ひざのうらはやお

小説家「新津意次」のマネージャー。今はどんなものにも成り代われる球体の生物。

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    年間報告を見やすくするためにマガジン化する。

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  • ひざのうらはやお裏ベスト短編集「こんにゃくの角で戦う大統領」

    知る人ぞ知る、ひざのうらはやおの裏ベスト短編集。数年前にベスト短編集「まんまるくろにくる」を刊行したときにひっそりゲリラ的に同時刊行された。noteの投稿機能のテストを兼ね全作を無料公開する。

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ひざのうらはやおのプロフィール

 この記事はプロフィール用に作成されたものである。普段のぼくを知らないひとがぼくの記事を読んだとき、「こいつはなにものなんだ」と思うはずだ。そのために、軽い自己紹介プラス経歴まとめとしてこれをプロフィール記事とする。 ひざのうらはやお(二代目) 平成初頭、暑い夏の日に生まれる。通称「ザーヒー」「ひざくん」など。  代表作は「震える真珠(2021)」「驟雨、あとを濁さず(2022)」など。主に純文学方面の小説を書いているが本人にその自覚はなく、どちらかというとSFの書き手であ

    • 令和5年と令和6年のはなし

       去年よりさらに遅れたスケジュールで、ぎりぎり松の内だろうというところでこの記事を書いている。一応毎年noteで振り返ってはいるし、今後もできるうちにやっておかないと、というところで、今年(厳密にいえば、去年)の振り返りをやっていきたいと思う。  今回も、令和4年と同様に、創作・ゲーム・その他(私事)の3分野に分けて振り返っていき、令和6年、今年の展望についても同様としていきたい。創作に費やす時間のほぼ倍くらいをゲームに捧げているので、これは妥当だろうと判断した。 令和5

      • #18 生理的嫌悪は時として知識や感情を超えてくる、みたいなはなし

         大規模な食中毒事件と、それに付随するSNSの動きを見て、なんともいえない気持ちになっている。当事者が(図らずも)飲食業界に与えた衝撃は非常に大きい。そして、一度毀損された信頼というものはそう簡単には戻らない。思うに、この信頼というものの厄介さと、それを容易に破壊しようと試みる社会の不安定さは、SNSという情報伝達システムの寄与が大きい。それについては、まとまったときに書くかもしれないし、書かないかもしれない。  学生のころ、振り込め詐欺がなぜなくならないのかわからなかった

        • 短編小説「風に乗る」

           船には誰もいなかった。僕だけがそこに佇んでいた。だからきっと我に返れた。  甲板をぐるりと見回して、誰もいないことを確認した。  どれだけの乗客を載せていたのか、見当もつかないくらい大きい。この船はその昔、東京湾を往復するものとして動いていたらしい。内部にそんな説明書きがあった。生ぬるい風が穏やかに吹いている。甲板は濃い緑色に塗られていて、どこまでも薄く蒼く広がっている空と白い外装は不思議に調和していた。内部に降りる階段はなぜか洞窟のように湿っぽい。くぐり抜けるように入った

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        記事

          #17 「生まれてきた」ということを受け入れるのは意外と難しい、みたいなはなし

           子どものころから誕生日という概念が苦手だった。未だに「誕生日を祝う」ということそのものはよくわかっていない。単にぼく自身が生まれ落ちた日であり、それはうるう年も含めて366パターンのうちのひとつでしかない。誰にもコントロールしようもない属性で「おめでとう」というのは、やはり何度考えてもよくわからなかった。まして、生まれたことそのものに関してさして幸福性や肯定感を得られているわけでもない(なんならその逆の感情の方が多いくらいであるのだが)以上、「生まれた日」というのは単に「生

          #17 「生まれてきた」ということを受け入れるのは意外と難しい、みたいなはなし

          (詩歌集)こんにゃくの角で戦う大統領(抄:短歌のみ)

