷土ならではの文化だわ」って思う。

たいち:分かる分かる。でも、そういう文化って分かりやすくない? それが1000年前とか2000年前とかにあったかっていうと、多分ないでしょ。ある一定のところから、何十年、何百年てあるものを自分たちは文化として認識してるかもしれないけど、1000年、2000年とか遡っていくと、やっぱりないと思うんだよね。人が「郷土」を作るのに移動してるから。

りゅう:郷土を作る!

たいち:郷土を作るために何百年てスパンで移動して、そこで自分たちで文化を作ってるから。それがたまたま、そこにいる人たちが守って、長い時間に渡って継承されてるから、それを文化として認識してるだけなんじゃない?

りゅう:ほほう。

たいち:『ROW八MON』(※読み方:ロウハモン/地元の有志によって宮城県角田市・八幡神社で開催されるナイスな音楽イベント。今回の3人は運営側でがんばっています)だってまだ3回しかやってないけど、あれは立派な文化だよ。

りゅう:たしかに!

たいち&克宏:(笑)

たいち:文化ってものを時間軸で見過ぎなのかもしれないよ。

りゅう:そうだね。時間軸で見過ぎてたかもしれない。

克宏:でも昔はもっとあったんだろうね。なにか。郷土愛的なものが。

たいち:うん。それだけ速度が早まってるんだと思うよ。

りゅう:なんの速度?

たいち:生きる速度。テクノロジーの発展もあるけど、今は情報量も膨大になってるから、昔みたいに時間をかけて何か一つのものを長く育てたり、作ったり、継続していくことが難しくなってるんじゃない?

克宏:りゅう先生が言う民俗文化みたいなのとかで、たとえるならさ。他の民族が攻めてきて戦うときに、めちゃくちゃ郷土愛とか民族愛を意識すると思うんだよね。だから、むしろ郷土愛がないのは、もしかしたら平和なことなのかもしれない!

りゅう&たいち:なるほど~。

克宏:たとえば日本とどっかの国が戦争することになったら、やっぱり「日本のために!」とか思うわけじゃん。外国とかが攻めてきてさ。まず「これはやべぇ、自分が死ぬかもしれない」って直感するよね。大切な何かが失われてしまうって感じたときに、日本のために、角田のために、とか思えるんじゃない?

りゅう:あ。それこそさ、高校の定期戦とかそうなんじゃないの?

たいち&克宏:あぁ~~~。

りゅう:白石高校 vs 角田高校。

克宏:あれはすごく「郷土」を認識するんだろうね。

りゅう:ここの3人、高校が角田市じゃなくて隣の白石市だね。たいちさんは白石工業高校で、克宏さんは白石高校。

たいち&克宏:たしかに。

りゅう:わたしは白石高校の隣の白石女子高校(※現・白石高校。わたしが卒業した後に男子校だった白石高校と統合されました)だったけど。めちゃくちゃすごいじゃん、応援練習とか。「一致団結!」みたいな。応援練習のエピソードとか聞いたことあるけど、ちょっと引くよね(笑)。

たいち:俺はすげー冷めた目で「がんばるな~」と思って見てたよ。

克宏:やっぱり、まちのみんなが注目するからね。勝ち負けを。そういうことかもね。

りゅう:きっと戦いが必要なんだね。郷土愛を確認するには。

克宏:だから、まだ何とも戦ってないんじゃない(笑)?

一同:(笑)

たいち:郷土愛が欲しい理由は、それがないのが悲しいなって思うこと?

りゅう:そう。みんな、自分の出身地について語ることがあるじゃないですか。「うちの地元は何もないから~」って悪く言うけど、そこにこそ、わたしは「愛」を感じる。

たいち:なんだかんだ、過ごしやすいんじゃない? 過ごしやすいから、みんないるんだろうね。

克宏:いまネットで調べてたら、人類学者のヘレン・フィッシャーって人は「愛」と「感謝」を結びつけてるらしくて。「感謝」は「愛」に繋がるし、「愛」は「感謝」に繋がるらしいよ。もしかしたら「感謝」がないから「愛」がないのかもしれないね。

りゅう:ハッ……!

たいち:それはあるかも!

りゅう:やばい。わたし、めちゃくちゃ薄情じゃん。

克宏:(笑)

たいち:そう?

克宏:でも「郷土」のどこかに対して感謝があれば、ムカツいてたり、どうでもいいと思ったりしながらも「こんないい所があるんだよ」って言えるのかもね。「郷土」って土地とか建物以外にも、近所のおじいちゃん/おばあちゃんとかも入ってくるかもしれないじゃん。そういうのが郷土愛になったりしてね。ちなみに、いまグーグル先生に聞いたところ「郷土愛ランキング」ってのがあるらしくて。

りゅう:えぇ~! そんなのあるの?

克宏:毎年上位にくるのが、北海道と沖縄だって。このランキングでは、郷土への「愛着」と「自慢」度合いが、郷土愛に繋がると考えられているらしい。どっちかって言うと「民俗感」が強いね。北海道も、沖縄も。

たいち:土着してる感じだね。北海道とかは開拓移民だから、フロンティアな人たちが多いんじゃない?

りゅう:沖縄とかも羨ましいもん。みんなで泡盛を飲みながら、三線を弾いて、指笛を吹いて、踊って、とかさ。そういうのいいなぁ~。

克宏:色があるからね。逆に「郷土愛ランキング」が低いのは、関東圏。東京周辺の茨城県、埼玉県とかもね。人も、文化も、ごちゃごちゃに混ざってるから郷土愛が低いのかもしれない。

りゅう:そう考えると難しいね。文化とか個性を自分で作らなきゃいけないじゃん、角田を好きになるためには。まず、戦って……。

克宏:まずは「感謝」だね(笑)。

りゅう:そうかそうか(笑)。感謝して…… 戦って……。

たいち:やっぱり、歴史は勝者が作ってるわけだからね。文化を作るのは戦いに勝った人間ですよ。ところで「お悩み」のアンサー的なやつはどうするの?

りゅう:未解決でも大丈夫なの。資料だから!

たいち:未解決でもいいんだ(笑)。

りゅう:今回で分かったのは、まず郷土を好きになるために、感謝して。そして、戦って、勝って、文化を作る、と。

たいち:それだね。

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りゅう:でもさ、たいちさんは好き? 角田のこと。

たいち:潜在的には好きだけど、ビジュアル的には嫌い。

りゅう:(笑)。お手伝いさんはどうですか? 角田のこと好き?

克宏:あぁ~。まぁ、「好き」じゃないんだよね。「愛」はあるかもしれない。もしかしたら。

たいち:そうね。

克宏:別に「好き」ではない。

たいち&克宏:「愛」はあるけど「好き」じゃない。

りゅう:なるほどね~。わたしもそこまで言えるように、感謝して、戦って、文化を作ろう。

たいち&克宏:そうだね。そういうことだね。

克宏:解決したじゃん!

りゅう:いや、でも、わたしは何と戦えば……?

たいち&克宏:(笑)

りゅう:まず戦う「相手」をリストアップしていくわ。そのときはチェックお願いします!

たいち&克宏:はいはい。

りゅう:それでは、第3回〈お悩み資料室〉はここでお開きにしたいと思います。ありがとうございました。お二人とも、宅飲み形式・後編の第4回〈お悩み資料室〉もよろしくお願いします~。

たいち&克宏:はーい。ありがとうございました~。

-終-

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