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Hayato SUMINO CONCERT TOUR 2023 “Reimagine” #16 final に行ってきた

2023/3/10(金)、角野隼斗さんのソロコンサートツアー “Reimagene” 東京オペラシティコンサートホールでの千穐楽に行ってきました。
まだ色々反芻中なのですが、じっくり時間をかけて気持ちを分析するよりも、素直な感想を残しておきたいなと思いました。
このnoteは、伝えたい相手を想像したり、詳しく解説したりはしません。強いていうなら、全16公演どこかでこのツアーを見られた方や、世界中で配信されたこの公演を会場やストリーミングで観られた方に、少しだけでも気持ちが共有できたら嬉しいなという感じです。


3/13:ちょびっと追記
個人的な気持ちの記録のつもりが、思いの外反響いただきましてありがとうございます。角野さん人気っぷり、このコンサートへの関心の高さを改めて感じました。
フジロックの話は僕がこのnoteアカウント作ったきっかけの記事なので、過去記事リンクしておきますね。


3/10までのこと

元々クラシックを聴くような人間ではなかった僕が角野さんと出会ったのは2022年のフジロックです。それはそれは大きな衝撃を受けまして、そこから彼のファンになって、角野さんのファンの方々と繋がり、クラシックをよく聴く皆さんの情報から僕自身も色々と世界が広がってきました。
角野さんのコンサートは、昨年1度行き、今回は2度目です。1回目はBBC Proms JAPANというイベント、オーケストラとの共演で、それはそれは刺激的なステージでした。イベントのテーマや演出も素晴らしかったし、初めてコンサートホールで見るオーケストラの演奏の感動たるや。
ただ、その時の衝撃は、自分の未体験の扉が開いたような感じで、それはそれで大きな収穫だったのですが、今回のソロツアーは、ある意味フジロックでの衝撃の答え合わせというか、角野隼斗さんが表現するピアノの世界をじっくりと生で聴いて、自分が改めてどう感じるかを知りたいなという好奇心もありました。

約2ヶ月で全国を回る今回のツアー、できればフジロックの時のように、なるべく情報を持たない状態でその演奏を聴いてみたいなという気持ちがありました。
SNS時代に情報を遮断するのは難しいですが、公演の感想などは意図的には見ず、自分が見に行ける日を清々粛々と待ち望んでいたいような感じです。
SNSにシェアされる30秒動画とかは毎回楽しんでいたんですが、公演の演出とかは本当に知らなかったです。(3/10の朝のNHKの放送は思いっきりネタバレしてたのでちょっと待ってと思いましたが)
それと、これも正直悩んだのですが、曲の予習もほとんどしませんでした。オリジナル曲やトッカティーナなど元々知っている曲もありますが、バッハはほとんど知りません。ただ、多少コンサートで聴き逃すくらいでも、ニュートラルに音、演奏を聴いて、どう感じるかに賭けました。

開演前

初台の東京オペラシティコンサートホールに行くのはもちろん初めてです。(昨年末、バレエの観劇でお隣のバレエホールには行きました)
行く前は、曲もあまり知らないし、小規模会場でチケット手に入らなかったファンの方もいるだろうしで、俺なんかが行って良いのかなみたいな一抹の不安もあったんですが、いざ行くと、全力で楽しみたいなという気持ちになりました。コンサートホールに入る前は、軽く一杯飲みつつ、SNSでお知り合いになった方とも会場でご挨拶できて、かなりリラックスモードで向かいました。

ホールに入り、自分の席につくと、1階のほぼ全体中央の位置でした。

この時点で、まずECの撮影タイムの画角を考えました。席が真正面に近く、背にそびえるパイプオルガンと高い天井、三角の天窓があまりに美しかったので、動画は横向き派の僕ですが、これは広角で縦向きで撮るしかないなと直感しました。

いざコンサート

そして時刻は19時を周り、照明が落ちるといよいよ角野隼斗さんの登場です。
さすがにこのときはドキドキしました。物音を立てないように荷物は床に置き、ハンカチだけ手に持って姿勢を正しました。
最初はグランドピアノ、そのままアップライトも演奏されたのですが、アップライトの音の暖かみに一気に緊張がほぐれました。いや、音良すぎ。柔らかい響き。このアップライトの音は、SNSに上がっていなかったので完全初体験ですが、素晴らしかったです。

