積極的_心霊スポット

『相棒なんかじゃない』

 奴は自称霊能力者である。
 だから奴と一緒にいると、そこはいつでもどこでも心霊スポットになってしまう。
「透、ちょっといいか」
 いいとも悪いとも言う前に、奴は俺の腕を掴んでいた。どうやら近くに「何か」がいるらしい。
「今度は何だ?」
「それを探りに行くんだよ」
 一人でやってろと言う前に、奴はもう歩き出していた。俺の腕を掴んだまま。
「すぐに分かるのは男の子だってこと。服装がレトロだから死んだのはちょっと前だろうな。昭和とか?」
「昭和で『ちょっと』か」
「幽霊だからな。年期が入った相手も珍しくない」
「やめてくれ」
 ここまで完全に彼のペースに巻き込まれているが、俺は決して霊能力など信じてはいないのだ。
「ここは、ただの道端だ」
「透にとっては、な。頼りにしてるぜ」
 ……仕方ない。
 奴のめちゃくちゃな説明によると、とことん現実主義の俺は奴にとって避雷針ならぬ「避霊針」なのだ。都合のよすぎる設定だが、俺が幽霊を信じないことも折り込み済みのため上手くいなされてしまう。
 そして、幽霊が日常茶飯の彼は首尾よくそれを追っ払った。らしい。
「助かったぜ、相棒」
 何一つ起こっちゃいないのに、奴は心底安堵した表情を浮かべた。
「どうでもいいが、いつまで引っ付いてる気だ?」
 ハッとした奴が手を放す。ようやくここがただの路上であることに気が付いたようだ。
「ホントに面倒くさい設定だな」
「俺も面倒くさいんだよ」
 と言いながらも、霊感持ちだと主張し続ける奴が変わり者であることは間違いない。俺にとって一番の超常現象は、全く気の合わないこの男が今日も自分の隣にいることだ。
「透って変わった男だよな」
「どっちが」
 真一が、ニヤリと笑った。

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