          短歌の部  十二時半冷えるコバルトブルーの灯丸く収めずごうがふかいな  呪文さえ彼の名を呼ぶのみならずその影射止め時を戻して  自制心しこりの中にゴキブリの卵埋め込み虫唾を流す  一重まぶたの君が見るエトセトラねじれの位置のぼくには届かず  仕事場で赤鉛筆を滑らせて流された血は二百リットル  大統領その場で嘔吐大往生トランプタワーも吹けば儚し  チョコレート投げつけロッテと叫んでも口にはハムを詰め込まれてる  壊れるほどに愛しても散文の一も伝わら

          (詩歌集)こんにゃくの角で戦う大統領(抄:短歌のみ)

          (短編)冷たいパンケーキ

           バターとシロップの甘い匂いがする。  機嫌よく鼻歌を鳴らしながら、玲子はパンケーキを焼いている。パンケーキが好きなのだ。僕はあんまり好きじゃないけれど。 次第に強くなってくる甘い匂いに胃がもたれそうになる。漆を塗った茶碗のように真っ黒な彼女の髪がふわふわと弾むように揺れる。その小柄な背中は、これから三枚のパンケーキを食べるとはとても思えない。そして、ひとくちだって僕には寄越さないのだ。もちろん、それに越したことはないのだけれど。  彼女の黒髪がしなやかに伸びて、僕を

          (短編)冷たいパンケーキ

          (短編)バイフューエルポエムは本当に存在するのか?

          「さあ」  君はそうしてすました態度で、何度でも死線を潜り抜けてきた兵士が見え見えの地雷を処理するような顔をぼくに向ける。ぼくはきっと、鶏がとうもころしを食っているような顔をしているような気がする。  とうもころし。あれ、とうろもこし? とうころもし?  暗転。  脳髄が何も感じなくなってから世界が横滑り断層みたいにゆっくりはっきりしっぽりとしけこんだあと、終わりの大地震が来てそこで確かに一度世界は終了したはずだった。いや、完了? 完結? いずれにしても、これ

          (短編)バイフューエルポエムは本当に存在するのか?

          (短編)動物園まで

           硝子張りの喫煙室は、どことなく見せ物小屋のような非日常感と煙が反射していく閉塞感がないまぜになってあまり好きではないが、そこまでしなくてはもう喫煙することも許されなくなっているご時世なのだから仕方がない。いやな世の中になったのかそもそも僕自身がいやな存在なのかについての議論はしたくない。しても仕方がない。  僕はよく銘柄を変える。いつでも新しい煙草に挑戦したいからだ。同居人には不評なのがたまにきずである。  まあ、つい数日前にその同居人にも出て行かれてしまったのだけ

          (短編)動物園まで

          (短編)≒18.89444362769119

           ごわごわの脱脂綿にアルコールを染み込ませたものを次々と燃やしていくような空しさを感じながら、私は雨に煙る国道357号線を見つめていた。俗称を湾岸道路というこの道路には、今日も今日とて排気量の多そうなトラックしか見あたらない。世界は誰のためにあるのかなんて考えたことがないけれど、少なくともこの私のためにあるわけじゃないことくらいは、生理が初めて来たあたりにはもう気がついていた。できることならこの車から飛び出して近くのトラックに身体を轢断されたいそんなお年頃だけれど、そ

          (短編)≒18.89444362769119

          (短編)ヒロインは死んだ

           君の忍び笑いが聞こえたような気がして、僕は思わず夢の淵から飛び込んだ。八畳の少し豪華な部屋の天井が、視界いっぱいに広がる。今日は十五夜だという。物の怪が騒ぐにはちょうどいい。彼らにとっては祝日だ。  うふふ。  君の忍び笑いが、耳元で、はっきりと聞こえた。身体の内側からくすぐられるような、ほんの少しの不快感とざわつくような、それとは違う何かを感じる。じっとりと、冷たい吐息がそこにあった。ひんやりとした両腕が僕の身体をゆっくりと、真綿で首を絞めるような周到さで抱きし

