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ダイパリメイクが来る前に「音楽の予習」しませんか?

 2021年2月27日。かの「ダイパリメイク」が『ポケットモンスター ブリリアントダイヤモンド・シャイニングパール』と題して発表されました。たった2分のPVで公開された内容を元にネットで賛否を議論されたのも懐かしいですが、それ以降、公式からの碌な情報公開がないまま1か月以上が過ぎたこともあり、本当に続報待ちの状態です。

 私、S(h)inとしてはグラフィックとかの論争に1mmも興味がありませんが、ただ1点気になっている部分があります。それは『ダイヤモンド・パール』の雰囲気を形作るうえで欠かせない「音楽」です。

1.DS音源による楽曲

 まず、大事な前提ですが『ダイヤモンド・パール』はニンテンドーDSで発売された作品で、音楽には内蔵音源を使っています。ここで「内蔵音源ってなーに?」という方がいるかもしれないので簡単に説明しますと、「音楽のプログラムで曲を作っている」ものです。

 まず、現在のゲーム音楽の基本は「ストリーミング再生」になります。音楽のデータ(mp3とかそんなイメージ)をゲームソフト内に持っていて、それをゲーム機から再生する形ですね。しかし、この「音楽のデータ」は昔はとても重いものでした。DSの時代まではゲームソフト側に入れられるデータ容量も大きくないし、容量を削るために音楽データを圧縮しすぎてしまうと再生された際の音質の劣化を招いてしまう恐れがあります。

 そのため、DS含む昔のゲーム機では内蔵音源で奏でる楽曲が使われています。ここでいう内蔵音源はいわば楽器だと思ってください。ゲーム側は「音楽のプログラム」を持って、内蔵音源でこれを再生し音楽を奏でます。ここの音楽のプログラムはどの内蔵音源でどんな音を出すか、といった指示をするデータで、楽譜のようなものです。この方法ならストリーミング再生よりもデータの容量を食いません。

Noteの資料用スライド

 ただ、こちらの手法には「内蔵音源によって作れる音楽に制限が出る」という問題があります。ファミコンの曲がみなピコピコしているのは音源がそういう音しか出せないものだからです。ファミコンほどではありませんが、DSの曲もそういった音源の制約による「味」が感じられるかと思います。

 今回の主題である『ダイヤモンド・パール』では豪華な作曲陣がこの制約に挑みながら数々の名曲を輩出しています。それが現行ハードの「Nintendo Switch」にてもう一度聴けるということがとても楽しみな訳です。


2.「ダイパ」の音楽の特徴:昼夜のアレンジ差

 『ダイヤモンド・パール』の特色として語るべきは、音源だけではありません。特に凝っている部分として挙げられるのはゲームの時間に応じたBGMの変化です。各町や道路に通称「昼BGM」と「夜BGM」というバージョンが存在し、よりゲーム世界の時の流れを感じさせてくれます。

 この「昼夜によって音楽を変える」試み自体は『金・銀』の頃からあり、実は「戦闘!野生ポケモン(ジョウト)」は昼夜の2バージョンあったらしいです。開発スタッフインタビューで作曲者の増田順一氏も以下のように語っています[1]。

夜と昼では野生のポケモンとの戦闘中の音楽も違います。曲のテンポが違うとか、音色が丸くなるとか、ほんのちょっとした違いなんですけど。

 ただ、このころの差異は意識して聴き比べないとわからない感じになってますが…

 それが時を経て、もっと大々的に、複数の場面でやってみようと考えて作られたのが『ダイヤモンド・パール』であり、今でも本作が人気である要員の一つです。昼夜のBGMは印象が分かりやすく変わるようになっていながらも同じ曲であると認識できる不思議な作りになっていて面白いのですが、どちらが気に入るかはかなり個人差が出る印象です。


3.ゲーム音楽とアレンジ

 さて、ここまで語りましたが、本題である『ブリリアントダイヤモンド・シャイニングパール』が出るハードの「Nintendo Switch」は当然ながらストリーミング再生が可能な世代です。PVでは『ダイヤモンド・パール』の楽曲である「オープニングデモ」が流れていましたが、様々な生楽器の音が聴こえますね。つまり、リメイクに当たって音楽も全面的に「アレンジ」がかかることが分かります。

 一言にアレンジと言っても様々な方法があります。こうったゲームのリメイクでは「楽器の置き換え」がメジャーですね。当時の音源では使えなかった楽器を使い同じメロディを奏でるのは、過去作品へのリスペクトを感じられるためかプレイヤーとしても好印象を受けやすいように思います。

