moment95 side:unlimited
今日は久しぶりに彼女に会う。
どれくらいぶりかわからないくらい。
体調が良ければ、というのが前提だったから、条件に当てはまる日が今までなかったということだ。
大丈夫なのかなあ。
彼女が楽屋に現れる日はいつもみんな早かったのに、今日の一番乗りはオレだった。
それがちょっと恥ずかしかったので、早く誰か来て欲しかった。なんか、楽しみすぎて早く来ちゃったみたいになるじゃん。
まあ、そうっちゃそうなんだけど。
「こんにちは〜」
ガチャっと扉が開く音がして入ってきたのはおなかの大きい彼女だった。
「おぉ〜はるちゃん!」
「あれ、松本さん早いですね!」
そのあとにのが荷物を持って入ってきた。
「おはよ〜、あれ、誰もいないじゃん」
「そうなんだよね〜みんな今日来るって知らないの?」
「言ったと思ったけどなあ」
「ちょっと、座ってもいいですか?」
「あ、うん!どうぞどうぞ」
「すいませんどかっと座ってしまって…」
「いやいや笑 おなかおっきいんだから、休んで休んで」
「二宮さん、タオル出してもらってもいい?」
「あ、うん。…はい。」
「ありがと」
思い出したように彼女はにのに小さい声で言っていた。
「なんか、荷物持ちみたいになっちゃって…ごめんなさい」
「いや、別に」
なんの表情も浮かべないで返事をするにのが、なんか、らしいというか。お似合いだなと思う。
「みなさんに会うの久しぶりだなあ。あれですね、そろそろ、ですもんね。休止。来年?ですもんね。」
「ちょうど赤ちゃんが生まれるころかな?」
「じゃあ、ぜひ、会いにきてくださいね!抱っこしてもらおう!メンバー全員に!」
「験担ぎ?笑」
「ジャニーズに入れるの?笑」
「いえいえ、それは本人次第ですけど。みなさんの誠実さと真面目さを見習ってほしいから。少しでも…なんだろ。何かが、みなさんの何かしらが子どもに伝わったら嬉しいなって。」
ふふ、と笑いながら彼女はそう言っていた。
すると扉が元気よくあいて、相葉さんが入ってきた。
「おはよ〜!あれ?もうはるちゃん来てた!」
「なんだよ遅いじゃん今日に限って〜」
翔くんとリーダーも同時に入ってきた。
「いや〜3人でちょっとこれ買ってて…」
「はい!これ。プレゼント」
「うわ…かわいい…!」
「女の子か男の子かわからなかったから、きいろにしたんだ」
「にの色ね!にの色!」
新生児用のミトンだった。
オレが見てもすごくかわいかった。
3人は彼女を囲んで口々に話しかけていた。
彼女は大野さんと相葉さんと翔さんに取られてしまって、オレとにのだけが取り残されていた。
「はるちゃん、元気そうだね。なかなか来れなかったじゃん?心配だったよ。」
「そうそう。やっと少し安定してきたんだ。いつもよりテンション上げてるとは思う。でも、外の空気が吸えて、よかったんじゃないかな。新幹線楽しかったとか言ってたし笑」
「何回も乗ってるのにね笑」
「そうそう笑
…久々にちゃんと笑ってる顔が見れて、よかった。」
「会えてないんだもんね。にのもね。」
「…会ってもさあ。顔色が悪くて。でも…自分で言うのもあれだけどさ、あいつ、オレが会いに行くと…喜ぶんだよ。すごい具合悪そうなのに、ちょっと笑うんだ。…なんか、すごく切ないっていうか。男のオレなんかにはもう全然わからないくらい、相当辛いんだろうなって。病気じゃないわけじゃん。周りからしたら、しあわせなことじゃない!ってさ。でも、具合が悪いのは、それはそれなんだよね。ツラいって、言いづらいんだろうなって。」
「そっか…。」
「でも今日は、…オレに見せる顔より明るくてさ。ちょっと安心するわ。みんなのおかげ。」
「それはよかった。」
にのは気が気でないだろうな。心配な上に、自分は会えないし、いざというときそばにいられない。ふたりとも、すごく頑張ってると思った。なんか、こんな表現しかできなくて、バカみたいだけど。
「ちょっと!妊婦には優しく!」
にのが割って入っていった。
「何もしてないよ〜ちょっと触ってただけじゃん」
オレも本当は混ざりたかったけど、なんだか行けなかった。
「そろそろ私行かなきゃですよね。みなさん、お仕事の準備しないと…」
「えー?!もうそんな時間?!」
「あれ?なんかオレら呼ばれてる?」
スタッフに呼ばれている。
にのは3人を輪から追い出して彼女にいろいろ確認していた。
「ほら、早く行った行った!