          (短編)ヒロインは死んだ

          #16 先輩が後輩に飯を奢る時、後輩に対する「下心」以上に、バトンを絶やさないという単なる使命感のもとで行動しているかもしれない、というはなし

           仕事柄、先輩や上司にランチに誘われたりすることがそれなりにある。職場の風習なのか、休日に出勤したりすると必ずと言っていいほど上司に「ゴチになって」いる。これはそういう風習の世界の話であり、おそらくそれが「ある/ない」という境界線の先では全然違う話になるものと思われる。ぼくは大学時代から「ある」線で生きているので、そこに両足で立ったような書き方をする旨ご了承いただきたい。  ということで、そういう世界にもう15年近くいる関係でぼく自身は年長者から奢られることに何の違和感もな

          #16 先輩が後輩に飯を奢る時、後輩に対する「下心」以上に、バトンを絶やさないという単なる使命感のもとで行動しているかもしれない、というはなし

          #15 乗り越えられない試練に直面したとき、「正面から突破しようとして死んでしまった自分」と「逃げることによっていきながらえた自分」に分裂することができる、みたいなはなし

           文学フリマ東京がかなり盛会だったらしい。同人誌即売会というものに出展しなくなって久しいが、かつて見ていた景色が大きくなっていくのはなんだか寂しいのと、個人的にはあまり向かって欲しくない方向に行っているなという感覚だけがある。  即売会というものはもともと苦手で、だいたい押しかけてくる他人に応対する、などというのはぼくにとっていちばん苦手なものなのに、何をどうしてそんなことを延々とし続けなくてはならないのか、と思ってしまう。イベントに出ていた数年間はそれが当たり前だと思って

          #15 乗り越えられない試練に直面したとき、「正面から突破しようとして死んでしまった自分」と「逃げることによっていきながらえた自分」に分裂することができる、みたいなはなし

          今こそ選挙のはなしをしよう #2 どういう投票をすればいいのか

           さて、「投票」というのは「投票所」に行って投票用紙を投票箱に入れることであり、それにはそれなりの手続きが必要であるものの、選挙権さえ有していてちゃんと手続きに従えば投票できることは前回で述べた。しかし、実は選挙の投票といっても様々なものがあるし、どういう投票行動をとったらいいのかなんていまさら人に聞けないし、てきとーだと後が怖い、という方もそれなりにいると思われる。  そこで、ここでは、選挙の種類をおさらいしつつ、どう投票すればいいのか、についてぼくなりに調べた結果、ヒント

          今こそ選挙のはなしをしよう #2 どういう投票をすればいいのか

          今こそ選挙のはなしをしよう #1 選挙に行く方法

           先日行われた統一地方選挙の前半戦では、主に政令指定都市の首長(「首長」とは、地方公共団体のリーダーで、都道府県なら知事、市町村なら市町村長のことを同時にさすことのできるめちゃくちゃ便利なことばである。おぼえておこう)の選挙と、県議会議員選挙があった。基本的に国政よりも地方選挙の方が投票率が低くなるし、今回も国政と比較すると軒並み低い結果になった。ぼくは正直言うとこれを「もったいないなあ」と思っている。なぜなら、国政選挙、つまり衆議院議員選挙や参議院議員選挙と比較すると、地方

          今こそ選挙のはなしをしよう #1 選挙に行く方法

          新津意次短編集「ぶたを抱いた日」について

           ぼくが所属する「日本ごうがふかいな協会」には活動している書き手が2名義ある。ひざのうらはやおと、新津意次だ。  そして、この度本協会の主筆として小説創作を中心に担うこととなる新津意次の初めての短編集が、この度刊行される。編集しているのはぼく、つまりひざのうらはやおであるので、氏の全原稿を確認したうえで現在編集中である。  そこで、本作の広報の一環として、新津意次の初短編集「ぶたを抱いた日」について、刊行前レビューを行おうと思う。  総論  新津意次という書き手をぼくが評

          新津意次短編集「ぶたを抱いた日」について