見出し画像

陽気な彼と、ポーカーフェイスのわたし

「お仕事中やと思うねんけど、電話してもいいかな?」

そのLINEメッセージと同時に、電話の着信音が鳴った。

「もしもし?」
『…もしもし』

「いま電話大丈夫?」
『あー、うん。どうしたの?』

「はぁ~!話すの久しぶりだねぇ~」
『うん、そうだね。今日もおつかれさま。』

クールなふりを装うけれど、心のなかでは、かわいいなぁと思っている。けっして、それを声に出すことはないんだけれども。

マイペースに生きることが苦手で、ついつい急いでしまうわたしにとって、この時間は、この声は、すべての緊張をほぐしてくれる。不思議な魔法みたいなのだ。

電話の向こうで笑いながら話している声を聞くと、なぜかこちらまで笑えてくる。おもしろくはなくても、一緒になって笑ってしまうのだ。

実際に会って、となりで話すときの声と変わらない。
違うのは、表情が見えないということだけ。

彼は、(生きててたのしいだろうなぁ)と思うくらい、よく笑う。自分の言ったことに涙を流しながら笑っていたこともあった。やっぱり、よく笑うのは、関西人だからだろうか。

陽気な彼と、ポーカーフェイスのわたしは、どこからどう見たってつりあわない。と思う。わたしも、知り合いも、友達もそう思っている。みんな思っている。ただ、彼だけを除いては。

そんなことを考えていると、
「ね~聞いてる?」なんて言わせてしまった。だから、ちょっと反省するのだけれど、

またすぐに「それでね!あのね!」という少年のような明るい声が飛んでくると、さっき反省したことを、後悔してみたりもする。

「セブンイレブンのくじを引いたら3つとも当たりで、一人でアイス3つ食べたよ~」とか、「ええっ、お仕事そんなに忙しいの?大丈夫?」とか。

「」を見ても分かるように、だいたい、向こうの方が話す。やっぱり関西人は、お話しするのが好きなんだろうかと思う。

電話では、とくに大事な話をするわけではない。

気を付けていることは、しいて言えば、一文字一文字を聞き逃さないようにするくらい。

普段は、会える方が少ないのだ。片道7時間の、遠距離なのだ。

だから、とくに何かたいせつな話をするわけではないのだけれど、その時間がわたしにとって心地いい時間になるのである。

「それじゃあ、来週またお仕事終わったときに電話するね。いい夢見てね。おやすみ~」

昨日は七夕だった。彼の願いが、いつかどこかで叶えばいいなぁと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?