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バリ島のバリアンについて私見。

前回、バリアンについて少し書いた。
バリアン、とは、民間医、とか、呪術医、シャーマン、と訳されることが多い。要するに、「病気を治したり、健康な人を病気にすることが出来る人」のことだ。インドネシアでは、「ドゥクン」という事が多いかな?

西暦2000年頃までは、バリの人は西洋医学よりも圧倒的に民間医療の方に頼っているな、という印象だった。
西洋医学はお金もかかるし、手の施しようが無くなったら行く、という印象。

普通のお医者さんと違うのが、その診立て。
大概、「不思議な力」で症状の原因が分かり、病原が「ブラック・マジック(人からの嫉妬や恨み)」によるものだ、という診断。もちろん、全ての病気がブラック・マジックによるものだという訳ではなく、ブラック・マジックにかかっているのか違うのか、という見立てもしてくれる。
それで、もしブラック・マジックにかかっていたら、それを解いてくれるのである。

私は、なかなか懐疑的な性格なので、バリアンであろうと西洋医学の医者であろうと、人から言われることを中々素直に聞き入れられない性格である。自分から「あそこのバリアンに行きたい」と言ったことは、過去に一度しかなく、あとは興味本位で人のにくっついて行くくらい。
その回数も、人に語れるほどではないのだけど…
覚えていることを備忘録として、書いておこうと思う。

物やお金が無くなったので2回連れて行かれたことが有る。バリアンでも、失せものが得意な人が居て、盗難の場合、誰が盗ったか分かる、というのである。
ただし、そのバリアンには(盗人の)顔は見えていても、私がその人(盗人)の事を知らなければ、接点もないしどうしようもないのだが(笑)
二度のうち一回は、「友達。女の人」と言われて、なんだか周りの人に対して疑心暗鬼になってしまった(笑)

しかし、私は失せものは仕方がないと思っている。特に海外で物を盗られたり、というのは、自分の責任だと思うのだ。管理不足。盗られる方にも責任あり。
だからお金を盗られたときは、腹は立たなかった。が、バリアンに連れて行かれたので興味本位で聞いた、という感じ。
件の「友達。女の人」の時は、ずいぶん時間が経ってから、「ああ。」と思い当る節があって、やっぱりあのバリアンは見えてたんだな、と思った。
が、まあ、なくなったものが返ってくるわけではないし、盗られたことに対して、別に怒りも悲しみも湧いてこなかった。

その後は、結婚してから、今度は私が旦那を連れてクタの有名なバリアンに行った。その人は、お坊さんであった。
旦那は昔から非常にセンシティブなところがあって(なんせPolos過ぎるから  笑)、結婚もして子供も生まれたのに、いつまでもそんなじゃ困る!(私が)ということで、当時は結構、思い詰めて、乗り気でない旦那を無理やり連れて行った気がする。
その時は、バリ語がまだまだ、いまいち分からなかったので、旦那とそのお坊さんの会話が殆ど分からなかったが、とにかく、心配する私の気持ちをとても汲んでくれたと思う。「あったかくて大きい人だなあ」と思った。
一歳になる娘も私も旦那もずぶ濡れになるくらい水をかけられて、震えながら帰ったのを覚えている。旦那の場合、ブラック・マジックにかかっている訳ではなかったが、バリ暦の誕生日の日付的にちょっと問題があり、それを解消するために、バリ式の儀式が必要、とのことで。
その時に言われたとおりに、結構おおがかりな儀式を行って、家でもお供え物をした。
その後、確かに旦那は少し変わった気がする。
メンタル面で大きく調子を崩すことはなくなった。旦那本人はどう思ってるのか分からないが、私にはとても印象に残る体験だった。このお坊さんのことはずっと印象に残っていて、去年、十何年ぶりかでお礼参りが出来た。すごくお爺さんになっていたが、やっぱりとてもあったかい人だった。

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その後は、姑が行くのにくっついてチャングーへ。姑が治療?中、ひたすら痛がってたので、怖くて外で待ってました(笑)

2011年ごろから、友人経由で知り合ったバリアンの男の子のところに、何回かマッサージしてもらいに行っていた。彼も、「見える系」で、表面から見て、どこの部分に病巣があるのか、分かるようだった。純粋にマッサージがよかったのだが、いはゆる「エネルギーワーク」的な事をした時に、初めて、目を閉じてても、相手の気の流れというかエネルギーの流れをはっきりと感じる、という体験をした。あとは、自分の気というかエネルギーを、ある程度感じるようにする仕方、など教えてくれた。
彼は、症状に合わせてよく薬草を処方してくれた。
うちの家の敷地には、薬になるものがわんさか生えてるよ、と教えてくれた。
その彼は、外国人やジャワの方にもよく呼ばれるようになったりと、ちょっと有名になり、料金がどんどん上がっていき、なんだか方向性を見失っているような感じで、見ていて痛々しいほどだった。その後は何となく疎遠になっていった。

それ以降から先日の中国系バリ人のところに着いて行くまで、バリアンを訪ねることは無かった。舅姑や、義姉はよくあちこちのバリアンに行っていたが、着いていくほどの興味もなく。

昔は「バリアン」という存在に対して、「ほんとに当たるのかなあ、ほんとに効くのかなあ」という、興味があったけれど、数少ないながら人のも色々見てきて、「すげーーーー」っていうことが殆ど無かったので、今や全く興味が無くなってしまった。

今となっては、
なくなったもの・去ったものは返ってこないし
死んでしまう人は生き返ってこないし
病気になったら、外科的な手術以外は、自分で食養生や薬草療法や自然療法で何とかしようと思っている。

いはゆるパラノーマルと呼ばれる、不思議な能力を持っている人は現実に居るし、それを否定するつもりは全くない。
けれど、他人のその能力と、私の幸せとは関係がないし、それを求めるのは「私の人生」にとって、別に良いことは無い気がする。

それよりも、熱を出したり病気で苦しんでいる我が子が心配で、一睡もせずに看病し続ける、母親のお手当、それこそが真の民間療法、呪術医療だと思うのである。

身体的な苦痛に関して、どうにかしてそれを取り除きたい、と思うのは人間の生存本能だし、持てる能力総動員で人の苦痛を取り除こうとしてくれる人はすごいと思う。
それこそ、我が子を想う母親のように、「傷つけられたくない、苦しみたくない」という全生物の本能に共感したうえでの治療行為や助ける行為が出来る人は本当に素晴らしい。

だが、健康な人を病気にしたり苦しめたりするような事が本当に出来るとして、そのような事をお金をもらってやってしまう「バリアン」も現実に居る訳だ。
その辺は我々には見分けがつかない。特に外国人には。

だから、不用意に近づかない方がいい、と今の私は思っている。




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