さてと、荷物これでいい?忘れ物はない?」
「うん…てか、二宮さんも呼ばれてるよ?」
「え?オレも?今じゃなきゃダメなの?」
「二宮さん私大丈夫だよ。一人で行け、」
「ダメ。荷物どうすんの?転んだらどうすんの」
すごく険しい顔だった。
本気度が伝わってくる。
「オレでよければ、一緒に下に行くよ」
「ほんと?!お願い!こいつすぐ無理するから。車乗せてあげればあとは大丈夫だから。家入るときも、ちゃんと運転手さんに手伝ってもらえよ!重いんだから荷物。鍵は?持った?」
「うん」
「じゃあまたあとでね。連絡するから。
まっさん!お願いね!」
にのはそう言い残して呼ばれたほうに行った。
「にのってあんなに一気に喋ることあるんだね…」
「私はうんってしか言ってないですね。笑」
「ふふ笑 じゃあ、行こうか。」
二人で部屋を出て、エレベーターへ向かう。割と廊下が長い。
「すいません、荷物持たせてしまって…」
「全然。」
「なんか、やっぱり松本さんといると、…なんだろ。なんか強くなれるっていうか…安心します。」
「何急に?笑」
「毎日…実家にいるからほんとは一人ではないんですけど、でもどこかずっとひとりな感じがして…不安でいっぱいなんです。こんなんじゃいけないんだけど…ひとりで、この子を守りながら、自分もちゃんとするなんて、できる気がしなくて…弱音を吐けば母に叱られるし…」
「…」
「あ、すいません笑 なんか、情緒不安定ですよね。 大丈夫です。頑張ります。強くいないと…」
オレは立ち止まった。
それを見て彼女も止まる。
「はるちゃん、」
「はい」
「別に泣いていいんだよ。弱音も吐いていい。誰にも言わないから。オレだけが聞いてる。オレだけが…」
彼女は大粒の涙をぽろぽろ流した。
堰を切ったように、涙がこぼれた。
「辛いんです。家が。ひとりが辛いんです。息がつまるんです。安全で、全部やってもらって、ありがたいのはよくわかるんですけど…ずっと具合は悪いし、でも病気じゃないから、ちゃんとしなきゃとか…そんなんじゃ子どもは育てられないとか言われるし…」
「そっか…辛かったね…」
「でも今日みなさんに会って、すごく優しくて、またそれで泣きそうになって…今泣いてますけど…」
「みんなさ、はるちゃんのそばにいたいんだ。でも一番はね、にのが、悔しい思いをしてると思うよ。いつもはるちゃんのこと気にかけてる。心配してる。今はるちゃんが言ったこと、全部にのが気にしてたことだった。」
「そうなんですか…?」
「そうだよ。なんにも言わないからわかんないよね。でもいっつも心配してるよ。」
「…」
「それにオレだって。オレだって、はるちゃんのことが大好きな中のひとりだよ。まあ、今のところ何もできてないけど…でも、にのにだって負けないくらい、はるちゃんのこと大事に思ってるから!」
「…」
「え?なんかあれ?告白みたいになってる?笑」
「あはは笑 そうですね!」
「…オレはさ、ずっとはるちゃんに憧れてたんだ。たぶん。オレの想像の域をはるかに超えてどんどん前に進むでしょう。痛みも悲しみも持ったまま。すごく、キラキラしてた。もちろん、今もね。」
「そんな…」
「弱音を吐いたからって、誰も責めない。誰かが責めたとしたって、オレはそんなことはしない。だから、もっと頼って。なんでも話聞くよ?」
「ありがとうございます…!」
「さあ、行こう。」
勢いでいろいろ言ってしまったけど、彼女の中にあるにのには絶対に勝てない。なぜだか逆にそれを改めて感じてしまった。彼女は彼を心の底から信頼している。ただ、迷惑をかけたくないってだけで、我慢したりするだけだ。でも、それすらもうしないんだろうな。二人の絆はすごく大きなものだった。
結局いつも外から彼女のことを見てるだけだった。
「あのさ、あのー…」
「何ですか?」
「ちょっと、触ってみてもいい?おなか」
「あ、はい!ぜひ!」
輪に入らなかった自分を変えようと思った。
「すごい…うわ、今蹴ったんじゃない?」
「すいません、手荒なあいさつで笑」
「楽しみだね。みんな楽しみにしてるから。」
「はい。では、また!」
彼女と別れて仕事に戻る。
部屋に戻る途中、歩いている間に、どんどんパワーがみなぎる感じがした。頑張りたい。そう思えた。
部屋に戻るとにのがいた。
「まっさん、ありがとね」
「うん。こちらこそ。」
「え?何が?」
「オレ、頑張るわ。」
「どうした?笑」
「なんか、…パワーをもらった感じがした。」
急に、でも静かに、リーダーが同調した。
「わかる。はるちゃんといると、なんかもらうよね。エネルギーっていうか。オレは逆だけど。リラックスするけど。」
「なんでだろうね。不思議だな」
「それを言ったらあいつは最初から不思議よ?」
「にのは、…にのは何をもらった?」
彼は沈黙ののち、ちょっとだけ笑って言った。
「教えない」
にのが、すごくいい顔をしていた。
すごく羨ましかった。
きっと、言葉にできない、とってもステキなものなんだろうな。
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