「フェミニズムや人権の話ができない・拒否される」 信頼できるパートナーシップを築くための秘訣を聞いた

初出:wezzy(株式会社サイゾー)2021.02.27 13:00

「性の話をもっと気軽にオープンに」をテーマに、性にまつわるさまざまな情報を発信する助産師の性教育YouTuberシオリーヌさん。

 昨年5月に夫の“どさんこつくし”さんと結婚報告をしてからは、Twitter上でそれぞれ夫婦としてコミュニケーションをとっていく中での気づきをツイートしています。日頃からお二人は人権やフェミニズムについて会話するなど、対話を大切にされているといい、信頼関係を築けていることが伝わってきます。

 パートナーと「話し合いができない」「人権やフェミニズムの話はしにくい」そんな悩みを抱える人が少なくないなか、お二人はどのようなきっかけで社会問題の話をするようになったのでしょうか。話し合いで大切にしていることや、センシティブな問題でも対等に話し合えるパートナーと出会うためのアドバイスなどを聞きました。

シオリーヌさん、つくしさんよりご提供

シオリーヌ(大貫 詩織)/助産師・性教育YouTuber(左)
総合病院産婦人科、精神科児童思春期病棟にて勤務ののち、現在は学校での性教育に関する講演や性の知識を学べるイベントの講師を務める。 性教育YouTuberとして性を学べる動画を配信中。 オンラインサロン「Yottoko Lab.」運営。 著書「CHOICE 自分で選びとるための「性」の知識」(イースト・プレス)

どさんこつくし/看護師・イラストレーター(右)
北海道室蘭市出身のイラストレーター。1997年生まれ。 主に書籍やweb記事等で使用するイラストレーションを手掛ける。得意ジャンルは医療知識を必要とするものや、ジェンダーフリーでポップなテイスト。看護師資格を有し、現在は医療系スタートアップ企業にも勤務している。仕事柄、ウィメンズヘルスが関心事。

「僕自身を否定しているのではなく、社会にある価値観の話をしているんだ」


——お二人が人権やフェミニズムの話をするようになったのは、どのようなきっかけからなのでしょうか。

シオリーヌさん(以下、シオリーヌ):明確なきっかけというよりは、自然に話をするようになったんです。そもそも付き合い始める前から、つくしは私の動画を見てくれていて、私がジェンダーや人権問題に関心が高い人だと知っていました。付き合い始めてからも私の仕事柄、「今、緊急避妊薬でこういうことが話題になってるよね」とか「日本の性教育はここが足りないと思う」とか日常的に話していたので。

どさんこつくしさん(以下、つくし):僕は看護師で、体の仕組みや性にまつわる話も学生時代から勉強はしてて、知識として得られるのはありがたいと思っていましたし、日本の性教育はもっと改善していく必要があると感じていたので、そういった話を聞けるのは楽しいと感じていました。

——ジェンダーや人権の話で、お二人は大枠では同じ方向を向いていると思うのですが、意見が食い違うこともあると思います。話をするときに大切にしていることはありますか。

シオリーヌ:「なぜわからないの?」と責めずに、相手を尊重して話を聴くようにしてます。個人差はあれども、男性として生きてきたのと女性として生きてきたのでは、見てきたものや経験してきたことにギャップがあると思うんです。

 といっても、最初から冷静に考えられたわけではなく「そんなこと言うなんてありえない!」って思ってるのが顔に出てしまい、つくしを困らせてしまうこともありました。そういう反応をすることで、相手が「否定されてる」「責められてる」と思うと、心を開いてくれるものも開いてくれなくなってしまう。だんだんとそのことに気づいて、考えに違いがあるのは当然なので「どうしてつくしはそう思うの?」「どういう経験があってそう感じてるの?」と、お互いを理解するために落ちついて話をしようと心掛けるようになりました。

つくし:僕も生理や体のことなど、性に関することは知ってたし話せていたものの、ジェンダーの側面からの「女性ならではの弊害」は見えていない部分が大きかったんです。だから、女性蔑視や男女差別の分野の話は衝突してしまうこともしばしばありました。

