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016 検認の手続き

前回は、相続手続きにおける「難敵」は金融機関と法務局(不動産登記)であり、この「難敵」に対して円滑に相続手続きを進めるためには、遺言を作成する準備段階において、精度の高い財産の棚卸しを行い、的確な財産目録を作成することが有効であることを述べました。今回は、遺言がある場合の相続手続きと検認の手続きについて、述べたいと思います。遺言の作成方法としては、民法により、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つの方法が定められていることは既に述べました(本稿012)。これらの遺言の作成方法のうち、公正証書遺言については、遺言書の死後における検認の手続きは不要とされていますが、自筆証書遺言、秘密証書遺言については、遺言書の死後において検認の手続きを要することとされています。検認の手続きは、文字通り、遺言書を点検及び確認する手続きです。遺言書の保管者(相続人が遺言書を発見した場合も同様)は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければならず、封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができないこととされています(民法1004条1項、3項)。民法では、この検認の手続きを怠ると5万円以下の過料に処せされることも定められています(同法1005条、ただし、私は、実際に過料が課されたということを聞いたことはありません)。自筆証書遺言を前提として、相続における名義変更等の各種の手続きを行おうとする場合には、金融機関に対しても、法務局に対しても、家庭裁判所の検認の手続きを経た遺言(家庭裁判所の検認済証明書の添付のある自筆証書遺言)を提出しなければなりません。ところが、この検認の手続きですが、検認の手続きが必要であることの認知度が低いために、検認の手続きを待たずに勝手に遺言書を開封してしまうことが多々ありました。また、検認の手続きでは、相続人が家庭裁判所に集合することになります(相続人の出席は任意とされていますので欠席しても問題はありません)が、その場が、期せずして、争続の始まりとなってしまうことも散見されていました。遺言書の点検及び確認の機会が必要であろうという民法の趣旨は十分に理解できますが、この検認の手続きが、かえって、自筆証書遺言による円滑な相続手続きにブレーキをかけてしまっている側面も否定できませんでした。そこで、この課題を解消すべく法改正がなされ、この度、検認の手続きを不要とする自筆証書遺言の作成方法が定められました。

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