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協同組合的文化生態とビットバレー文化、そしてネット型音楽産業の現在まで

毎週水曜の早朝(7〜8時)に行っている、文化雑談会「トーキョーアーツのれん会」の話題を共有するnoteです。先々週にPUBLIC HOUSE渋谷で行ったのれん会の模様を2回にわたってお伝えする後編です。

※今後の予定やおすすめ書籍の案内は最下部にあります。

前回のnoteでは、のれん会常連の生協前田さんが千葉へ災害復興支援に言った話で終わりましたが、後編ではアート界隈における協同組合的な生態についての話題からスタートしました。

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まず、こののれん会に隔週で会場協力を頂いている両国門天ホールの話をしました。両国門天の前身である「門仲天井ホール」(東京都江東区門前仲町のビルの最上階-天井-にありました)は、そもそも日雇い労働者向けの労働組合が、組合会館を建てる時にイタリアの労働組合会館を視察し、そこにバールとホールが付随していたことに影響を受けてつくられたハコだったという話をしました。ちなみに今の両国門天ホールにも受け継がれたスタインウェイピアノは、当初あまりいい音の出ないピアノしかなかった門天ホールに、アーティストたちが、自分たちが弾くピアノをカンパで購入しようと呼びかけて集まった寄付金で購入したピアノです。

▼門天ホールmenu 2019 January&February 1月2月のmenu
2019年1月9日(サイトをスクロールしていくと、1月の記事にカンパでピアノを買った話が出ています)


そんな話を承けて、音楽プロデューサーの永田純さんからは、渋谷にITが集まったのは、ビットバレー・アソシエイションがあったことが大きく、それは小さく弱いものが集まることで、支え合っていく、という協同組合的な見方もできるという話につなぎました。

▼2000年(19年前!)の古い記事ですが当時のビットバレーのことが書かれています。

あわせて、この記事も読むと面白いです。
▼ビットバレーから20年:日本のベンチャー村とは


そこから、どのように文化は形づくられるのか、という話題になり、人のつながりだけでは続かず、「看板」(〇〇文化を物語るシンボルのような存在)があって、それを運営する人が居て、というところが根っこになる、という話が印象深かったです。
もしかしたら、この「トーキョーアーツのれん会」の看板も、新しい文化のきっかけになっていくかもしれませんね。(実は、結構のれん会がきっかけで始まったプロジェクトや協業なども多いのですが、それは改めてまとめてみたいと思っています。)

永田さんは、2011年に最初の本(「次世代ミュージシャンのためのセルフマネージメント・バイブル」)を出した後、音楽家を対象にした「何でも相談室」(90分無料で1対1の相談室)を行っているそうです。開始当時は、どうすればメジャーデビューできますか?というような相談が多かったけれど、今はそういう相談は皆無で、メジャーを目指すのではなく、自分たちで仕組みもハンドメイドして発信するのが当たり前になったといいます。
もちろん、その背景には、インターネットがあり「Soundcloud」や「Spotify」などのサービスで自ら音楽を世界に届けられるようになったということがあるわけです。ただここで気にしておきたいのは、例えばSpotifyが 「すべての人のための音楽」というビジョンを掲げていても、それが日本に入ってくると、消費のツールになってしまうことです。ぼくもこの日本人の「消費にしないとビジネスにならないと思ってる病」には大きな違和感があります。

▼次世代ミュージシャンのためのセルフマネージメント・バイブル

もう少し突っ込んで書くと、これを、欧米と日本のインターネット文化の違いという一言で片付けるのは、違うと思うのです。
新しい文化を創ると新しい消費が生まれるのに、体系的に育てようとせず、偶然生まれた表現(あるいは「商品」)に頼って業界が生きながらえているような状況に対して、ちょっとノホホンとしすぎだと思います。映画祭然り、芸術祭然り、日本のフェスティバルが観客に観てもらうこと(消費)ばかりに力を注ぎ、プロフェッショナル同士の交流やネットワーク形成、あるいは、若手育成的な視点のプログラムをないがしろにしすぎていることについても同じことが言えるように感じました。あまりに消費によりすぎてしまうことに対して、しっかりと文化を育てる観点(マネタイズ含め)で音楽(だけにとどまらず芸術文化)の未来を考えていきたいと強く感じた朝でした。

2019.9.25 @PUBLIC HOUSE渋谷 6名参加
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【今後の予定】
10/9 PUBLIC HOUSE 渋谷
10/16 両国門天ホール(仮)
10/23 PUBLIC HOUSE 渋谷
10/30 出張でお休みします
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—おすすめ書籍—
たった1分で仕事も人生も変える 自己紹介2.0
横石 崇 (著)


一言コメ:こんなところにもイノベーションが!自己紹介から自己分析!
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