感想文「オールドファッション」
オールドファッション
歌詞 解説 bucknumber
これほど巧妙に仕掛けが施されている歌詞を、私は知りません。
伏線も巧妙に仕掛けられています。
この歌の歌詞の考察は、ネットに沢山あるようなので、細かい解釈は省きます。
以下、解説です。
この歌は、四段階の仕掛けが施されています。
1、1番は普遍的なラブソング
2、2番は失恋ソング
3、彼女がいないこと
4、もう一度聴くと
の四段階です。
説明していきます。
1、1番は普遍的なラブソング
1番だけを聴くと、普遍的なラブソングに聴けます。
僕は、君が好きで、それを伝えています。
ポイントは「僕が」「君に」「語りかけている」体裁を、取っていることです。
これは会話のように感じられます。
そして、数々の伏線が散りばめられています。
・【よく晴れた空に雪が降るような】と言う季節感のあるフレーズ
・【変な例えだね 僕もそう思うよ】は会話?
・【どうでもいいか】のフレーズ
・【僕に足りないものを全部君が持ち合わせていたんだ】
上記は、全て伏線として機能しているので覚えておいてください。
2、2番は失恋ソング
2番の最後まで聴くと、「ああ、これはもしかして、彼女とは別れているのか?」と疑問が浮かぶようになっています。
そう感じるのは「僕はなりたかった」の歌詞です。
「僕はなりたいんだ」とは言っていません。過去形で言っています。
もし、今も関係が続いているのなら
「僕はなりたい」と言うはずです。
なにか、僕と君の関係性が変わってしまったからこそ「なりたかった」と言っています。
3、彼女はいない
3番を聴くと、「彼女はこの世にいないのか?」と疑問に思うようになっています。
ここで、この歌詞が【彼女との会話ではなく、一人語り】であることが示されます。だから、「言うだろうな」という言葉になっています。
4、もう一度聴くと
僕は【君のようになりたかった】と、ずっと言っていました。彼女がいなくなってしまった今でも、その気持ちは変わっていません。
だけど、1番の歌詞を振り返ってみてください。
僕の表現に「どうでもいいか」のフレーズがあります。このフレーズは、この歌詞の中で彼女が唯一具体的な言葉を言っている【ねえ そんなのどうだっていいの ドーナツ買ってきてよ】とリンクしています。さらにタイトルともリンクしている最重要フレーズです。
君が言っていた(言いそうな)言葉を、僕は知らず知らずのうちに使っています。それは、「僕の中に君が息づいている」ということです。
ずっと「君になりたかった」という僕は、
「君になれなかった」わけではなく、
「君に近づけたところもある」ということです。
僕の後悔なんて「どうだっていいの」と言ってくれる君の優しさは、僕の中で息づいています。だから「素敵を2回言ってしまい 慌てて誤魔化した」ことについて「どうでもいいか」と自分で言うことができています。
でも、僕はそのことに気づいていません。だから、君になりたかったと言っています。
さらに、冒頭の彼女を「よく晴れた空に雪が降るような」と表現して「変な例えだね 僕も思うよ」(ここは一人語りなので「変な例えだね」というのは彼女がそう言った訳ではなく、僕の思い出した彼女なら「そう言うだろうな」というフレーズです)と言っています。
そもそも「鳥は春を歌って」を気づけない僕には、【よく晴れた空に雪が降るような】なんて、表現はできないはずです。
つまり、この表現【よく晴れた空に雪が降るような】というのは「君らしい表現方法」なのです。君は「鳥は春を歌って」いることに気づいているように、花鳥風月と季節に意識の行く人でした。そして、僕はそんな人間になりたかった。
僕は「君みたいな人間になりたかった」と今でも思っています。だから、もっと君を知って、君と生きて、君から学びたかったと思っているはずです。
だけど、僕は、知らず知らずのうちに君らしさを受け継いでいます。
(僕自身は気づいていないけど、そして気づいていない僕だから僕であるわけです)
それが【よく晴れた空に雪が降るような】という表現だし、【どうでもいいか】のフレーズです。
きっと【君になりたかった】という深刻になってる僕をみて、
君は【もうなってるじゃん ドーナツ買ってきてよ】と笑うのかもしれません。
【僕に足りないものを全部君が持ち合わせていたんだ】という僕に、
君は【もう持ってるじゃん ドーナツ買ってきてよ】と笑うのかもしれません。
なんて、美しい歌詞なんでしょう。
最後に。
「よく晴れた空に雪が降る」ことを
「風花」
といいます。
花鳥風月の半分くらいは、気づける僕になっているのかもしれません。
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