moment92 side:unkown
喜びも束の間。
日に日に彼女は顔色が悪くなっていくように思えた。もともと神経質というか、感度が高すぎる人間だから、子どもがおなかにいることを意識したせいで、ちゃんとしなきゃって思いすぎるのと、身体の変化になかなかついていけないようで、とても元気とは言えなかった。
そういう姿をオレに見せるのも嫌みたいだった。ただでさえ動けないのに、グダグダしてるのを見せるのも悪い、みたいなことを言っていた。
彼女はこういう人間だ。
だからって、特段励ましたり、そんなことないよ、なんて言うつもりもなかった。そう言っても彼女は自分を曲げないからだ。それが彼女の良いところでもあり、悪いところでもある。
彼女はあまり乗り気ではなかったが、とりあえず安定するまでは彼女は実家に帰ることになった。彼女のお母さんがそうしなさいと強く言ったことと、彼女自身も家に一人でいても心配だということ、そしてオレに迷惑をかけないため、だった。
荷物もだいたいまとめ終わって、タクシーを待っていた。
「そんな悲しそうな顔するなよ。あっちにいたほうがいろいろ安心でしょ?」
「そうだけど…」
「そうだけど、何?」
「…二宮さんに、会えないじゃん」
はは笑
そこかよ!
「はは笑」
「なんで笑うの!全然笑い事じゃない」
「いや、そこなんだって思って笑」
彼女は膨れっ面でオレをにらんでいた。
そういえば前もよく睨まれてたな〜
「…」
「時間あるときはちゃんと会いにいくから。」
彼女は不思議そうな顔になった。
「そうなの?」
「そうだよ。」
「おいで。」
静かに抱きしめた。
「オレだって寂しいよ。我慢してんの。でも、身体が一番だから。ね?」
「うん…」
腕をほどいた。
「送っていけなくてごめん。気をつけていくんだよ。走ったらダメだよ。」
「うん。じゃあね」
ニコリともせずに、彼女は荷物を持ってエレベーターに向かった。
久々にあんな顔を見た。
できることならずっとそばにいて世話をしてやりたかった。彼女がオレと一緒にいたいというならそうしたい。
ただ、大事なものが1つだけなわけじゃない。オレにとってもう一つの大事なものは彼女にとっても大事なものだ。これでオレが仕事をやめるなんて言い出したら彼女は怒り出すだろう。
彼女はわかってる。
今がお互いに一番大事な時だ。
そしてこうすることが、最善策だということも。
オレたちは活動休止が決まっていた。
そろそろメンバーにも報告しないと、とは思っていた。
楽屋について荷物を降ろすと、真剣な顔で立つ松本さんがいた。
「にの」
「ん?」
「オレ、諦めないから。」
「え?」
「はるちゃんのこと、諦めないから。」
え?
「ん?何を?…、」
急に翔さんが割って入ってきた。
「松本さん!それはないでしょ!はるちゃんはにのと付き合ってんだよ!」
え?そういうこと??
「え?」
松本さんを見ると松本さんもきょとんとしていた。
翔さんも変な空気を感じ取って自分できょとんとしていた。
「え?」
「あ、そういう意味じゃないよ!!」
松本さんが気づいて訂正?する。
「あ、そうなの?」
「でも、顔真っ赤だよ?笑」
「っ…そんなことはない!はず!笑」
彼女に松本さん好きです!って言われていたところを思い出した。あのときも、だいぶ赤くなってたなあ。
「いや、まっさん、どういうこと?」
「やっぱり、はるちゃんに戻ってきてほしいの。まあオレたちの仕事もこれからどうなるかはわからないのは確かなんだけどさ。」
「うん」
「でも、休止って銘打ってるわけだから、いつかは、ね? その時が来るかもしれないわけだ。そうじゃないとしたって、これから休止までの時間でも、一緒に仕事したいなってオレは思ってるのね。一回断られてるんだけど…やっぱり彼女の力が必要だなって。」
「…」
「はるちゃん戻ってきたら、嬉しいなあ〜」
相葉さんがにこにこしながら言う。
「ん?にの?」
「ごめん。まっさん、それはできない。」
「どうして?」
「あの…」
翔さんと大野さんが悲しげに言う言葉に阻まれた。
「やっぱり、いろいろあったからな…」
「まあね、それはそうだよね…」
「いや、」
「オレら嫌われちゃったとか?!」
「え?!なんかしたっけ?!いや、個人的にはいろいろあった…かもしれない!」
「それは翔ちゃんがやらかした問題じゃ〜ん!」
訂正しようとしても、翔さんと相葉さんがはやとちりする。
「いやいや、違うんですよ」
「え?」
「あの、子どもがね、できたんですよ」
「は?」
「赤ちゃんがね、いるんだって」
「え?」
「え?!」
「誰の?」
「あいつの!!!」
「えーーー!うわーーーー!!!」
「翔さん!叫ばないで!笑」
「あ、だから、ってこと?」
「そうそう、身体が心配だからさ。とりあえず安定期入るまではね…今は仕事できないと思う。で、オレも家にいないし、緊急のとき何もできないから、実家に戻ってるの、あいつ。てか、今日から。」
「そうだったんだ…」
「わかったのもついこの前なんだ。ちょっとみなさんにはご迷惑をおかけしますが…」
「いやいや。おめでとう、だね。」
「えー!どうする!?どうしよう?!」
「いや、翔ちゃんなにもできないから笑」
「え?にのって結婚してんの?」
「いや、してないんだよね。」
「それは、これからするってことで、よろしいの?」
「うん。そのつもり。あいさつも行ったし。あとは届け出すだけ。」
「マジかー…」
「あ、松本さん、そういうことなんですよ。」
「そうね。それは今は無理だね笑」
「子どもできて、これからオレとあいつもどうなるかわかんないけど、もし、オレたちも活動再開ってなって、あいつもできそうなら、松本さんから誘ってほしい。オレから言うとあいつ変に無理したりするかもしれないから。」
「わかった。オレ、絶対諦めないから。はるちゃんが快適に仕事できるように万全の準備を整える。」
「松本さん、諦めないね〜笑」
「そうだよ。何年かかってもね。ずっと口説き続けるから笑」
「そのときは、ね。」
大野さんが、遠くを見ながら小さい声で言った。
そう。
そのときは、だ。
これからどうなるかなんて
誰にもわからない。
未知と対峙するのは大変だ。
不安がつきまとう。
ただ、同じだけの希望があるはずだ。
オレたちの未来が、
希望で溢れていますように。
とりあえず今は、
そう願うしかない。
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