モスキートハンターの夜明け

家の隣が山とあり、夏は蚊に悩まされる。1日5匹くらいは、ほぼ間違いなく迷い込んでくる。

そんな環境で育ったからだろうか、蚊を殺すことにものすごく長けている。

もはや家族に称賛される水準にまで達し、自室にいても「ちょっと来て!蚊がいるから!」と援軍扱いされる。

正直、悪い気はしない。

そこでふと思った。これ、私の天職ではないだろうか、と。モスキートハンターとかなれるんじゃないか、と。

昨年、兄から誕生日プレゼントに「そろそろ身の振り方考えろよ」という耳の痛い言葉をもらったのだけど、ついに明るい未来が開けそうだ。千里の道も妄想から。

―先日帰国されたそうですが、今回はどこを訪れたのですか?

はい、シンガポールへ行っていました。蚊によって媒介されるデング熱が流行っていたので、私が少しでも力になれれば、と。

―そうですか。相変わらずグローバルに活躍なさっているのですね

蚊によって困っている人がいれば、私はどこへでも駆けつけます。

―さすがは、モスキートハンターの第一人者ですね。頼もしい限りです。 幼い頃から、蚊を殺すことに長けていたんでしょうか?

いえ、小さい頃はよく刺されていましたよ。奥義のヒントは、ある遊びから得ました。ごっこ遊びの一環で、当時、ストローを口にくわえて腕をパタパタさせながら「蚊ごっこ」に興じていたのです。そのため、早くから蚊の気持ちを理解できるようになったのだと思います。

―蚊ごっこ、ですか。それはおひとりで?

兄も仲間入りを希望しましたが、メスじゃないから、と断りました。オスの蚊は血を吸いませんからね。

―なるほど。蚊を殺すポイントはどういったところですか?

やはり、自分も蚊になることだと思います。蚊の独特な浮遊を身体で表現 しながら、あとを追うんです。すると次に飛ぶ方向が読めるようになります。

―それは、猛特訓が必要ですね。おまめちゃんさんがよくやるあの手拍子にはどのような意味があるのでしょうか?

あれは、パフォーマンスです。カリスマ美容師さんのハサミがやたらめったらカチカチなるのも、本来は必要のないものだそうです。それと一緒で、モスキートハンターらしく、といいますか、テレビ映えを狙ったものです。

―そうだったのですね。でもそのおかげで子供のなりたい職業ランキング にも食い込んできましたし、真似をする子供があとをたたないほどですね

吸血し、病気を運んでくるあの恐ろしい悪魔を退治する。地味な職業ですが、私たちが快適に暮らす上で必要な職業だと思っています。

などと書いている間に刺されているのが私。修行が足りない。

「ただ感じろ」ーモスキートハンターが残したメッセージ

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おまめちゃんの無駄口

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