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とある仕事

 守衛さんがなかなか通してくれない。隣の人も同じ様子だ。今日ははるばる遠征。地方にある大手企業の本社。我々の訪問先がはっきりしないために通してくれないのだ。守衛さんの仕事の仕方は正しい。


とある仕事

 この仕事は、仲介会社を通してのものだ。仲介会社から、我々は行き先を詳しく聞いていなかったのだ。遅れて、仲介会社の関係者が到着して、行先がやっとわかった。訪問表に訪問先を書き入れて、中に入ることができた。
 今回は、仲介会社を経由して、訪問先企業の新規事業提案者のメンターというものをやる。新規事業は6個テーマが上がっていた。事業としての新規事業は会社としてもっとたくさん検討しているだろう。この6個は社員の社内提案を新規事業に結びつける経路を通ってあがってきたものだ。

メンター

 私と同じ立場でメンターとして来ているのは4人。面識はない。一人だけ、1年前も担当していて、リーダー格だ。リーダー格は、海外での起業経験もある新規事業で有名な企業出身の人。もう一人は、有名企業の社員。有休をとって副業で来ているという。4人目は、PRのコンサルタントをしている女性。女性は彼女だけ。新規事業提案者は一人の場合が5つ、2名が1つ。最初、メンター4人は、新規事業提案者と離れたところに座らされた。

概要

 ほぼ1日コースになっていて、最初の30分で運営側のリーダーが概要を説明してくれた。スタートアップ界隈のイベントでMCをやっていそうなとても上手な進行だった(本人はそういう経験はないということだった)。
 この新規事業社内提案は、
・会社の中で正式な部署があって運営している。
・これまでの毎年継続して開催している
・フェーズ1~3まであって、それぞれ6か月(今回はステージ1)
・今回のステージ1は6件採択されている。
(メンターの数と合わないのは、女性メンターが2件担当するのと、1件はメンターがまだ決まっていないから)
・フェーズ1には調査費がつく。
・フェーズ1は基本的に調査のみ、しかも、会社名を出さない調査のみ
・フェーズ1のあと審査があり、以降に進めるかどうか決まる。
・参加者は所定労働時間の20%までをこの活動に使ってよい。
・調査については本職のマーケティング担当が協力してくれる。
・フェーズ2はプロトタイプを作る
ということだ。

メンタリング

 続いて、リーダー格のメンターが、メンター(メンタリング)について30分説明してくれた。
 すごいなと思ったのは、メンタリングについてしっかり説明できること。私には、なにかについて説明できることなんてない。デザインセンスのあるパワーポイント資料でとても早口でたくさんのことを説明してくれた。
 メンタリングは分かりにくいという説明だった。上司に当たるものではなく、言われたことは必ずしも聞かなくていいということだった。私もそんなイメージを持っていた。
 彼が一番わかりやすと言っていた説明は、ドラゴンボールに出てくる「最長老」のようなもの。「潜在能力を開花させてくれる」存在ということだった。これと対比してわかりにくいという前提で説明してくれたのがマトリクスを使ったもの。「時間軸」と「どこから答えが出るか」の2次元4象限マトリクス。
  外部
   ↑
過去← →未来
   ↓
  内部 
・過去のことを外部から教える
 ⇒コンサルティング
・過去のことを内部(本人)から引き出す。
 ⇒カウンセリング
・未来(目標)を外部から教える
 ⇒ティーチング
・未来(目標)を内部(本人)から引き出す
 ⇒コーチング
メンタリングは4つのどれでもあるし、どれでもないということだった。
 すごいなと思ったのは、昨年の新規事業提案者からメンターをうまく使えなかった意見を拾い上げていたことだった。
例えば、
・メンターも付き合っていくうちにアイディアに詳しくなって外部の視点がなくなってしまった。
・会社の文化までは理解してもらえなかった。
・メンターの言うことを聞きすぎた
など。 
 メンタリングはいいことばかりじゃないよと言う注意点は付加価値高い気がした。

ご対面

 このあと、私が担当する新規事業提案者との対面となった。すごくよく考えられていて、私で役に立つことがあるのかという印象だった。この人が私を選んでくれた人。私は、フェーズ1の期間中にこの方と最大18時間、お話をすることになる。今回はこの人だけだったが、このあと、メンバを募集していくようだ。
 ここで、ランチ休憩。ランチは、訪問先企業の食堂で無料で食べることができた。

リーンキャンパス


 午後は、リーンキャンパスの2時間ワークショップ。リーンキャンパスは新規事業を考える際によく使われるワークシートのフォーマットで、運営側から作成を指定されていた。新規事業提案者6人は事前に作成していたようだ。
 講師はシリコンバレーで起業したことがある有名な方。リーダー格のメンターよりもさらに手慣れた感じで、プロフェッショナル感あるワークショップだった。私と新規事業提案者の模擬対話を含めながら濃い内容だった。
印象的だったことは下記
・既存事業ではないので、既存のビジネスモデルの改善、改良はやらないでください。99%のリーンキャンパス1回目の内容は、既存ビジネスモデルの改善、改良になっているので、捨ててくください。
・顧客、市場と対話して、何度も書き直してください。
・リーンキャンパスには9個書く欄があるが最初の3個、「顧客の課題」、「顧客のセグメント」、「提供価値」の3つだけでよい。4以降は1~3が変われば変わってくるのでその都度書けばよい。
・3の提供価値をバリュープロポジションと呼んで、独特の定義だった。それは、課題の質の高低、解決策の質の高低で4象限のマトリクスを作るもの。
       (質が高い)
        解決策
         ↑
(質が低い)課題← →課題(質が高い)
         ↓
        解決策
       (質が低い)
課題の質が高く、解決策の質が高いものを目指せという考え方だった。逆に言うと多くの新規事業提案は、課題の質が低く、誰でも思いつく課題を対象にしている。同じく、解決策の質も低くて、自分にしかできない解決策になっていないという論だった。
なるほど。

メンタリングといい、リーンキャンパスといい、私の方が学ばせてもらった。

懇親会

 ワークショップのあと、事務連絡や写真撮影があって、本編終了。少し間が空いて、懇親会へ。懇親会は焼肉&飲み放題。訪問先企業の負担。懇親会は運営サイドの人や、担当していない新規事業提案者とも話して、やっと打ち解けることができた。懇親会までは、ほとんど話を聞いているだけだったので、楽と言えば楽、何しに来たんだろうと言えば何しにきたんだろうだった。やっと、やることができた。

激戦

 さて、新規事業提案でフェーズ1に残るのも6人だけという狭き門だが、メンターに選ばれるのもさらに狭き門となっているようだ。メンターをやってくださいという依頼案件数に対して、メンターをやりたい人の数が圧倒的に多いそうだ。少ない案件に、仕事を求める人が群がってくる状況のようだ。メンターに選ばれるのは何百分の一確率。激励競争。

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