フィロソフィーのダンス、HKT48、サンダルテレフォン……アイドルディスクレビュー#22(11/29〜12/5)

1週間でリリースされたアイドルによる楽曲のうち、個人的に気になった楽曲をピックアップしてレビューをしていく連載の第22回。今回は「フィロソフィーのダンス」「HKT48」「サンダルテレフォン」の3組を取り上げます。

・フィロソフィーのダンス『サンフラワー』(12月1日リリース)

TVアニメ『魔法科高校の優等生』のエンディングテーマとなった前作『ダブル・スタンダード』から引き続き新曲『サンフラワー』もオリジナルアニメ映画『フラ・フラダンス』の主題歌となっている。作詞にいしわたり淳治、作曲にHiddie・宇野水木という新たな制作陣を迎えた同曲は、ファンクなサウンドの上で、メンバーの味わい深いボーカルが溶け合い、さらに歌詞のポジティブなメッセージと交わり合うことで多幸感のある楽曲に。映画の舞台となった「スパリゾートハワイアンズ」で実際に撮影されたというドキュメンタリー形式のMVも必見。

年下に思いを馳せる大人の恋愛をムーディーなサウンドで歌った「ジョニーウォーカー」や奥津マリリが作詞に参加した王道クリスマスソング「二人のエクリチュール」もとても良いのだが、個人的にアガったのがmihimaru GTの「気分上々↑↑」。気怠けなボーカルにゆったりとしたメロディとオリジナルと比べてアレンジの振り幅が際立っていて、こちらは深夜にまったりとお酒を片手に聴きたくなる。

・HKT48『アウトスタンディング』(12月1日リリース)

HKT48がアルバムをリリースするのは4年ぶり。この間に指原莉乃の卒業というグループを揺るがしかねない大きな出来事こそあったものの、“なこみく”コンビ、運上弘菜といった若手メンバーの台頭など嬉しいトピックも相次いだ。IZ*ONEから復帰した矢吹奈子も復帰し、結成10周年を迎えたHKT48はいま充実期を迎えていると言ってもいいだろう。

新作『アウトスタンディング』は、「早送りカレンダー」から「君とどこかへ行きたい」までの全シングルとカップリングのほか、田中美久のソロ曲「わたしのふるさと」、宮脇咲良の卒業ソング「思い出にするにはまだ早すぎる」などが収録されており、かなりボリュームのあるアルバムという印象。なかでも矢吹がセンターを務めたリード曲「突然 Do love me!」は、これまでのHKT48のイメージを塗り替えるような、ファンク感のあるダンスナンバーとなっており、これから新しいHKT48像を見せてくれるのではないかという期待を膨らませてくれる。「栄光のラビリンスCM選抜2021」の16名で構成さた、SNSの世界を楽観的に歌った王道アイドルナンバー「SNS WORLD」、次代のメンバーによる切ない片思いを歌った「あっけない粉雪」、7人の豊かなハーモニーが響き合う「全然 変わらない」など、ユニット曲を中心とした新曲もとにかくいい。これまでHKT48を応援してきた人も、これから応援しようと思っているという人も、このアルバムだけでHKT48の今を知ることができるので、まずは聴いてみることをおすすめしたい。

・サンダルテレフォン『REMIXES』(11月30日リリース)

サンダルテレフォンが初のリミックスアルバム『REMIXE』をリリース。本作は1stミニアルバム『Step by Step』に収録されている全楽曲がダンスミュージック風にリアレンジ。アイドルを標榜するグループとしてはリミックス音源を単体でリリースすること自体極めて珍しく、それだけ彼女たちが独自の歩みを進めているのだと思わされる。

全楽曲ともに原曲をベースにしつつも、全く異なる音楽になっているので、聴き比べる楽しさがある本作。特に背伸びした男女の夏の恋愛を爽やかなサウンドで歌われる夏ソング「真夏の匂い」のリミックスは、原曲とかなりテイストの異なる楽曲になっていて、もどかしい青春感のある原曲に対しリミックス音源は積極的に立ち回る男女をイメージさせる。

彼女たちの特徴としてリミックスを音源としてだけではなく、ライブでも組み込んでいるというところがある。そうした試みこそグループの音楽性に深みや広がりをもたせているので、これからも続けてほしいと願うばかりだ。12月29日のライブと最後に西脇朱音が卒業&芸能界を引退することが発表されている。本作は4人で作り上げる最後の作品となるはずなので、4人の集大成として脳裏にしっかりと焼き付けたい。

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