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【S.S.C】『能を題材にした一人芝居』に挑む大学生【環】【¥500】

2019年10月26日(土)、大阪・心斎橋で大学生「環(たまき)」さん『能を題材にした一人芝居』を披露します。衝撃のステージに心を揺さぶられる……!?

学生応援インタビュー企画S.S.C

面白い活動をしている学生をnoteの一部有料記事で紹介し、得られたお金をその学生に手渡す学生応援インタビュー企画:S.S.C。

ここはとある狭い練習室。日曜の夜であるにもかかわらず、声を出し、動き、演じ、何度も修正を繰り返す。

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(飛んでます)

彼女は大阪大学文学部2年生で、演劇の世界にのめり込んでいる「環(たまき)」さんです。

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高校演劇の地方ブロック大会で文部科学大臣賞を受賞し、全国大会にも出場した経験を持つ彼女が次に挑むのは……『一人芝居』!?

しかもその中身が衝撃。『「能」の脚本を現代的に解釈し、一人芝居の舞台に仕上げる』のだそうな。


なにそれ。


気になって仕方がなかったので、稽古にお邪魔して詳細を聞いてみることにしました。

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環(たまき)
1998年広島県生まれ
大阪大学文学部演劇学専修2回生
普段は喜多流能楽研究会に所属し能の稽古に取り組みつつ、「Fの階」で演出助手を務めるなど演劇活動も行なっている。舟入高校演劇部出身で2016年には自身が演出・主役を務めた『八月の青い蝶』で中国地方大会文部科学大臣賞、後に全国大会に出場


1.一人芝居に挑むのはなぜ?

インタビュアー=コフンねこ
――今度の土曜日に『能の脚本を題材にした一人芝居』を披露なさるとのことで、まずはその件について色々聞かせてください!


「はい!」

――まずめっちゃ失礼な聞き方するんですけど、そもそもどうして一人なんですか?


「実を言うと……別に最初から一人でやりたかったわけじゃないんですよ」

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――えっ。表現の幅を広げるためとか、とにかく敢えて一人で演劇をするのかと思ってました。


「そんなんじゃありません。一人でやるのはめちゃくちゃネガティブな理由です。私ってそもそも、人を集めるだけの基盤がなくて」

――えっと……基盤って一体?


「例えば人を集めるだけの経済力や知名度のことですね。でも、私にはそれが無い。それで、消極的な選択の結果『一人でやろう!』と決めました。あと、理由はそれだけじゃなくて……」

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――ほかにも理由が?


「……そもそも少人数の演劇に慣れてるってのもあります。実は自分の高校の演劇部は超少人数でした。6人いた同期が最終的には3人まで減っちゃったし」

――待ってください。それって、2016年の中国地方大会で文部科学大臣賞を受賞した演劇部の話ですよね?そんなに人数少なかったんですか……?

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(当時の写真)


「はい。演者は二人だけ~、とかよくありました。その中国地方大会で披露させていただいて作品も、もちろん他にも役者はいましたが、実質二人芝居みたいなものでしたし」

――へー!演者の人数が少ない中で、その大会ではどういったポイントが評価されたんでしょうか?


「審査員の方からは『エロいね~』と講評をいただきました」

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――は?一体何を披露したんだ……


「コフンねこさんが想像してるようなヤツじゃないですよ、多分(笑)。自分たちが挑戦したのは、『八月の青い蝶』という、広島の原爆投下を題材にした作品です」

――……そんな作品で何がエロかったんでしょうね


「ストーリーの詳細は伏せますが、主な登場人物は中一の男子19歳のお姉さんの二人でした。私が男子役です」

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(『八月の青い蝶』より)

――中一の男子ってだけですごいエロパワーを感じます


「で、その男子がお姉さんの水浴びを覗くシーンがあったんですよ。顧問の先生がそのシーンについて熱心に指導してくれて。『もっと想像しろよ!エロいだろ!』みたいな感じでした。中一の男子の気持ちなんて全然わかんなかったですけど

――もちろんそのシーンだけじゃないとは思いますが、全体的に評価されて……全国大会出場も果たした、と。


「そうです!私はその作品の主人公演出をどっちもやっていたのですが、それである程度自信がつきました。だから、今回は脚本も演出も出演も、全部自分だけでやってみようって決めたのもあります」

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――高校生の頃の経験が『一人芝居』へのチャレンジに生きてるんですね!


2.『能』を題材にする理由

――今回環さんが作り上げる一人芝居作品は『能』を題材にしているとお聞きしました。


「はい!能です」

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――なぜ『能』なんでしょうか?


「私、大学に入ってからを始めたんです。せっかくの機会だから、高校の頃の少人数での演劇の経験と、大学に入ってから新しく始めた能を掛け合わせてみたくて」

――高校時代にはバリバリの現代演劇を経験しているのに、なぜ敢えて大学でを始めたんでしょう。


「高校演劇部の顧問の先生がすごく能好きだったんですよ。指導してくれる時に、『こういう場合、能では~』っていう話をちょくちょく挟んでくれていました。それがすごく納得できる話ばかりだったので、これはやりたいな、と」

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――へ~!なるほど。そして今回取り上げる作品は……「通小町(かよいこまち)」でしたっけ。


「そうです!本当は三島由紀夫がすでに戯曲にしている『道成寺』『弱法師』も考えたのですが、やっぱりどう考えても三島のハードルは高い。色々考えた末に『通小町』に決めました」

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――なぜそれを選んだんでしょうか?


