見出し画像

#2 ホワイ鳥

朝が来るとホワイ鳥が鳴く。
「ホワ〜イ、ホワ〜イ」

ホワイ鳥が鳴けば、わたしはすぐに掛け布団をガバッと自分からひっぺがし、部屋の窓からホワイ鳥ウォッチングを開始する。

ホワイ鳥ウォッチングの始まりは、カラス好きが高じてカラスの観察をしてみようと思ったことから。

朝、部屋の窓からカラスウォッチングをしていると、時々カラスの鳴き声のなかに聞き覚えのない鳴き声が聞こえるのだ。

それが「ホワ〜イ、ホワ〜イ」。

カラスウォッチングを何日か続けてみたものの、回を重ねるごとに、どちらかというとホワイ鳥のほうに気が向いていることに気がついた。

そのうち、カラスウォッチングは二の次でホワイ鳥ウォッチングが第一目的となってしまっていた。

なぜ、こんなにもホワイ鳥にわたしの心が傾くのか。

理由はとても簡単で、鳴き声の主張は激しいのに、肝心のホワイ鳥の姿はまだ一度も見たことがないのだ。

だからホワイ鳥がどんな姿かもわからないし、何色なのかもわからない。ただ、鳴き声の大きさから考えると、相当でっかい鳥だと思う。

しかも、カラスの鳴き声にはさまざまなバリエーションがあるが、ホワイ鳥は「ホワ〜イ、ホワ〜イ」だけ。謎が深まる。

姿・形がわからない。何色かもわからない。名前すらもわからず、唯一ある情報から勝手にホワイ鳥と呼ぶしかないのだ。

ホワイ鳥は一所懸命に、なにを主張しているのか。気になって仕方がない。けれども、姿はまだ一度も確認したことがない。

ホワイ鳥ウォッチングを始めてから3ヶ月。謎は一つも解明されていない。

このままずっとホワイ鳥ウォッチングを続けていれば、ホワイ鳥研究の第一人者ともなれそうな気さえする。もはやホワイ鳥の鳴き声が聞こえるのはわたしだけなのか。それはこわい。

ホワイ鳥研究・権威候補者のわたしが鳴き声から想像するに、ホワイ鳥はでっぷり太っていて、間抜けな面持ち。意外にも菜食主義者。いつも自分のことは後回しで損をしてしまう性格。そして常に世界平和を真剣に祈りながら、あの街この町をパトロール。

野太い鳴き声しか判明していないので、わたしの想像力が爆発してしまいそうだ。

みなさんの住んでいるところに「ホワ〜イ、ホワ〜イ」と鳴いている鳥はいませんか?

ホワイ鳥はどんな姿で、どんなものを食べ、どんなことを想いながら「ホワ〜イ、ホワ〜イ」とだけ声高々に叫んでいるんだろう。

情報求ム。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?