第一部で印象に残ったのはアップライトで演奏された「追憶」→「主よ、人の望みの喜びよ」ですね。「追憶」は照明が思い切り下げられて、ほぼ暗闇の中で一気に音の世界に沈み込む、でも何か温かみを感じる音と演奏。すごくアットホームな印象を受けました。このツアーを通じて16回目のプログラムです。何度も足を運んでいるお客さんもいるのかもしれないですが、緊張感よりもリラックス感を感じました。
そして「主よ〜」は、後方のパイプオルガンが薄らと照らされる演出。曲調も相まって温かみが増します。暖炉。音の世界にゆっくり沈んでいるけど、ほぐれる。

その後のパルティータ第2番、クラシックはおろかバッハなんてまともに聴いたことのない僕のただのつぶやきですが、バロック音楽独特の無機質さがありつつ、人間味、温かみを感じました。世代なのか、バロックからの連想なのか、この時頭の中でスーパーファミコンの「アクトレイザー」のシミュレーションパートが浮かびましたね。いやいやなんだよそのチープな連想って感じなんですが、TVゲーム世代としては、ゲームでのワクワクした思い出とか込みで、懐かしさと暖かさをそこに連想しました。
どうやら僕の中でクラシックと角野さんからの素直な連想はゲームのようです。
パルティータ第2番、1〜6まで曲がありますが、僕は最後の2つが気に入りました。せっかく出会ったのですが、ここからこの世界ももっと知りたいです。

20分の休憩を挟んで後半です。
休憩中に調律師の方がメンテナンスしていました。ピアノのコンサートってこういう感じなんですね。調律師さんいないとピアニストって成立しないんですね。

第二部は「胎動」「Human Universe」と角野さんオリジナル曲で雰囲気も第一部とガラッと変わった感じ。第一部は静かで暖かで、お家で色々話して教えてもらったような感覚。対して第二部は、一緒に外に出て思い切り角野ワールドを駆け抜けていくような感覚。
やっぱり随所でゲームのイメージが頭をよぎるのですが、後半はファイナルファンタジーのようなRPG、叙情的な物語を連想しました。
余談ですが、僕は大学で物理科出身なので、数学はもちろん大好きだし、宇宙ロマンなんて大学進学のモチベーションでしかないので(その後挫折しますが)、MCの語りはかなりの解像度で共感していたと思います。

第二部のメイン、2進数ライトを使った演出のカプースチンとバッハのミックスメドレーは圧巻のかてぃんワールドでしたね。特にバッハを好き勝手にReimagineした表現はさすがとしかいえないです。ここは、理系領域の高解像度と相反して、曲の理解度はかなり低いと思いますが、圧巻の「もりだくさん」をいただきました。原曲を知っている知っていないとかたぶん関係なく、完全に「角野隼斗の音楽」を全身で感じました。
あと、後半で一番衝撃的だったのは、アップライトの音が第一部と違っていたような気が。装置のギミックだけじゃなくて、あれ、休憩中にチューニングしたってことなんでしょうか。後半の音がまたすごく良かったです。

ガチ理系で謎解きとか好きなタイプなので、最初にプログラムが発表された時、この2進数モチーフに速攻で気がついて、ここの演出の構成は予想を立てていました。

アナログ-デジタルは直接的な解釈には含まれてないけど、演出の印象は合っていたのかな。あとカプースチンに挟まれたバッハは完全に再構築されていたので予想通りでしたが、だからどうしたってレベルの演奏をくらって、なんというかジェットコースターぐるんぐるん回ったような達成感と満足感でした。

そして本編終了後のアンコール。ここは事前にパイプオルガンの演奏フラグが立っていたので皆さんの期待はそこに集中していましたよね。
ちなみに僕は、4桁の2進数は15までしか数えられないので、16公演目のライト演出のことがずっと気になっていました。最後のライトが点灯した時、5桁目のライトをそこに持ってきたかと思って、フラグ回収と2進数での16の表記のダブルミーニングで感激し、思わず歓声を上げずにはいられませんでした。(やりやがったなこのやろーの気持ち)

