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台湾総統選 野党の勝負手「連立政権」

いよいよ台湾総統選挙の投票が約一週間後に迫ってきました。
総統の任期は4年間(再選は1度まで可能)。中国の習近平国家主席の3期目が終わる2027年に「台湾有事の可能性が最も高まる」という観測が広がっています。1月13日に選出される新たな台湾総統は、その2027年と向き合うことになるわけですね。
最新情勢をみていきましょう。


頼清徳氏リードも直前の世論調査はなし

台湾総統選をめぐる以前の記事でも紹介してきましたが、まずは英誌エコノミストが伝えている各種世論調査の平均値です。

1月2日が最新の更新日となっています。これは理由があります。
台湾総統選では投票日の10日前からいかなる世論調査も禁止されるのです。今回だと1月3日からです。街頭インタビューも世論調査とみなされるとのこと。

というわけで、「最後の世論調査(の平均値)」をみると、与党・民進党の頼清徳(らい・せいとく)副総統が36%、最大野党・国民党の侯友宜(こう・ゆうぎ)新北市長が31%。民衆党の柯文哲(か・ぶんてつ)前台北市長は24%となっています。

この順位はしばらく前から定着した感がありますが、前回の記事では頼清徳氏が34%、侯友宜氏が31%で、両者の差は3ポイントしかありませんでした。ですので、最後の調査をみると頼清徳氏がわずかにリードを広げたようなのですが…

「オール野党」による連立政権構想で逆転狙う国民党

逆転を狙う国民党陣営は、最終盤に勝負手を打ちました。連立政権の構想です。

1月3日、国民党の副総統候補である趙少康(ちょう・しょうこう)氏が、自分たちが勝利すれば、民衆党の柯文哲氏や土壇場で立候補を取り下げた鴻海(ホンハイ)精密工業の創業者・郭台銘(かく・たいめい)氏らに、首相にあたる行政院長のポストなどに就いてもらう人事を協議できると述べました。

翌4日は侯友宜氏も「民衆党との野党候補一本化を交渉したときに実は連立政権の組織を約束していた」と述べて、「連立政権は必然」と強調しました。

世論調査で民進党の頼清徳氏に迫れど上回れない状況が続いてきた中、国民党としては「オール野党」「反民進党陣営」の結集を呼びかけたわけです。

この勝負手の威力は、率直に言って分かりません。先述のとおり世論調査が3日からなくなったためです。

効果が大きいシナリオと、不発に終わるシナリオを、それぞれ整理してみます。

まず、連立政権構想が国民党の逆転につながるとすれば、それは3位の民衆党の票をかなり奪うケースとなります。
柯文哲氏の熱烈な支持者たちを引き剝がすのは難しいでしょう。「国民党との間で迷うけど柯文哲氏かな」という人たちや、「自分の一票が死票になるのは嫌だな」と感じる人たちがターゲットです。
そういう有権者たちにとって、柯文哲氏や郭台銘氏も政権入りすると約束されての「反民進党陣営」結集による国民党勝利は、魅力的なはず。

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