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勝手に10選〜イカしたアコースティックロック(後編)〜

(前記)

張り切って後編に移る。

・Love For Sale

1988年にボン・ジョヴィによって発表されたアルバム"New Jersey"に収録された曲だ。

このアルバム"New Jersey"であるが、"Bad Medicine"や"I'll be There For You"、"Born To Be My Baby"、"Lay Your Hands On Me"など名だたる名曲、ヒット曲が満載の、もはやベスト盤に近い様な名アルバムであるが、ラストを飾るのがこの曲である。

ボン・ジョヴィの持つ、上品で煌びやかでキャッチーなハードロックのイメージを良い意味で裏切ってくれるアコースティックロックである。

アコースティックギター2本(3本だろうか)にスネアのブラシ、ハーモニカを携えて、まるでレコーディングやらリハーサルの合間にメンバーが車座になり気分転換に粋なセッションをしている雰囲気なのだ。予想ではあるが即興だろう。

明るく軽やかでブルースも香る3コードの実に素敵なロックだ。
一方のアコースティックギターがバッキングを担当し、もう一方のギターは楽しそうに踊る様に駆け回り、ハーモニカも実にクールだ。

何よりメンバーがリラックスして楽しそうなのが楽曲から伝わって来るのが素晴らしく、現にメンバーシャウトにジョンが途中で笑ってしまっている。

しかしながら、ギターのスキル、ボーカル、コーラス、ドラム、全体のグルーヴにて、さすがボン・ジョヴィの実力を大名盤のラストに余裕で見せつけてくれるのだ。



・Patience


1988年にガンズ・アンド・ローゼズのアルバム"GN'R Lies"に収録された曲だ。

実にシンプルに3本のアコースティックギターと口笛とボーカルのみで奏でられる実に気持ちのよい、ずっと身を委ねたくなる様なロッカバラードだ。

この曲が収録されているアルバル"GN'R Lies"であるが、デビューアルバムの"Appetite for Destruction"と、3作目のアルバム"Use Your Illusion I&Ⅱ"というモンスターアルバムに挟まれる形で、少し印象が薄いイメージがあるが、後半4曲のアコースティックナンバーに関しては感嘆せずにはいられない。

その中の1曲が本曲であり、アクセル・ローズがリードボーカルと口笛を、スラッシュがリードギター、イジー・ストラドリンとダフ・マッケイガンがバッキングギターとコーラスを担当している。

アコースティックギターのストロークとピッキングとアクセルの口笛により前奏が始まる。
長めの前奏であるが、アコースティックギターと口笛が絡み合って実に気持ちが良い。

本編が始まるが、3人のギターがピッキングで思い思いのフレーズを奏でているのだが、まとまりがあり、ガンズのグルーヴ、世界観を発揮しており、サビになると揃ったストロークとなり、間奏もストロークとスラッシュのソロとなり、この実に緩急が見事であり、これらの総合的なグルーヴがこの曲の真骨頂なのだ。

最後の転調のパートでコーラスに合わせてアクセルがオクターブを上げて熱唱するが、これもまたエンディングとして素晴らしい。

歌詞は、俺達には少しの我慢が必要だ、と恋人に語りかける素敵な歌詞だ。

ガンズのスキルの高さ、ポテンシャルの大きさ、グルーヴの素晴らしさを体感できる名曲である。



・To Be With You


1991年にミスター・ビッグによって発表されたアルバム"Lean Into It"に収録された曲だ。

単調なリズム、ビートに華やかなアコースティックギターが主軸となり、コーラスワークがキラリと光る、美しさに華やかさも兼ね備えながら、暖かさもあり、切なさが絶妙にトッピングされている、アコースティックロックにおける大名曲である。

歌詞はボーカルのエリック・マーティンの実体験がベースとなり、元々別のカップルだった女性に恋をする、恋をしていた主人公が、カップルが破綻したので、次は僕のところへおいで、と諭しているストレートでピュアな内容だ。

