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勝手に10選〜イカしたアコースティックロックTHE BEATLES編(前編)〜


(前記)

先日、アコースティックロックと銘打って、アコースティックギターが演奏の主軸となる楽曲を10選し、今回はビートルズのアコースティックロックをセレクトする。

元々アコースティックギターを多用し、名曲だらけのビートルズであるが、今回はその中でも特にアコースティックギターが主軸となる、アコースティックギターの音色がその曲の軸となるイカした楽曲を勝手に10選する。


・Help!

1965年に発表されたシングルで、同年に公開された映画"Help!"の主題歌であり、サウンドトラックとも捉えられるアルバム"Help!"の表題曲にてオープニングを飾っている。

アコースティックギターのストロークを全面に出した疾走感に溢れるロックだ。

元々は映画"Help!"の為に作られた曲で、ジョン・レノンの作品であり、ポール・マッカートニー曰く、1部を手伝った、という事だが、どこの箇所かははっきりしない。

先にも書いた様にアコースティックギターのストロークが主軸となり、コーラスワークも実に映えて、ジョージ・ハリスンもエレキギターで参加しているが、ほんの少々カッティングとギターリフ(実にカッコいいギターリフだが)を弾いているだけだ。

この勢いと疾走感の伴ったアコースティックギターのストロークはドイツのFramus社のフーテナニーという12弦ギターである。
このギターはビートルズの歴史において珍しいギターで、丁度このアルバム"Help!"前後に登場しただけで、誰のギターか、入手経路など全く解っていない。
ドイツ製なのでハンブルグ時代に手に入れたギターであろうか。

映画の主題歌が前提ではあるが、題名と同じくジョンがビートルズの大ブレイクによって自身を見失う心の叫びが、歌詞からも曲からも見事に伝わってくる。

実に印象的な、Help!とジョンがシャウトすると同時に勢いのある最初のパートから曲が始まるが、このパートは曲の頭のみで以降はこのパートは出てこない。あとは2つのパートの繰り返しだ。
流石なアイデアとセンスである。



・You’ve Got To Hide Your Love Away

1965年に発表されたアルバム"Help!"に収録された曲だ。

この"Help!"というアルバムは、映画"Help!"のサウンドトラック的な役割も果たしており、いわゆるレコードにおけるA面にあたる前半7曲は映画の中で使用された曲で、B面にあたる後半の7曲はカバーや新曲である。

この曲は劇中で歌われ、ジョン・レノンが手にするアコースティックギターは、前述のFramus社のフーテナニーという12弦ギターである。

曲はジョン・レノンによるもので、自ら認める様に、ボブ・ディランの影響が色濃く反映されたミドルテンポのロックンロールであり、重厚感のあるアコースティックギターのストロークが演奏の主軸となる。

歌詞はなかなか抽象的であり、第3者から、You’ve Got To Hide Your Love Away、君の愛を隠さなければならない、と諭される曲であるが、恋心を抱いている物を茶化す人々には隠しておけよ、みないなニュアンスだろうか。

クールなアコースティックのストロークに美しく緩急のついたジョンのボーカルが冴え渡る名曲なのだ。
この曲に身を委ねているだけで気持ちが良い。



・I’ve Just Seen A Face

1965年に発表されたアルバム"Help!"に収録された曲だ。

ポール・マッカートニーが作詞作曲を手掛けた、カントリーの香りがする陽気な軽やかで疾走感のある非常に気持ちの良いロックだ。

この曲は初めて曲中にベースを使用していない。
ジョン・レノンが前述ののFramus社のフーテナニーという12弦ギターを弾き、ジョージ・ハリスンも12弦ギター、ポールはガットギター、リンゴ・スターはドラムをブラッシングで、各々弾いて、後にジョンが再びバッキングをオーバーダビングして、ジョージ・ハリスンが12弦ギターを用いてギターソロをダビングしているが、ソロに関してはポールが弾いているという説もある。