『通小町』は人の心の“執着”がテーマの作品です。こういう作品を現代演劇的に解釈したら面白いんじゃないかな?と思って選びました」

――ええと、あらすじだけでも教えてくださるとうれしいです!


「舞台は平安時代の京都のはずれ、主な登場人物はサバサバ系女子・小野小町メンヘラストーカー男子・深草少将二人の亡霊です」

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早くひとりで成仏してしまいたい小町と、それを必死に引き留める深草……ってな感じで話が進んでいくのですが、最終的には二人とも一緒に成仏するんですよ。いろいろ端折りましたけど」

――謎展開ですね


「そうなんです。あれだけ深草を嫌がっていたはずの小町が最終的には二人で成仏することになるのが、あまりにも納得できなくて。もっと別な解釈ができるんじゃないかな~って」

――ふむふむ。つまり、今回の一人芝居作品には環さんの『通小町』に対する新しい解釈がグッと込められているわけですか。


「はい!まずは自分で古典の脚本を現代語に訳して、そこから脚本を書き始めました。そこに『通小町』の精神性とか空気感とかを入れ込んで……

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「もちろん私一人で演じるわけだから再現性はそこまで高くないと思うのですが、自分なりに面白い解釈ができたと思います」

――僕もあまり詳しくなくて恐縮なんですけど、『能』っていう伝統芸能を現代的に解釈するのってものすごく難しそうですね。


「う~ん、そうですね……でも、実は『能』ってすごく前衛的なんですよ。これも顧問の先生が言っていたことなのですが、『能』はそれまでの芝居とは全く違うモノとして生まれたんです」

――あ~!確かに言われてみれば高校の日本史や国語でそう習ったかも。

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「だから私は、『能』と『現代演劇』ってすごく相性が良いんじゃないかと思ってます。これからもそういう作品を作っていけたら楽しそうですね」


3.『一人芝居』が決定した経緯

――たった一人でステージを作っていくとなると、ものすごく時間がかかるイメージがあります。いつごろ挑戦を決めたんですか?


「お話をいただいたのは7月末ごろでした。『芝居小屋で伝統芸能がたくさん見れるイベントを開催したい』という思いを抱いていた主催者の方から、最初は能楽サークル宛に依頼をいただきました」

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――ん、最初は一人芝居じゃなかったんだ


「はい。でも、諸般の事情でサークルとしては参加できないことになっちゃったんです。その代替案として、『私が一人で能を題材にした一人芝居をやるのはダメですか?』と聞いてみたら、快くOKを出してくれて。もう一人落語サークルの方をお招きして、落語と一人芝居の公演を作ることになりました」

――それが7月末ですか……3か月の準備期間って短いんでしょうか?


「通常は半年とか1年かけて準備する場合もあるので、短いほうだと思います。しかも全部自分で脚本から演出・役者までやらなきゃいけないので」

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(写真に写っているのが脚本)

――ぐえーーーー大変ですね。どんな感じで準備を進めたのか聞きたいです。


「お話をいただいてすぐに脚本から書き始めました。能を題材にすることは決めていたので、作品を選んで現代語訳して……一週間で初稿を書き上げました」

――早っ!


「大変なのはそこからです!書いてみたはいいものの、演じてみないと何もわからないのでとにかく試行錯誤の繰り返し。まさに行き当たりばったりです」

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(日曜の夜。環さんは月曜に1限の授業がある)

――じゃあ最初と今とでは……


「全然違いますね(笑)。第5稿まで変わってます」

――(見せてもらった)あ、たしかにこれは全然違う。

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「演出で音楽を流したりするのですが、それを決めたのも昨日(10月19日)でした。なんとか形にしていってる感覚です」


4.『演劇』をはじめた「きっかけ」と「これから」

――ここからは少し趣旨を変えて、環さんの演劇に対する気持ちの部分を探っていきたいと思います。そこから、今話題になっている『表現』についても二人で考えていきたいなと。


「はい!面白そうですね」

――まず最初に聞きたいのが、環さんが演劇の世界に入っていったきっかけの部分。何があったんでしょうか?

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「私ってすごく『表現すること』が大好きなんですよ。小学2年生からずっと小説を書いていたし、中学生の時には吹奏楽もやっていました。でも、少し腑に落ちてなくて」

――自分のやりたい表現に対するギャップを感じていた、と


「そんな感じです。そんな中、中学2年生の時に出会ったのが、劇団四季の『キャッツ』でした。“コレだ!!”と。観客としてではなく、演者としてステージに立ちたい気持ちが湧いてきたんです」

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――なるほど……!


「それがきっかけで高校からは演劇の道に入りました。今でも『私には演劇しかない!』と思っていますが、その反面……


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演劇をやっていても『一人芝居』に挑戦する人は決して多くないはず。そんな中、『能を題材にした一人芝居』にチャレンジする環さん。

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能にとっても現代演劇にとっても挑戦となる今回のステージは、大阪・心斎橋の「心斎橋Balls8」10月26日(土)夜19時から開幕です。ワンドリンク付¥1500。是非見に行ってくださいね!

「夜のミナミ芸術文化祭」
10月26日(土)19:00~@心斎橋Balls8
ワンドリンク付¥1500
出演:環(演劇)、銀杏亭丸(落語)

↓予約フォームはこちら↓

ご連絡はこちらまで
環:Twitter@10tama14
インタビュアー(コフンねこ):Twitter@Story_Neko5

↓以下では、環さんが『表現』に対する思いをぶつけてくれます↓


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