3/19 「その怪文書を読みましたか」展のごく小規模な感想

問題があれば消します

凄く久々に渋谷に行った気がします。日曜というのもあって、人が沢山いて。新宿とかと違って渋谷の人たちは目的をもって歩いている感じがすごい。渋谷という町がそうさせるのか、そういった人々が集まる町が渋谷なのか、僕が渋谷に慣れていないだけなのか。「目的地へ行け、でなければ帰れ」という、あてなく歩くことをどうにも許されないような街の幻聴を聴きながら、10時の整理券配布を済ませてふらふらしながらマイラボ渋谷へと向かいました。

 ・「ここは、【体験できる都市伝説】かもしれない。」
すごくいいキャッチコピーですよね。恐怖とか狂気とかそういった直接的なワードを下品に使わず、ここまでわくわくさせるのって実際めちゃめちゃ難しい気がしています。ということで、各種素晴らしい出来のSCP,依談や、かわいそ笑などの著作をはじめとした現代ホラーの最先端をひたひた走る、梨.psdさん制作の展覧会とのことで、1も2もなく行ってみました。あまり分析や考察は得意ではないので、兎に角私が体験した感想をつらつら書いていきます。

 ・こだわり抜かれた質感
怪文書とは、何らかの意図をもって何者かが「主張する」ためのものじゃないですか、そしてそれは手渡された人が打ち棄てたり、目立つ場所に掲示される等で外気に晒される。そして雨風で一度濡れたり汚れたりしたものの、気味悪がって誰も触ろうとしないから人工物なのに自然のままの汚れだけが付着したような、そういった質感の作り方が本当に巧みだなあと思った。インクの滲み方とかすごいですよね。関係ないけど出所不明の奇妙な文章なら手書きよりデジタルの方が僕はゾクゾクすることがわかりました。こいつワード使って印刷まで出来て「これ」なんだ。って感じがして。

 ・ちょっと残念だったこと(個人の主観です)
怪文書はパブリックなものに置かれてこその怪文書なので、展覧会という形にしてその主張を見えやすくする、というかストーリー的に言えばその意図はきっと、ごく小規模な範囲で完結していたはずの呪いを「主張し直し、広め直す」というからくりが込められているのだと思いました。それそのものはとても素敵な着想だなあと思うのですが、梨さんを筆頭としたこの形式のホラーって、一人で見る事が恐怖を感じるために大事な要素だったんじゃないかと思うんですよね。一人部屋で久々にゲームボーイの電源を入れたらシオンタウンのBGMが急に飛び込んで来たみたいな、唐突でありながら必然さもあり、でも何か本当にオカルト的なものが介在しているんじゃないかと勘繰ってしまう怖さというか。日常とかなり近い絶妙な地続きで、大声を上げたり助けを求めるほどではないながらも、どこか実害がありそうでゾっとする空気感がこの類のコンテンツの大事な所だったと思っているため、他の観覧客の方とか、明るくて人通りの多い渋谷の雰囲気とかによってそこが削げ落ちてしまっている気がして世界観に入りきれなかったところもあります。「考察型」と銘打っているので、ホラーの要素は味付け程度の不気味な謎解きがコンセプトなんだと言われたらもうそれはすみませんと言うしかないんですけど......。ほんと、すみません。

 ・考察
ぶっちゃけ僕の書いていることなんて表層をなぞっているのに過ぎないと思うから書くの控えようと思ったんですが、まあやるだけやってみます。個人的に途中からダイナミックターン制狂人バトルが始まったところがかなり面白かったんですけど。作中で「妖精」って言葉が結構重要なカギっぽく出てきているのは見た人全員が思うと思うんですよね。「妖精さん探しています」に対して大量に補足が書き込まれていたものについて、妖精さんとは書かれた通りの姿をした怪異なんじゃないか、とも思えますが、それは彼にとっての妖精さんだと思うんです。妖精さんというものの本来の本質は、人それぞれの「見えないけどいたら怖いもの」を表しているんじゃないかと思っています。そして、妖精さんを見つけた「彼」が人を雇ってまで、自分の妖精さんの姿形を他人へ押し付けて狂わせ、複数人にイメージを共有させることによって、「いる」ことにしようとしている人間がいる。というのが僕の考察です。

P.S. ぼくははずれですか?

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