曲の構成は、Aメロとサビを繰り返すシンプルな構成で間奏とミドルエイトが入るが、リズムは終始一定である。

Aメロはシンプルでタイトな演奏に、エリックの心の叫びの様なボーカルが映え、サビになるとメロディラインの主役がコーラスとなり、一気に優しく華やかなものとなり、エリックのボーカルも舞い踊る様になり、ラストに転調が入る事でより華やかさが増すのだ。
このAメロとサビの緩急が実に素晴らしく、結果的にサビをAメロが見事に盛り上げてくれている。

素晴らしいバラードであり、歌い継がれて欲しい曲である。



・Motherless Child


1994年にエリック・クラプトンによって発表されたアルバム" From the Cradle"に収録された曲だ。

このアルバム" From the Cradle"であるが、全曲ブルースのカバーアルバムであり、この曲は1927年にバーベキュー・ボブによって発表された曲である。

原曲を聴くと、なるほど当時のいかにもブルースという印象より、爽やかなストロークを用いられたブルースだ。

エリック・クラプトンというアーティストは、オリジナル曲という点では素晴らしい曲を作るが、オリジナルの占める割合が少ないアーティストである。そのオリジナルのクオリティの高さは絶品であるが。

しかし、アーティスト、曲の有名無名を問わず、とにかくカバー、アレンジが秀悦して素晴らしいアーティストである。
クラプトンが存在し、カバーする事で原曲が息を吹き返し、また埋もれていた原曲を再び有名にする、原曲が見直され歌い継がれる、という点において、特にブルースの分野が多いが、曲の魔術師の様な伝道師という功績は偉大なるレガシーである。

実に鮮やかで爽やかで疾走感のあるアコースティックギターによるストロークが、この曲の主軸である。
エリック・クラプトンといえばアコースティックギターにおいては華麗なるフィンガリングのイメージが強いが、この曲ではとにかくストロークが鮮やかで気持ちが良い。
歌詞は散文的で、母親のいない事を引け目に、世の中を見ている印象だろうか。あまり、歌詞に深さを求める曲ではなさそうだ。

様々な時代を超えたアーティスト達の、原曲が持つ魅力に対してリスペクトしながら、カバー、アップデートするクラプトンには敬意しかないのだ。


・Wonderwall

1995年にオアシスのシングルとして発表された曲だ。

咳払いで始まる曲も珍しい。
実にシンプルで気持ち良さの中に少し切なげなアコースティックギターのストロークとボーカルだけでAメロを1度奏で、他の楽器が入る。

特記すべきは、曲はアコースティックギターのストロークが主軸となるが、ストリングスとしてのチェロがストロークと絡め合い、実に素晴らしい働きをしている。

構成は、Aメロ、Bメロ、サビから構成され、ミドルエイトや転調などは無く、実にストレートで、そのストレートさとメロディラインの美しさが曲に抜群の安定感を与え、すっと聴く者の胸に刺さるのだ。

歌詞は自分の話を聞いてくれない相手を憂う印象の歌詞だが、その話が通じない事に対するメタファーとして、"Wonder"と"Wall"を繋いで、"Wonderwall"、つまり造語であり、"不思議な壁"となるのだろうか。
歌詞は聴き手の解釈次第だ。

最初はノエルの当時の彼女に対して歌った、とされているが後に、その彼女と破局した後にこの曲は、想像上の友人に救われる曲、とされている。
なるほど、どちらのシチュエーションにおいても当てはまる印象である。

ストレートな重厚感を伴い、とても美しくキャッチーなメロディラインと不思議な歌詞が微妙に融合し、アコースティックギターが実に冴え渡る王道と言える名曲なのだ。


(後記)

このアコースティックロックを10選するにあたり、過去に出会ってきたアコースティックギターを主軸とする曲をピックアップし、改めて聞いてみたが、時には優しく、美しく、時には軽快で刺々しさかま無く、時に煌びやかであざやかなアコースティックの世界も良いものだ、と有意義に楽しむ事が出来た。

また、アコースティック編を継続していく次第だ。

読んでくださった方々へ
ありがとうございました。

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