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#35【夢日記】ユーチューブチャンネルの登録者数が爆上がり

こんな夢を見た。

僕はユーチューバーとして活動していた。地元の友達、それも、“ツレ”と形容したくなるぐらいには仲の良い、竹馬の友である、I.Mとコンビを組んで、バラエティ系のユーチューブチャンネルを運営していた。

まぁ、良くある類のやつだ。「サムネイルで釣ろうとすんな」と文句を言われそうな。男二人がわちゃわちゃしながらバカ騒ぎしているような。そんな図をイメージしてもらえれば、大体合っているかと思われる。

そんな僕達は、底辺ユーチューバーだった。登録者数は4桁にも満たない、それも、ようやく3桁に乗りました、登録者数100人突破ありがとう配信をするようなレベルだった。

※登録者数が100人ソコソコのユーチューブチャンネル、並びに、ユーチューバーを嘲りたい意図は無いので、悪しからず。気分を害された方が居たら、ごめんなさい。

そんな僕達だったので「登録者数1000人超えたらパーティーだね!」と、I.Mと笑顔で言い合いながら、モチベーションが下がって来た時には励まし合いながら、仲睦まじく、健気に、動画をUPしていた。

ところが、だ。

ある日、いつも通り、動画をUPしようかと思い、自身のユーチューブチャンネルの画面に行くと、目を疑うような光景が広がっていた。

“チャンネル登録者数:14000人”

一瞬、いや、しばらく、何が起きたのか分からず、僕は硬直した。見間違えかと思った。再度見た。14000人。夢かと思った。鼓動の高鳴りを感じる。夢じゃない。14000人。これは紛う方なき事実なのだ。

まぁ夢なんだけどさ。

「なぜこんなことになったんだ・・・?」

真相を確かめようと思い、僕は、これまでにUPした動画を総浚(そうざら)いした。それほど経たない内に、コレが原因なのではないか、と思われるモノが見つかった。

“視聴回数:27万回再生”

僕は目をパチクリさせた。だって「万」という数字に慣れていないのだから。いや、それを言えば、チャンネル登録者数も、同じことが言えるのだけど。見方を変えれば、「万」の存在を認識出来るぐらい現実を受け入れられるようになった、とも、言えるのかもしれない。

まぁ夢なんだけどさ。

僕は、恐る恐る、といった風に、“バズった動画”を、クリックしてみた。そしてまた、怖いもの見たさ、といった風に、コメント数も、チェックしてみた。

“コメント数:427”

僕は、これまで「2」とか「3」とかしか見たことが無かったので、3桁を悠々と突破した物凄い数のコメントの量を見ただけで、お腹いっぱいになってしまった。とてもじゃないけど、内容を確認する気にはなれなかった。いや、確認する勇気が持てなかった、それを受け止める器量が無かった、と言った方が、正しいだろうか。

今書いて気付いたけど「427(死にな)」と読めますね。不吉ですね。怖いですね。

ここまでチェックして、僕は、画面を閉じた。動画をUPする予定だったが、取りやめた。なぜなら、“緊急事態”だからだ。今この瞬間の気持ちを、動画におさめないといけない。そんな使命感で胸が一杯だった。

僕はI.Mに“緊急事態”を手短に伝えた。彼も驚天動地といった感じで、俄(にわ)かには信じられないといったテイで、話を聞いていた。百聞は一見に如かずというわけで、数字を見せた。僕とほとんど同じリアクションをしていた。それもそのはず。僕なんて「言葉に出来ない」という感情はこういうことだったんですねぇと、小田和正さんに問い掛けたくなったほどだ。

そして、僕とI.Mは、高揚感に駆られたまま、動画撮影に臨んだ。「登録者数1000人突破ありがとう」を飛び越えて「登録者数10000人突破ありがとう」という感謝を視聴者の皆様に届けるために。

・・・しかし、ココで問題が生じた。

“上手く話せない”

僕もI.Mも「チャンネル登録者数:14000人」「視聴回数:27万回」「コメント数:427」といった“数字の魔力”に身も心も囚(とら)われてしまい、これまで通り、流暢に話すことが出来ないのだ。

僕の場合は、凄く前のめりになっているというのか、生放送のミスで言うところの「走り過ぎ」みたいな状態に陥っていた。要するに、気合いが空回りしてしまって、間の使い方、抑揚、滑舌といった諸々が、メチャクチャになってしまっているわけだ。

I.Mは、そんな僕の、“前へ前へ”といったテイに気圧(けお)されてしまったのか、彼もまた、本来の姿では無かった。僕とは正反対で、前に出なさ過ぎ、といったところだ。

「こんなんじゃダメだ、撮り直そう」

いつも通りに振る舞うことが出来ていないことに気が付き、撮影を中断しては再開して、といったことを、何度か繰り返してみたものの、僕達がイメージする絵は、一向に撮れなかった。

本来の姿ではないことを自覚し、平常心を心掛けて撮影ボタンを押そう、自然体を意識して話そう、そう思えば思うほど、平常心ではいられず、焦燥感が募った。それに伴って、自然体からはかけ離れていったのだ。

やがて、僕は、呟くように、言った。

「こんな動画を人様にお見せすることは出来ない・・・。定期更新を一旦中断して、ほとぼりがさめたら、また、動画を撮って、UPしよう」

I.Mも、力無く頷いた。

今この瞬間では、冷静な状態ではいられないのも当然だ。僕達にはクールダウンする時間が必要だろう。そう判断したわけだ。

しかし・・・。

その後、時間を空けても、数字のことが、頭から離れることはなかった。むしろ、ねっとりと、僕の脳内に絡み付くように、くっついて離れなかった。

時間を空けて撮影に取り掛かろうとしたら、再び「チャンネル登録者数:14000人」「視聴回数:27万回」「コメント数:427」という数字を見た時の衝撃がフラッシュバックして、正常な状態ではいられなくなる。

I.Mも同じだったらしい。ユーチューブのことは考えないようにしていても、ふとしたタイミングで思い出しては、ああでもないこうでもないと、思考がグルグル回って、気が気じゃなくなる。そんなことの繰り返しだったようだ。

そして僕達は、悲しい決断をしたのだった。

「俺達、ユーチューバー、引退しようか・・・」
「うん、そうだね・・・」

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