大人の豆大福

原宿を代表するスイーツといえば、間違いなく豆大福である。パンケーキだのクレープだのは子どもたちに食べさせておけばよい。

誰かが「瑞穂」の豆大福は日本一だと言っていて、和菓子で日本一だということは世界一であると、よくわからない三段論法を用いながら、親父がいつも食べていた。

ふだんは厳しいことばかり言って格好つけていた親父が、子どもみたいに手を粉まみれにしながら大福にかぶりつく姿は、どこかユーモラスで微笑ましかった。

俺はあまり和菓子を食べないが、親父が逝ってからはちょくちょく瑞穂で豆大福を買うようになった。さらりとしたあんこにもちもちと豆の舌ざわり。甘味と塩味の調和。子どもの頃にはわからなかった味わい。手を真っ白にしながら、つづけて二個は食べてしまう。

人が好きだったものは伝播する。俺はイタリアンが好きで、映画が好きで、小説が好きで、猫が好きで、海が好きで、豆大福が好きで……、どれも親父が好きだったものばかりだ。

男の子だから反発もしたけれど、違う道を行くのだと憎んだこともあったけど、けっきょく俺は親父と同じだ。甘くてしょっぱい豆大福を食べるといつも、好きと嫌いはけっきょく同じかもしれないなあなどと思う。

さっき子どもたちに食べさせてみたけど、一口かじって返されてしまった。やっぱりまだまだガキにこの味はわかんねえんだろう。まあ、ゆっくり大人になれよ。


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竜さんの「つぶやき以上○○未満」

長すぎるつぶやきと……。
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