【論文】Trends in Molecular Properties, Bioavailability, and Permeability across the Bayer Compound Collection

2023/2/8
Trends in Molecular Properties, Bioavailability, and Permeability across the Bayer Compound Collection
10.1021/acs.jmedchem.2c01577

バイエルの論文。
「経口バイオアベイラビリティ」と「膜透過性」について、自社化合物の大規模解析を実施、支配的な分子特性について検証。2000を超えるラットのBAデータ、20000を超える Caco-2 データを用いて分析。

中性分子は分子量700くらいまで膜透過性を維持するが、酸や塩基化合物は400〜500くらいに制限されることが分かった。分子量、脂溶生、電荷/極性(pKa)などの特性はすべて、透過性と経口バイオアベイラビリティの両方に強く影響。

「3. GUIDELINES FOR OPTIMIZING F% AND PERMEABILITY」のところに、検証から得られたリガンドデザインの基本指針についてまとめられている。(Fsp3 があまり影響を及ぼさないのは、個人的にはちょっと意外でした)

メドケムの分野には「リピンスキールール」という、経口バイオアベイラビリティーに関する古典的な経験則があります。

ルールオブファイブ

個人的には、リピンスキールールは本当に良い指標だと思うのですが、これに当てはまらない分子というのもあるし、このケミカルスペースを追求する動きもあるわけです。

→ Beyond the Rule of 5 (bRo5)

2017/9 (AbbVie)
Beyond the Rule of 5: Lessons Learned from AbbVie’s Drugs and Compound Collection
10.1021/acs.jmedchem.7b00717

2021/8 (Kyohei Hayashi, Baran Group Meeting)
Beyond the Rule of 5
https://baranlab.org/wp-content/uploads/2021/08/Kyohei_bRo5.pdf

ビッグデータ解析や機械学習が常用される昨今においては、個別のデータを1つ1つ集めて、網羅的に解析する事が大事だと思います。そして、解析対象となる母集団&ケミカルスペースは、どんどん増やしていく&広げていくべきでしょう。そこから既存の枠組みに囚われない "面白い切り口" が見えてくれば、認知バイアスの打開になるし、新しい気づきを生むかもしれません。

『現代の創薬チームは、より困難なターゲットに取り組もうとしており、新しいモダリティでは、分子量500以上、あるいは700以上、logD5以上の浸透性化合物を設計するために何が必要なのか、理解を深めることが求められている。』(拙訳)

上記のようなコメントも本文中にありました。PROTAC などの分子構造を思い描くと、「なかなか切実だな~」という印象を受けます。特に、血液脳関門なんかに至っては、神様に祈ったところで、透過してくれないですからね。勝算のある戦略が必要です。

ARV-110 / ARVINAS
AR/CRBN

NCT05177042
NCT03888612

Pipeline (ARVINAS)

メガファーマの研究者は定期的に、創薬や医薬品開発に関する "総論" "現在地点" を提示する論文を書いてくれます。ある時は社内事例からの教訓であったり、ある時は社内ライブラリの大規模解析 → 一般法則の提示、フレームワークの提案、教育的論文、組織論など様々です。こういった文献は多少古くなっても勉強になることが多く、壁にぶつかった時の良き指針になります。やっぱそう考えるよね的な感じで、妙に親近感を感じることも少なくありません。





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