みんな Flat.io で楽譜を公開する世の中になって欲しい

Flat.ioというWebサービスがあります。

これは楽譜を書いてシェアできる SNS です。Web上で楽譜を制作し、楽譜の共同編集も可能であり、書いた楽譜はそのまま Web 上に公開できます。なお Flat 自体は無料で使うことができます(無料プランでは楽譜の保存数等に一部制限あり)。

Flat には Web ブラウザ上で動く楽譜エディタがあり、これがとてもよく出来ています。音符休符はもちろん、各種装飾記号など楽譜に必要な表現は一通り揃っています。小節毎のコピーペーストなど、エディタとしての機能もちゃんと備わっています。Web上で試聴も当然できます。

特に UI デザインは、他の同様のソフトやサービスと比べても Flat が際立ってきれいに作られていると感じます。こういった教育用途の側面を持ったソフトウェアは、良くも悪くも「ダサい」UI を持っている事が多いですが、Flat はモダンなデザインを取り入れてオシャレに作られています。

もちろん Flat の他にも、楽譜を制作できるソフトは世の中にたくさんあります。たとえば私はかつて「finale」というソフトを使っていました。

さすがに Flat は、finale のような有料ソフトにあるような高度な機能 (たとえば楽譜出版用の柔軟な表現力や、音源として使うための専用シンセサイザーなど) にはかないません。しかし楽譜を書いて Web で公開する、という用途であれば、Flat には必要十分な機能がまとまっており、使いやすく仕上がっています。

作例として拙作をひとつ置いておきます。

そんな Flat ですが、弱点もあります。

SNS と謳ってはいるもののサービス内のコミュニケーション機能がちょっと弱く、Flat のサービス内でお気に入りの楽譜やユーザーを見つけたりするのが難しい状態です。そのため、正直に言ってあまり盛り上がっているように見えないのが悲しい所です。出版社等が参入して楽譜を大量に提供しているような雰囲気も無く、かといって有名なパブリックドメインの作品を豊富に取り揃えているような感じも見受けられません。

ハッシュタグやトレンド機能だとか、作品のレコメンデーション、有料楽譜販売のような機能はありません。エディタ以外の画面はライブラリと検索ぐらいしか無く、すこし寂しい感じになっています。シェアやコラボレートの機能は充実しているのですが、なかなか使っている人を見かけません。(教育機関等で使われている実績はあるようなので、そういった用途が多いのかもしれませんが)

サービスのロードマップがどうなっているのか詳しくはないですが、エディタはよく出来ているので、もう少し他のところも頑張って欲しいと思う点が多いサービスでもあります。

Flat については4年前にいちど紹介記事を書いたことがあります。あれから数え切れないほどの改善が行われ、記事内で指摘していたライセンス表記はもちろん、完全ではないですが日本語にも対応し、スマホやタブレット用アプリも公開されました。

公式ブログを読むと、毎月活発に機能追加されている事がわかります。

個人的にはぜひ盛り上がって欲しいサービスのひとつです。Flat をみんなが使って、たくさん楽譜が公開されて、楽譜や音楽が今よりも身近にある世の中になると良いな、と思っています。

昨今、日本国内外を問わず、著作権をめぐる状況は決して明るいとは言えません。Flat で公開されている作品のすべてがライセンスフリーというわけでは無いですが、こういったオープンなプラットフォーム上でやりとりされ気軽に利用できる音楽がすこしでも増える世の中になると嬉しいです。

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