 また、アレンジ手段として「フレーズの追加」というのもありますが、こちらはうまく使わないと既存のユーザーから不満が出る可能性があります。追加フレーズが目立ちすぎると「アレンジ前の原曲の方が完璧だったから、こんなフレーズは蛇足だ」といった意見が出るかもしれないということです。

 それで、肝心なのは『ブリリアントダイヤモンド・シャイニングパール』でどんな方向性のアレンジが来るか、という部分ですね。ここで問題となるのが「発売されたハード」です。

 例えば、内蔵音源の話で例に挙げていたファミコンは、基本的に曲の音数が少なく、長さも短めなために「アレンジの素材」として扱いやすい部類です。一方でDSは技術の進歩によって作曲に自由度が生まれており、当時の時点で曲の完成度が高いものとなっています。その反面、アレンジする元としては扱いが難しくなっていると考えられるのです。

 ただ、PVで「あの輝きを、再びー」といった宣言をしているので無茶なアレンジをする気はないとは信じています。なので「楽器の置き換え」を中心としたアレンジで来るんだろうと思っているんですが、こればっかりは発売されないと何とも言えませんね。


4.今のうちに予習しておきたい曲たち

 結局、「アレンジに期待して発売待ち」しかユーザーができることはない、みたいな話になっていますが、それは違います。今、音楽を楽しみに待っている人たちにできることはリメイク元である『ダイヤモンド・パール』における音楽を聴きなおすこと。つまり、新作に向けた「音楽の予習」です。

 『ダイヤモンド・パール』をリアルタイムでプレイしていた層の方でも、だいぶ年月が過ぎてますので印象強い一部の曲しか記憶に残ってない、ということもあると思います。なので、実際のプレイ時に「原曲とアレンジの比較」を楽しむために、発売前の今のうちに曲を聴きなおしてもらいたいのです。

 それではここで「是非予習しておきたい!」といった『ダイヤモンド・パール』の楽曲を独断と偏見でピックアップしてみました。

①戦闘編

「戦闘!トレーナー」
 基本となる戦闘曲ですね。「戦闘!野生ポケモン」とは異なって、全体的に緊迫感がある曲になっています。ただ、メロディの移り変わりが激しく全体の統一感自体はそんなにないように思います。刻刻と変化する戦場において決まった音が流れることはないといったことを表しているのかな、とか。

「戦闘!ユクシー・エムリット・アグノム」
 人知の及ばない存在との対峙って感じが個人的に好きな曲です。特に各地を徘徊するエムリットとの戦いで聴く事が多いと思われます。イントロの少しずつ音が大きくなる部分が遭遇した際の緊張感を与えますね。ただ、メロディの種類が少ないのもあって、そんなに繰り返して聴く曲じゃないのに頭に残りやすい印象があります。これ狙ってのことならすごいなー

「戦闘!チャンピオン」
 掛け値なしに素晴らしいラスボス曲なのですが、これは本当に戦闘前に流れる「チャンピオンシロナ」とゲーム内の演出が合わさって完成な気がします。疾走感あふれる曲調にハイテンポで鳴り続けるパーカッション、合間に入るギターなど、意図的に「今までとは違う曲」であることを強調していますね。シロナ自身の手持ちも見たことのないものが多いですし、別格の相手であることが伝わってきます。

②タウン・シティ編

「コトブキシティ」
 本作で一番初めに訪れる街として印象深い場所ですね。とてもメロディがおしゃれで都会的な雰囲気をうまく音楽に落とし込まれています。この曲は『X・Y』で「一曲いかが?「コトブキシティ」」としてすでにアレンジが行われており、完成度もかなり高いです。ただ「イベントで聴けるボーナストラック」という感じで作られたアレンジなので少し主張が強く、BGMとしてゲームと調和することを重視したアレンジは新作に期待したいです。

「ヨスガシティ」
 コトブキシティと同じ都会ながらも、どこか可愛らしい曲調でこれまた別のおしゃれさを感じさせる一曲。後ろのピアノがお買い物とかで踊る心を表現しているようで素敵ですね。また、この曲は昼のアップテンポな感じから、夜の落ち着いた一面の差がうまく対比して作られているのもポイントです。

「ミオシティ」
 海に面した街の一つですがゆったりとした曲調のため、波間を眺めながら時間が過ぎ去ってゆく、という雰囲気で街によく合っています。イントロにもある流れるようなピアノの音色が綺麗で、じっくり聴くのにとても適していてとても優れたBGMであるように思います。