 自分の中で男子として生まれ育って醸成された価値観を真向から否定されている気持ちになってしまって、「なんでそんなこと言うんだろう」「そんなわけないでしょ」と妻の考えを受け入れられないこともありました。でも妻が何度も伝えてくれて、徐々に「僕自身を否定しているのではなく、今、社会にある価値観の話をしているんだ」とわかってきて、対話ができるようになっていきました。

——話し合いにおいて、お互いが歩み寄れたのには何か理由があるのでしょうか。

シオリーヌ:付き合う前につくしと共通の友人と飲んでいたときに、「次にパートナーを作るならどんな人がいいか」って話になって、二人とも「話し合いを大切にできる人」と答えていたんです。「意見が違って衝突しても、最終的にお互い理解し合って仲良くしたいと思ってる」とわかってるので、諦めずに対話を続ける気力が湧いていました。

 それから、つくしは「もういい!」って話し合いを放棄しない人だという信頼があります。歩み寄って話し合えるモチベーションのある人だと信じられるので、この人に話しても無駄とは思わず、対話を続けられています。

——パートナーから話し合いを放棄されるという悩みを持つ女性は少なくないですが、つくしさんは「もういい!」と言いたくなったことはないのですか。

つくし:そうですね、「なんでも話し合いウェルカム!」ということではなく、自分の中で葛藤はありますし、話し合いのテーブルから逃げたり拒否したい気持ちが自分の中にまったくないわけではないです。

 男女間に限らず、価値観の違う二人が話し合いをしていたら片方が受け入れられない議題が上がることもあります。でも話し合いの席から立ち、その議題を先延ばしにしたら、またどこかで引っかかりが出てきてしまうかもしれない。「二人で仲良くやっていきたい」という思いが土台にあるので、「話し合いを放棄したい気持ち」と天秤にかけたときに、「仲良くやっていくために話し合いをきちんとしよう」となるんです。

——「二人とも仲良くしたい」という思いが共有できていると、安心して話し合いに臨めそうです。お二人のTwitterを拝見していると、ケンカになってしまうこともあるようですが、どのように仲直りされているのでしょうか。

シオリーヌ:実はこの間、「ケンカのあとの仲直りの仕方」でケンカしたんです(笑)

つくし:どちらが原因ともなくケンカを始めてしまうことはしばしばあって。二人とも「ギスギスした空気を長引かせたくない」と思っているのはわかっているのですが、仲直りのきっかけ作りを妻に頑張ってもらってたことが多くて。妻から「コミュニケーションコストを払わなさすぎるよね」と指摘されました……。

自分が大切にしている価値観を共有してくれる人はいる


——お二人の関係性を見て「パートナーと人権やフェミニズムの話ができるようになりたい」と思っている人も多いと思います。どうしたらそういったパートナーと出会えると思いますか。

シオリーヌ:「私は人権やフェミニズムの話ができる人とマッチングしたい!」と表明するといいと思います! 私自身もつくしと付き合う前に「話し合いができること」以外にも、「性教育の話をわかってくれる人」「社会問題に興味がある人」がいいと周囲に話をしていて、つくしがそれに当てはまる人だとわかった上で付き合い始めたので。意見の食い違いはあっても、ジェンダーや社会問題に関心のあること自体を否定されることはなかったです。

 今の日本の価値観では、人権やフェミニズムに関心があることって、いわゆる“モテ”から外れるとされているように思うんです。だから本音ではそういう関心があっても、マッチングの場では一般受けするとされる女性像に合わせている方もいると思うのですが、私はたくさんの人にモテることよりも、たった一人のベストパートナーに巡り合える方が大事だと思っています。そのために、自分の大切にしていることは表明しておいた方が効率もいいんじゃないかなって。

——確かに、自分が大切にしている考えを後回しにして“モテ”や相手に好かれることを優先してしまうと、後から「考えが合わない!」ってことになりますよね。

シオリーヌ:私は将来的に一緒に子育てをすることも踏まえて特にその点を大事にしているんです。子どものことを考えて政治や教育、ジェンダーギャップの話をするにあたって片方は関心があって、もう片方は関心がない状態で「何を心配してるの?」「なぜそんなに怒ってるの?」といった温度差があると、一緒に子育てしていくのがしんどそうだな、と。

