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自分の町の「いいら!」を探して     IZUCCO制作実行委員会 代表            株式会社わたしたち 代表取締役         (一社)ママ夢ラジオ 理事 中野あゆみさん

中野あゆみさん

「毎日あちこち走り回っています!」と笑顔で話された中野あゆみさん。
今回、取材させていただいた中野あゆみさんは、たくさんの肩書きをお持ちで、様々な活動をされています。今回は、それぞれの活動の内容や活動に対する思いなどを聞かせていただきました。

IZUCCO(いずっこ)
IZUCCO参加メンバー

子どもとプロが作るローカルマガジン「IZUCCO(いずっこ)」

 「IZUCCO(いずっこ)」は、小学3年生から6年生の子どもたちが、地元の伊豆の国市を取材し、プロのクリエーターと一緒に作るローカルマガジンです。
 これは、子どもたちとプロが協働して地域の魅力を紹介する「こどもローカルマガジンプロジェクト」(コロマガプロジェクト)の一環で、10年程前に伊豆市で始まった取組ですが、現在では全国16カ所で実施されています。
 
 IZUCCO制作実行委員会の代表である中野さんは、このプロジェクトを2019年から始めました。伊豆市の取組を聞き、自分の子どもにも経験させたいと思ったのが、この活動を始めたきっかけでした。
 また、中野さん自身、自分の住んでいる町をもっと知りたいという思いもありました。中野さんは函南町出身。パートナーの転勤を機に横浜市に転居しましたが、その後2人目のお子さんが生まれるタイミングで、伊豆の国市に移住しました。地元の函南町の隣町だから土地勘もあるし、知っていると思っていたのに、実際に住んでみると知らないことばかりでした。
 
 この活動の大きな目標は、IZUCCOの制作を通じて、子どもたちが自分たちの住む町の良さを知り、町に誇りや愛着を持ってもらうこと。そして、その子どもたちが20年後の伊豆の国市を支える人材となることです。
 
 IZUCCOの制作は4月のメンバー募集から始まります。5月にプロから記事やイラスト作成、写真撮影などのレクチャーを受けてから、6~7月にかけて取材先を訪問し、記事やイラストを作成します。その後は大人が編集し冊子にして、11月の完成披露発表会で自分たちの作ったIZUCCOをお披露目します。取材先の決定や、冊子の編集は大人が手助けしますが、それ以外は子どもたちが主体的に取組みます。
 制作にあたっては、人に伝えるということを一番大切にして取組んでいます。
 
 IZUCCOは1年に1回発行。コロナ禍で活動が1年間休止になった時期もありましたが、2022年11月には3冊目となる冊子を発行しました。

 子どもたちは、取材を通じて地域のお店や会社、そこで働く大人の思いにリアルに触れることができます。知っている事も、取材をすることで違う角度から見ることができます。自分の町の事を新たに知ることで、自分の町の魅力に改めて気付き、誇りや愛着が生まれています。
 自分の町に誇りや愛着を持った子どもたちは、将来的に地元の伊豆の国市で暮らし続けたい、進学などで一旦は伊豆の国市から離れていても、また近くにいても、地元に貢献したいというシビックプライドが育まれるのではないかと思います。

ママ夢ラジオ放送風景

ママが企画から出演まで「ママ夢ラジオ」

 また、中野さんは、全国のママたちが自分の住んでいる地域のコミュニティFMでのラジオ番組の制作・放送を行う「ママ夢ラジオ」の活動も行っています。町の魅力をラジオで伝えるという、いわばIZUCCOのママ版、ラジオ版です。
 
 この取組は2018年から渋谷のクロスFMで始まり、静岡県内ではFMみしま・かんなみとFM島田の2カ所で放送しています。月1回の放送ですが、企画段階からパーソナリティーまで全てをママたちでこなします。
 
 現在では、全国19カ所で放送されているママ夢ラジオには大きく2つの目的があります。
 
 1つ目は、ラジオのリスナーを増やし、災害時に迅速かつ確実に情報取得できる人を増やすためです。
 災害時の迅速な情報発信では、重要な役割を果たすコミュニティーFM。
しかし、その重要性が多くの人に伝わっていません。また、ラジオを聞く人自体も減ってきています。
 パーソナリティーを公募するのは、パーソナリティーの家族や知り合いがラジオを聞くことでリスナーを増やすためです。そのため、パーソナリティの任期は1年とし、多くの人に関わってもらえるよう工夫しています。また、この活動に関わる人たちには、ラジオを聞くことが人の命を救うことに繋がるんだということを一番最初に伝えています。

 もう1つは、町を知りたい、町のためになりたいというママたちの思いを実現するためです。地域に関わる活動をしたいけど、なかなか踏み出せないという人のきっかけとなって欲しい、この活動を通じて、地域との関わりがより密になり、ママたちが自分の住む町で笑顔で暮らすための取組です。
 
 これまで、自然発生的に自分たちの町でもやりたいというママたちが出てきて、全国各地にこの活動が広がっていきました。
 
 なお、2023年4月からは、一般社団法人夢ラジオでおこなっていたママ夢ラジオの事業のすべてを、株式会社わたしたちに事業移管し、既存のPR事業部に加えてラジオ事業部が新設される予定です。
 
 中野さんは、「ママ」だけに限らず、誰でもラジオで気軽に発信できるようになればと考えています。
 また、「今やSNSで誰でも発信ができる時代。でも、コミュニティーFMで発信することに意義がある。」と中野さんは言います。情報インフラとして重要なコミュニティーFMですが、経営の難しさを感じている局も少なくないため、コミュニティーFMを盛り上げたいという強い思いがあります。

サスティナブルな活動を支える株式会社わたしたちの創業

 また、この2つの活動に加え、令和4年1月には株式会社わたしたちを創業し、企業の広報やPRなどの事業を始めました。スタッフは8人。雇用はせず、すべて業務委託という形で依頼しています。全員子育て中の母親のため、場所や時間を選ばず自由に仕事するというスタイルでワークシェアをしています。
 スタッフはこれまでの活動を通じて知り合った仲間で、それぞれのスキルを活かして仕事をしてもらっています。IZUCCOはボランティアベースの活動のため、持続的にこれらの活動が続けられるよう仕事をシェアすることでサポートしています。また、ママ夢ラジオで地域とつながりを持ったり、地元に貢献したい!と思ったママたちの思いを、株式会社わたしたちで仕事を生み出し、依頼することで持続可能なものになるよう応援したり、地域企業の課題を地域のママたちとビジネスで解決することで、循環させていきたいという考えで行っています。

中野さんを支える2つの思い

 様々な活動をされている中野さんですが、自分がやりたいという思いだけではなく、必ず地域に貢献できるという視点を大事にされています。
そして、中野さんの原動力となる思いは2つ。
 自分や自分の子どもがやりたいと思える活動をすること、楽しくチャレンジしている姿を夫に見せたいということです。
 中野さんが、このような活動に取組むのは、精神的に苦しい時を支えてくれたパートナーへの恩返しであると教えてくれました。「楽しく色々な事にチャレンジしていることが僕への恩返し。チャレンジしているのを見ているのが楽しいよ。」というパートナーの言葉が、中野さんを支え、力を与え続けてくれています。

 地域とより「つながる」ことで、自分の町や人を知り、主体的に町に関わる活動をすることで、魅力を高めることができたら、自分や家族を中心とした多くの人が幸せな暮らしを創り出すことができるのではないかと感じた取材でした。