③道路編

「206ばんどうろ」
 少しあいまいな言い方になってしまいますが、とてもポケモンらしさが感じられる道路曲と言えばコレだと思います。「ここから冒険が始まる」といったワクワク感を感じさせる強烈なイントロが目立ちます。昼夜の差が薄くいつ聴いても冒険への勢いを感じられるよう作られているのもいいですね。

「209ばんどうろ」
 孵化厳選とかいう闇の深いものをやってた人は特に聴き馴染んでるはずの一曲です。ゆっくり目の曲調で進んでいくと思ったら途中でテンポが上がる、といった全体の流れは、歩きながらの冒険が楽しくなって走り出したかのような物語性を感じられて好きです。昼夜聴き比べもおすすめですよ。

「216ばんどうろ」
 雪道を進む曲なのでしんしんとした雰囲気で曲が始まります。ですが、一転して鐘の音が鳴りながらのリズミカルなメロディに変化します。ループのギミックも面白く、静まりかえった始めのパートは1回しか流れないようになっています。なので、イントロで「場面転換」を表現して、残りが雪上の冒険をイメージしているということなのでしょう。

「228ばんどうろ」
 私が『ダイヤモンド・パール』で最も好きな道路BGMです。如何せんクリア後のあまり立ち寄らない道路で流れるのでじっくり聞いた方が少ないであろうことが不憫ですが、とにかくこの曲は格好いい!
 昼は低音管楽器が、夜がピアノが主旋律となっているジャズ調の曲なのですが、どちらが前に出てきても裏に逆の楽器の音が聞こえるので「まるで違う2曲なのに同じ曲なのが分かる」というすごい技巧で作られています。

④ダンジョン曲

「ハクタイのもり」
 ピアノの旋律の残響が聴こえるようなところが目立ち、穏やかながら物悲しく、神秘的な雰囲気を醸し出します。タイトル通りハクタイのもりで流れますが、ほかにもロストタワーなどでも聴く事ができます。ただ、どこで聴いても場所ごとに用意した曲のように合うのがすごいですね。

「テンガンざん」
 私の全ポケモン音楽の中で最も好きな曲です。この曲は舞台のテンガンざんにおける「神聖な雪山」の面と「厳しい自然」の面とを両方表現した素晴らしい曲です。前半の静かなピアノから少しずつ管楽器のペースへと切り替わりつつ、楽器を増やしながら盛り上げて盛り上げて、落としてイントロに戻る。ゲーム音楽のループをも生かしきっている素晴らしい曲で、初めて聴いたときからずっと好きです。

⑤その他

「視線!ギャンブラー」
 ちょっと最後に変わり種をご紹介。この曲は通称「視線曲」で一般のトレーナーとの戦闘前会話シーンに流れるものです。タイトルはギャンブラーとなっていますが、ジェントルマンなどのお金持ちトレーナーとの戦いでも聴けるので、金策を当時から行っていた人なら覚えがあるかもしれません。短いながらもすっきりとおしゃれなメロディがまとまっているので、覚えがない人は是非聴いてみてもらいたいです。


5.まとめ

 予習対象曲のピックアップ、いかがだったでしょうか。正直『ダイヤモンド・パール』にはいい曲が多すぎて、絞るのに相当時間がかかりました。事前に申し上げた通りこのピックアップは完全に私の趣味で作りました。自分の好きな曲がなかった!という方はごめんなさい。

 実は個人的なリメイクの注目ポイントとしてもう一つだけ「どれくらいプラチナの要素が入ってくるか」というのがあります。この加減によって名曲「戦闘!ギラティナ」が聴けるか、聴けないかが決まるので気にはなっているんですが、これもまた情報量が少ない現段階では何とも言えませんね…

 いやぁ、やっぱ待ち遠しいですね。発売する2021の冬が。まだ時間もあるので期待膨らませながら今は音楽を聴きましょう。聴け!

 それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました。また、どこかの記事でお会いしましょう!


引用文献

[1]開発スタッフインタビュー/パワーアップした『金・銀』
https://www.nintendo.co.jp/nom/0007/gfreak/page04.html

画像出典

(見出し画像)
ポケットモンスター ダイヤモンド・パール 【 舞台 】|ポケットモンスターオフィシャルサイト
https://www.pokemon.co.jp/game/ds/dp/stage.html

(音源に関する説明画像)
「いらすとや」さんの素材を使用して自作

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