——ネットユーザーから「今のパートナーと話し合いができるようになりたい」といった相談を受けることはありますか。

シオリーヌ:Twitterで仲直り報告をすると「パートナーと話し合いができて羨ましい」「話し合いができる関係性になりたいのに、多分うちの人はムリ」といったリプライをいただくことはあります。でも人を変えるのってなかなか難しいなとは思います。

つくし:実践したことがあるわけではないのですが、身近な問題と関連させるのは一つの方法だと思います。お子さんの未来を考えたときに、「そういう未来であってほしくないよね」と切り出すことで、より身近に感じやすいかもしれません。

シオリーヌ:確かに、医学部の入試差別では、父親世代の人も「自分の娘が頑張っている中でこんな差別をされていたら許せない」と声をあげているのを見ました。「自分の娘や妻に置き換えないとわからないのか!」という指摘もありますが、きっかけとして結びつけたら理解しやすいかもしれないですよね。

——つくしさんは以前「自分の中にもホモソーシャルで築き上げられたミソジニー(女性蔑視)が潜んでいることがわかった」とツイートされていました。そのことを受け入れられるようになった過程についてお伺いします。

つくし:ミソジニーに気づくって「自分は当たり前に生きてきて築き上げられた価値観が、別の視点から見ると誰かが虐げられていること」に気づくことだと思うんです。最初は受け入れがたかったですし、「そうじゃない」と思いたくて反射的に拒否してしまうこともありました。でも、妻と話していくうちに冷静になって考えると、自分の中では当たり前だったけれども、「よく考えたらおかしいことなのでは?」と思うようになって。

それでもすんなり受け入れられるようになったわけではなく、「向き合いたくない」「蓋をしていたい」と思うこともありつつ、妻との対話を繰り返すなかで、少しずつ自分の中に差別的な意識があることを受け入れられるようになりました。

——パートナーや気になっている相手に「人権やフェミニズムの話を切り出すのが怖い」と思っている人もいらっしゃると思います。最後に応援のメッセージをいただけますか。

シオリーヌ:私自身、「性教育やっている人を口説きたくない」「口説き方で“女性を馬鹿にしてる”と怒られそう」「コンドームの付け方を指導されそう」などとからかわれたことはたくさんあります。なので、「意識高いって笑われるんじゃないか」「引かれるんじゃないか」って不安になる気持ちはわかります。

 一方で、つくしは私と付き合う前から私の動画を見て、「性感染症の検査は大事だ」と思って検査を受けていて、私はそれがすごく嬉しかったんです。つくしは面倒がるどころか、大事だと理解して行動に起こしてくれた。こうやって馬鹿にしないでちゃんと取り合ってくれる人と付き合いたいなって思いました。

 だから「自分が大切にしたいことを伝えたいけれども怖い」と思っている人には、「あなたが大切にしていることは何も悪いことじゃないので、それをわかってくれる人を探せばいい」と声をかけたいです。

 それから、最初からジェンダーや人権の知識や問題意識がなくても、相手が関心があると知ったときにないがしろにしない人はいると思うんです。自分が大切にしていることを一緒に考え大切にしようとしてくれる人はいると思います!

~シオリーヌさんよりお知らせ~


『CHOICE 自分で選びとるための「性」の知識』(イースト・プレス)が発売中!

 身体の仕組み、感情や欲求との向き合い方、大切な人との付き合い方、自立について…学校でも、社会に出ても誰からも教わることができない「性」にまつわるあらゆる問いに、真剣に向き合い、具体的な知識を伝えるための一冊です。

 生理・射精の仕組み、さまざまな生理用品、妊娠の起こる仕組み、正しい避妊方法、性的同意、女らしさ・男らしさ、ルッキズム、セクシュアリティ、SNS付き合い……など、38のトピックスを収録しました。

 解説動画(YouTube)へのリンクや、困ったときの「相談窓口一覧」も掲載しています。「性」について改めて学びたい大人や、子どもへの伝えかたにお悩みの親御さんにもお勧めです。

※情報は初出掲載時当時のものです。