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【授業・研修のレシピ】ブレンド型授業の設計で “半完成品”を作ってみる

授業や研修の担当になったら,まずは企画(設計)を考えはじめるのではないでしょうか。どんな目標を設定してどのような内容にするのか,トピックから全体の進め方まで,しっかりと作りこむべく準備を進めていくものです。こうした準備には時間も労力もかかります。なので,全体を企画して全ての教材を作り終えてから ”運用がうまくいかない” ”イメージとは異なる”という事態は避けたいものです。とはいえ,その領域に関する知識が十分にあったとしても,教育の専門家ではない人が教材開発をすることは容易ではありません。

モデル的な一部分 “半完成品” を仮に考えてみる

ブレンド型授業やビデオ教材を用いた研修を企画するときには,まず“半完成品”を作ってみることをおすすめします。半完成品(プロトタイピングといいます)とは,一つのトピックを題材とした,典型的でモデル的な一部分をさします。こうして半完成品の教材を作成し試行してみることによって,全体的なアイデアや,適切性を検討することができるのです。それでは,半完成品(プロトタイピング)を作成するステップをみていきましょう。

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ステップ1:学習目標

まず,授業や研修の対象と学習目標を明確にします。

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ステップ2:全体的な方略

次は,授業全体の方略です。eラーニング,対面授業,グループワーク,事前・事後学習などをどう組み合わせるのか,どのような順番で行うのかということを考えます。

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ステップ3:eラーニングの要素

ブレンド型授業を実践するためには,ビデオを録画し,eラーニングコンテンツを作成する必要があります。典型的かつモデル的な一部分として適した題材(トピック)を選択し,短めのビデオを作成してみるとよいでしょう。

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ステップ4:学習支援システム(LMS)の機能

ブレンド型授業を実践するためには,学習支援システムが必要です。そういったシステムが施設にない場合には,オープンソースのソフトウェアであるmoodleがおすすめです。しかし,教材作成もコンテンツの管理も一人でこなすのはけっこう大変です。とくにLMSを用いる場合には,受講生一人ひとりのユーザー登録を行い,ログインIDやパスワードを発行する必要があります。コンテンツ制作が得意な人,システムの管理ができる人たちの協力を得ることをおすすめします。

ステップ5:半完成品(プロタイプ)の試行

4つのステップで準備が整ったら,半完成品を試行してみます。できるだけ,実際のコンテンツに近い形式で試行することによって,よりイメージしやすくなるでしょう。

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試行段階で,部署の仲間などにチェックしてもらうことをおすすめします。教材を客観的に見てもらうことにより,自分では気づかなかった点を改善することにつながります。
また,チェックリストを活用することによって,教材の過不足を容易に確認することができます。以下は,ブレンド型授業を設計するときのチェックリストです。付加,簡易化,その他5つの観点からチェックします。

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試行の段階で,できるだけ多くの改善点を抽出する

これまで,5つのステップを紹介してきました。中には「ブレンド型授業の設計はこんなに面倒なのか…」と感じた方もいるでしょう。そう,慣れるまでは手間も時間もかかるものなんです。
しかし,はじまってから「ビデオの音声が聞き取りづらい」「サイトにつながらない」「フォーラムに書き込みができない」などの不具合があったらどうでしょう。受講生は不安にもなりますし,信用を失いかねません。
そう,受講生にとって適切な教材を提供するためにも,こうしたステップが必要だということですね。半完成品を作成し,試行→他者チェック→改善→実践のステップで進めることによって,より効果的で魅力的な教材を提供することができます。試行の段階で改善点を抽出しているわけですから,はじまってから”うまくいかない”ということはなくなるでしょう。
ブレンド型授業をはじめてみたい,ビデオ教材を使った研修をやってみたい……
そんな方々の参考になればと思います。

こうした取り組みを「ブレンド型授業の導入に向けたプロトタイピングの試行とチェックリストの開発」という題目で,日本教育工学会研究会(鹿児島大学)で発表しました。ご興味のある方は,抄録をご高覧いただければと思います。


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