実に総じてビートル達4本という非常に豪華なアコースティックギターであるが、ビートルズファンならではの疑問がひとつ出てくる。

ソロの部分はダビングなので、さておき、最初のテイクでジョージが弾いているギターは何のギターであろうか。
ジョンはのFramus社のフーテナニーという12弦ギターである事は解っており、ジョージといえばRickenbacker 360-12という12弦のエレキギターの使い手として有名であるが、ことジョージの12弦アコースティックギターとは耳にした事が無い。
兼用である、という説もあるが、それならベーシックトラックで2人同時に弾くことは無理なのだ。
ビートルズ好き、ギター好き、ならではの疑問である。

歌詞は、一目惚れにときめいている主人公の心中であり、ピュアでストレートである。
実に軽快で陽気なオケと見事に融合した大変気持ちの良い名曲である。



・Yesterday


1965年に発表されたアルバム"Help!"に収録された曲だ。

ビートルズというと、何かと"Yesterday"の名が挙がる。
なんなら、世間的にはビートルズのアイコン的な存在であると言ってもよい位だ。

確かに素晴らしい名曲だ。
しかしながら、これだけこの曲がポピュラリティーを獲得しているのは何故か。

先ずは、単純にメロディラインの美しさと、愛する大切な人を失った心境(長年、失恋ソングとして認知されてしたが、近年ポール自身が亡くなった母親を思った曲だ、と発言している。)を実にキャッチーな目線で記した素晴らしい歌詞だろう。
しかし、それだけでは無い筈だ。

この楽曲はポール・マッカートニーが夢の中で思い付き、起床してすぐに譜面に起こすも、どうせ誰かの曲を思い出しただけだろう、と思っていたら、結局自身で作曲した事に気づく。

ポールは最初、弾き語りにてこの曲を録音した。メンバーも同席していたが、この曲にこれ以上他の楽器を付け足す必要がない、と意見は一致する。
確かにポールはベース担当だけあり、ルート音も綺麗に強調され、独学の2フィンガーによる素晴らしいフィンガリングのスキルがある。

そしてプロデューサーであるジョージ・マーティンの提案により弦楽四重奏が加えられ、曲は完成した。
このジョージ・マーティンは元々はクラシックのプロデューサーである。

という流れを考慮すると、この曲がこれだけアイコンとなり誰もが知る名曲となった訳は、筆者の憶測になるが、クラシックとロックの融合を果たした点ではないだろうか。

クラシックとロック、対極にあるジャンルと言えよう。
ロックなんかうるさい、と感じていたクラシック愛好家ならびに大人達や、クラシックなんて退屈な音楽、と思っていたビートルズを始めロック好きや、若者達。

音楽におけるジャンルの壁を超えて、美しい歌詞と、美しいメロディラインを伴い、それら全ての人々の心に響く点が、この曲の持つ最大の魅力ではないだろうか。



・Norwegian Wood(This Bird Has Flown)

1965年に発表されたアルバム"Rubber Soul"に収録された曲だ。

殆どがジョン・レノンによって製作された曲であるが、ミドルエイトなど1部をポール・マッカートニーが手伝っている。

実に心地よい独特の世界観を持つ、ミドルテンポのバラードである。

ストロークにピッキングを絶妙に融合させたアコースティックギターのギターリフが素晴らしい。
元々曲のキーはEであるが、このリフは2フレットにカポをつけて、Dのコードを細かいハンマリングなどを駆使しないと弾けず、テクニカルなリフである。
どうやったら、こんなリフを思い付くのか、筆者が弾いている度に感服してしまう素晴らしいリフだ。

更に、ジョージ・ハリスンによるシタールが絶妙にギターリフに絡みつき、曲におけるアトモスフィアの形成に大いに貢献している。

歌詞は、要約するに一夜を共にする女性とヤレなかったので、彼女の家具はノルウェー製でイカしてたんだぜ、となんとか自分を正当化させ、いきがっている内容なのだが、しかし、そこではとどまらまいジョンレノンは流石である。
歌詞、題名の"Norwegian Wood"を似た響きの"kowing she would"に置き換えると、つまり、彼女はやらせてくれる、を捩ったとも解釈できる訳だ。 

ジョンならではの、唯一無二の世界観と歌声と演奏に身を委ねるのが、実に心地よいのだ。


(後記)

後編へ続く。



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