パイプオルガンでの演奏には、このコンサートで初めて角野さんの人間らしさを感じました。いや、全編を通じてとても温かみがあり、アットホームで心地良い空間で、人柄、人間味が溢れていたのですが、その人間性がなんというか天才的な表現者、宇宙船かてぃん号の船長感が強かったのに、急に自分の船の船長やめて、もっと大きい隣の船の船長さんのところに行って操縦の仕方を質問しているような印象で、鍵盤大好きな好奇心旺盛な素の角野隼斗くんが垣間見えました。
ただ、パイプオルガンで奏でられた曲の後半(Human Universeだったんですね)は圧巻でしたね。後光が射してました。ホールの力も味方につける申し子でしたね。

EC2はアップライトでダニーボーイ。これ、角野さんがSNSに上げてくれてます。音、めっちゃくちゃいいですよね。懐かしさとともに温かみが染み渡る。すごく良かったです。

そして最後は撮影タイムできらきら星変奏曲。
撮影は事前に画角を決めていたので迷わず胸の前でスマホを縦にして録画開始。きらきら星変奏曲、Lv.3か5が好きなのでそこをSNSに上げようかなと思っていたのですが、画面を一切見ずに録画してたので、そこは微妙に写りが悪く、よく撮れてたLv.7を上げました。入りのコードがいつもと違いましたね。演奏終わった瞬間に携帯投げ捨てて拍手までがお約束です。いやーなんか最後にこういう演出があるの、パーっとなって楽しいですね。「楽しかったー!」っていうのが素直な感想です。

最後に

満を持して見た角野隼斗ソロコンサート、最高でした。人間味、温かみがあって、自分の世界観をもって表現していて。全体を通じても、このツアーは角野さん本人のやりたいこと、挑戦したいことをやってきていて、この人は本当にピアノが好きで演奏が好きで、やりたい事に溢れているんだろうなと感じました。
本編最後の2進数メドレーは圧巻のかてぃんワールドだったと書きましたが、これってオリジナリティ、解釈、表現ですよね。たぶん見る人、聴く人によっては、こんなの全然違うってなるところなのかもしれません。僕は、何百年も前の曲を何百年もかけて続けてきた演奏家のバトンリレーがあって、その歴史の中の変化、破壊と創造を実際に目の前で見ている感覚覚えました。

フジロックの感想でも書いたんですけど、今回確信に変わりました。彼の演奏は全てリスペクトで成り立っている。作曲家、時代、音楽以外の彼の人生で吸収してきたもの、ホール、楽器、会場のお客さん、チーム。全てに最大限の敬意を持っているから、見た目の派手さ、偽物感、張りぼて感、みたいなものは一切感じないんですよ。一貫した筋があってブレない、クラシックの持つ不変性を壊さない。紡がれた歴史に敬意を持って新しい歴史に挑戦している。視点を変える柔軟性を持つ。遊び心がある。好奇心がある。
フジロックでの気持ちの答え合わせが出来ました。あのときこの片鱗に気づけた自分を褒めたいですよ。最高です。

僕の席の隣がおばあちゃんだったのですが、休憩時間に少しお話ししまして。お孫さんがこのコンサートのチケット取ってくださったそうです。角野さんの演奏のことも、お孫さんが弾くピアノのことも嬉しそうに話してくれました。SNSなんかやるわけないですよね、朝NHK見てたら角野さんが出演されて驚いて、嬉しくてお友達に電話しちゃったといっていました。朝からテレビで見て、その後コンサート見れるなんて、今日は素敵な日ですねと話しました。隣のおばあちゃんと一緒に同じ時間を共有して、一緒に楽しめたのもすごく嬉しかったです。

最後の演奏の前の挨拶で、角野さんは「このツアーは新たな挑戦をしてきた。みなさんの何か刺激になったりきっかけになったりしたらなにより」みたいなことをお話しされていました。言葉の通り、このコンサートからとてつもない刺激を受けました。そして、僕の中でこのコンサートが1つ大きなきっかけになることも間違いないです。
クラシックの不変性と最新の感性の融合に触れました。そして感動しました。きっとこれからも角野さんが見せてくれる新しい世界を追うと思います。これからも自分の世界を突き進んでほしいです。

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