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「スマートドラフティング」の商標登録出願と、その概念の定義


弁理士が商標出願すること

個人的にはあまり好ましいと思っていない(あくまでも個人的な考えだ)。本質的に我々弁理士は、クライアントのサービス名称や会社名の模倣を防ぐべく、知財の権利化を代理することが商売だ。となると、クライアントが取得できる商標の選択肢を自ら減らすようなことは、職業人として決して好ましくはないのではないか、と思っている。
繰り返しになるが、あくまでも個人的な感想・見解であり、将来考え方が変わるかもしれない。

一方で「自分が経営する特許事務所名」の商標出願をすることについては何も違和感はない。例えば、僕が経営しているIPTech弁理士法人も「IPTech」という商標を出願している。ここに違和感はない。
そして、現実問題として、弁理士だって自ら事業をすることもあるし、新しいサービスを開発・提供することもある。Smart-IP社は、知財業界のDX化を加速させるために、今般「appia-engine」というサービスをリリースし、会社名も商標登録出願した。

そして最近では、appia-engineのような特許明細書作成に特化したツールの登場や、ChatGPTのような生成AIを活用した特許明細書の自動作成の可能性も出てきたことから、我々Smart-IP社としても「新しい特許明細書作成のあり方」について議論しやすくするため、「スマートドラフティング」という概念を提唱し始めている。
時代の変化をわかりやすくとらえるために、象徴的な概念に「言葉(ラベル)」をつけて、議論を進めることも大切だと考えたからだ(とはいえ、単なるバズワードになるでは意味がないけど)。

そこで、僕らは「スマートドラフティング」という概念について、実際に商標登録出願を行うことにし、このたび出願が公開された。


「スマートドラフティング」の商標出願

「スマートドラフティング」を商標登録出願すべきかについては、結構悩んだ。新しい概念の提唱はいいとしても、それを独占的権利である商標権として取得すること自体、どうなのか。ましてや弁理士が社長をやっている会社において。

仮に商標権を取得してしまうと、他の人は自由に使用することはできなくなる。つまり、みんな気楽に「スマートドラフティング」という言葉がつかえなくなる。「フレーズ」「ワード」として、業界内に広がりにくくなる。
とはいえ、権利の取得を怠ると、自由に他の人が使える言葉になる。Smart-IP社として定義し、提唱していきたい「スマートドラフティング」の概念とは別の使われ方をしてしまうこともあり得る。

それぞれにメリット、デメリットがあるため、社内でも意見が割れた。が、最終的には出願しようという結論が出た。
概念の提唱だけをし、出願はしない方が、言葉としては使われやすいとは思う。しかし、権利を取得しておかなければ、その概念自体を誤って使われてしまったり、便乗のような形で悪質な使われ方をすることもあり得る。言葉を選ばずに言うと、少なくとも僕らSmart-IP社から見て、イケていない知財サービスを提供している会社が「これこそがスマートドラフティングだ!」みたいなことを平然と言われてしまうと、僕らの伝えたいメッセージがねじれて伝わってしまうことを懸念した。

新しい概念を提唱する以上、その浸透や定義には責任をもっていかなければならない。
であるなら、きちんと権利も保有し、品質保証機能にもコミットする(イケていないサービスに「スマートドラフティング」を使われる場合は、それを排除することも視野に入れる)ということが、少なくとも「スマートドラフティング」については正しいのではないかという考えに至った。

そこで僕らは、商標登録出願をしつつ、その意図も含めて、文章で説明するのが着地としてよいのではないか、と考えた。
ここで、僕らが提唱する「スマートドラフティング」という概念の、現段階における定義をしておきたい(今後、変わる可能性もある)。

スマートドラフティングの定義・・・
「スマートドラフティング」とは、特許明細書作成、中間応答に特化したUIを持つツールや、生成AIツールを駆使して、特許明細書等を効率的に、かつ、高品質に作成、チェックするための特許明細書作成方法を指す。


「スマートドラフティング」の使用について

Smart-IP社として考える商標権(仮に成立した場合)「スマートドラフティング」の使用については、SNSや、セミナー、論文などで個人がこの用語を使う場合には(仮にネガティブな文脈だとしても)Smart-IP社は一切権利主張をしない方針だ。
法人についても原則上記の通りだが、上記の定義に当てはまらないようなサービス・プロダクトが「スマートドラフティング」という用語を使う場合には、その使用を取りやめていただく場合がある。
これ以外のルールは原則設けないが、疑義がある場合には、できればSmart-IP社まで問い合わせ・相談をしてほしい。というスタンスでいたいと考えている。

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